第6話
真坂が病院に飛び込むと、院内は騒然としていた。集中治療室前に、ひとだかりができている。
看護師と筋者たちが、取り押さえようとする大男に、真坂は愕然とした。
「……熊野おめぇ、重体じゃねえのか?」
兄弟分である熊野慶吾は、手術なんぞ必要ねぇと、取り巻きのなかで、大立ち回りを見せていた。
てっきり命の瀬戸際だと思っていた真坂は、頭を掻く。その心配は杞憂だったか。
「あっ真坂の叔父貴!オヤジ止めるの手伝って下さい!このひと、数発はハジかれてるんです!」
「馬鹿野郎おめえ、おとなしく治療受けろ!」
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弾の摘出手術から数時間後、個室のベットで窮屈そうに横になる熊野が、呟いた。
「大袈裟なんだよ、ちょっとハジかれたぐらいで。それより俺の護衛についてた若いのは、どうなんだ?」
熊野の若い衆は、呆れたふうに返した。
「オヤジ、7発はちょっとじゃねえです。若いのはなんとか、峠は越えたそうです」
「そうか、じゃあ俺は退院するぞ」
「なにがそうかだ、馬鹿野郎」
手術が終わるまで待っていた真坂は、熊野が無茶をすることを、最初から見抜いていた。
「いい加減にしろ、兄弟。医者からは全治1ヶ月だって言われただろうが。そもそも目星は、もうついてんのか?」
「ああ兄弟。鬼島がケツモチしてた、半グレどもだ。鬼島がいなくなって連中、逆に勢いづいてやがる」
一本独鈷だと思って、舐めやがってと怒気もあらわに、熊野は点滴を引き抜いた。ベットからどすんと降りる。怒りで痛みを感じていないようだ。
「何回言わせンだオヤジ!本当に死んじまう!」
熊野の若い衆は取り押さえようとするが、熊野はまるで聞く耳を持たなかった。
「こんなもん大したもんじゃねえ。真坂の兄弟につけられた古傷のほうが、まだ痛えよ」
それを聞いておっそうかいと、一瞬気を良くした真坂だが、必死で熊野を止めようとする若い衆を、流石に気の毒におもい、口を開こうとした。
同時に廊下で、護衛が誰かを制止する声が聞こえてきた。
激しい銃声と、瓶の割れる音に、看護師の悲鳴が聞こえる。真坂が様子を窺おうとする前に、熊野が飛び出していった。
危ねえオヤジと、若い衆も飛び出そうとして、廊下に熊野の笑い声が響いた。
「百木の兄弟!わざわざ見舞いに来たのか!」
真坂が覗くと、割れた一升瓶に血を滴らせた百木と、チャカを持った半グレが、首から血を流して倒れていた。
護衛も撃たれていたが、体を掠めただけのようだった。
「よお熊野、おめえ重体じゃねえのかよぉ」
熊野の頑強さに呆れていた百木に、離れていた鶴太郎が、駆け寄った。
「タロじい、もう病院が通報してる!早く離れないと!」
おおそうだなと、百木が逃げようとして、熊野が声をかけた。
「兄弟!いまから糞ガキどもを懲らしめにいくが、一緒にどうだ!」
「おう、いいぞ!」
百木は走りながら、返事をする。野球に誘われた小学生みたいな気楽さだった。




