私はレノ
――私はレノ。
私が生まれたのは、知恵を有した人間がいなくなってから何百年も経ってから。
私が初めて人間を見たのは、生まれて六年経ってから。
誕生日のプレゼントに与えられたものを、私は奇妙な生き物だと思った。
その人間は結局私が原因の事故で死んでしまったが、その時は三日三晩泣いて部屋へこもった。
思えばあれが、人間に興味を持つ要因になったのだと思う。そして人間へ執着する原因に――
「小さいな」
久しぶりに手に入れた始祖人間。
それの寝顔を見ている時、思わずそう漏らした。
とても、とても小さかった。
私が守らねばならないと思った。
関わっていくうちに心の溝を埋めていくような存在に、“独身が愛玩人間をと家を持ったら結婚できない”と言った物は正しいと確信した。
いつだっただろうか、その思いが歪み始めたのに気づいたのは。
「美味し――」
美味しそうだ。
どういう意味でそれを言おうと思ったのか、言葉を飲み込むついでに考える。
食欲、肉欲、あらゆる場面で言うセリフは、そのどれにも当てはまらないような気がした。
ではこの気持は一体何なのだろう。
どこから湧いてきたのだろう。
ハナから暖かい言葉をかけられる度に胸を焦がすこの思いは、一体何なのだろう。
この言いようもない欲求は、一体何だ――
「美味しそうだ」
試しにポツリと漏らしてみれば、それは思ったよりも素直に胸のうちに響く。
「そうか、私はハナが好きなのだな」
それがどのような種類の“好き”なのか。
わかり始めて戦慄する。
なぜこんなことになったのか。
いつそう思い始めたのか。
「…………」
考えるのが怖くて、やめた。
ただ、ハナを守りたい。今度は人間を失いたくない。
その気持があれば、それでいいではないか。
それでいい、それでいいんだ――……
これにて終了となります。
なぜ暗くなっているんだ……? こんなはずではなかったのですが……




