私はハナ
――私はハナ。
気がついたら人類は滅亡していた。
動物が知恵を得て、人間が知恵を失って、立場が逆転した未来。
私が目覚めたのはそんな世界だ。
みんなは気づいていない。
私がほとんどの記憶を取り戻したことを。
……本当は気づいているのかも。でも言わない。
きっと私の頭がおかしくなるのを恐れているのだと思う。
あの日、日本は負け戦をしていた。
誰が見ても負ける、そんな日が続いて、でも穏やかな日が長く続いたものだから、戦争はこのままなくなるんだと思った。
マスコミもほとんど戦争のことを言わなくなって……異変が起こったのは、そんなある日のこと。
あっという間に全てが吹き飛ばされ、私は一瞬にして家族を失った。
その後のことはあまり覚えていない。
でも気がついたら、荒野を歩いていた。
その時に見かけたのは、一羽のカラス。
「世界がこンなになるなンてなー」
気の抜けたよな声に、私は気のせいだと思った。
吹き飛ばされて、頭がおかしくなったのだと。
でもきっと、もうこの時から人類の滅亡は確定していたんだと思う。
――私の記憶はここまで。次に目覚めたのは、あの病室。
瓦礫まみれの荒野も、人っ子一人いない世界も、何もかもが昨日のことのように思い出せる。
時折記憶はかすみ、思い出すと同時に違う記憶まで引っ張ってくる。
そうやって、私は色んなことを思い出していた。
「ハナ」
でも目の前の白い獅子が私に笑いかける限り、私は記憶を忘れているふりをするんだ。
それが、始祖人間である私の役目だから。




