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仁侠?それって美味しいですか?  作者: 甲斐性なし
4/10

第4話

 ___本日のピックアップは、指定暴力団、鬼島(おにじま)組の解散声明と、現在も逃走中の百木(ももき)組組長、百木太郎の人物像に迫りたいと思います。先日演歌歌手を引退されました、タレントの髑髏島三郎(どくろじまさぶう)さん、解説よろしくお願いします。


 ___はい、よろしくお願いします。いやぁ〜白昼堂々のカチコミですよ、ええ。ましてや機動隊の警戒を掻い潜っての犯行ですからねぇ〜なかなかいないですよ、そんな漢は。


 ___組事務所は街中にあったとのことで、周辺住民の恐怖は計り知れないところですが、百木組長の凶行に走った原因というのも、やはり鬼島組との縄張り争いといったところでしょうか?


 ___凶行ぅ?むしろ侠気と言っていい快挙じゃないですか。長ドス一本で、近寄る組員を膾切り!親不孝な中堅を、てめぇの手でケジメつけるなんて、本来なら代行だった若頭が率先してやるもんですよ。それが漢の筋ってもんです。そもそも鬼島はいけない、ありゃ駄目だ。たったひとり囲んで、チャカまで使うなんて、不細工もいいとこだ。そこまでして鉄砲玉ひとり仕留められないなんてもう、貫目が下がるてなもんじゃねえ、廃業しかねぇ失態ですわ。流石に恥は知ってたみたいですから、今回の解散声明を出したんでしょうけどねぇ。

 こないだ知り合いの親分から聞いた話だと、鬼(・)島(・)本(・)人(・)の(・)裏(・)ビ(・)デ(・)オ(・)な(・)ん(・)て(・)シ(・)ロ(・)モ(・)ノ(・)が、闇で出回ってるそうで___


 ___解説の髑髏島三郎さん、ありがとうございました。一旦CMにはいります。続いてはネコちゃん特集です。


 ___ネコって言えば鬼(・)島(・)も(・)、(・)結(・)構(・)な(・)ユ(・)ル(・)マ(・)___


____________________


「おい見ろよ兄弟ぃ…サブちゃんが俺のことTVで喋ってるよ、おい」


 TVに齧りつくように見ていた百木は、髑髏島三郎のファンだった。特に「兄(・)弟(・)仁(・)侠(・)」は、十八番だった。


「あぁそうだな兄弟、それで一体いつ高跳(たかと)びすんだ?」


 弟分の真坂(まさか)は、いつまでも居候する百木にうんざりしていた。


「なぁ兄弟、犯人隠匿てのは懲役だぜ、チ(・)ョ(・)ウ(・)エ(・)キ(・)。この歳でお務めなんて、さすがに割に合わんぜ…」


「悲しいこといいなさんな、血よりも濃い兄弟じゃねえかよぅ。それに若い時分は、それこそ何回(なんべん)死刑うたれても足らねぇ悪さをしてきた仲じゃねえか」


 百木がふざけて首を絞める仕草をすると、真坂はため息をついた。


「またそれだ…若い頃を引き合いにだすのは狡いぞ、兄弟」


 真坂はよっこらせっと、いかにもわざとらしく呟いて立ち上がると、薬箱から飲み薬を取り出した。途端に百木は顔をしかめる。


「おいよせよ兄弟、薬なんか飲まなくても、まだまだ現役じゃねえか」


「まだそんなこと言ってんのか、高血圧の薬だよ。こいつがなきゃ、とっくにお陀仏(だぶつ)だわ」


 百木の薬嫌いは、堂に行っていた。事情を知っている真坂は、気持ちが分からないでもなかったが、そもそも病院自体が、百木は嫌いなんじゃないかと疑っていた。


 百木が徳利を振ると、お猪口に酒は残ってなかった。


「ありゃ、酒が切れちまってる。兄弟、もうねえか?」


「誰かさんが馬鹿スカ飲むから、もうねぇよ。料理酒でよけりゃあるがな、あとはビールか」


 百木はじゃあ仕方がねぇと呟くと、迷わず料理酒を選んだ。


 しばらくして、真坂の若い衆が声をかけてきた。


「百木のオジキ、お孫さんがお見えになってます」


「おうすまねぇな。ついでに悪りぃが、ちょっくら酒買ってきてくれ」


 百木が若い衆に万札を渡そうとして、横から伸びた手が、ヒョイとそれを取り上げた。


「大丈夫だよ、ちゃんと買ってきてるから」


 金髪の綺麗な嬢が、座敷にあがる。腕には蛇(・)柄(・)の(・)刺(・)青(・)が入っていた。


「またおめぇは、そんな成(な)りして…」


 百木が嘆くと、嬢は悪びれることなく返した。


「いろんなヤバい橋渡ってんだから、変装しなきゃいけないでしょ。そんなこと言ってたら、ほんとに切るよ?」


「なに切るってンだ……いやいい、分かった。なんもいうな…」


「ナ(・)ニ(・)と(・)縁(・)だ(・)よ(・)。そしたら百木は、俺で末代だね」


 馬鹿野郎、あぁ下らねえと百木が嘆くと、嬢は笑っていた。



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