第4話
___本日のピックアップは、指定暴力団、鬼島組の解散声明と、現在も逃走中の百木組組長、百木太郎の人物像に迫りたいと思います。先日演歌歌手を引退されました、タレントの髑髏島三郎さん、解説よろしくお願いします。
___はい、よろしくお願いします。いやぁ〜白昼堂々のカチコミですよ、ええ。ましてや機動隊の警戒を掻い潜っての犯行ですからねぇ〜なかなかいないですよ、そんな漢は。
___組事務所は街中にあったとのことで、周辺住民の恐怖は計り知れないところですが、百木組長の凶行に走った原因というのも、やはり鬼島組との縄張り争いといったところでしょうか?
___凶行ぅ?むしろ侠気と言っていい快挙じゃないですか。長ドス一本で、近寄る組員を膾切り!親不孝な中堅を、てめぇの手でケジメつけるなんて、本来なら代行だった若頭が率先してやるもんですよ。それが漢の筋ってもんです。そもそも鬼島はいけない、ありゃ駄目だ。たったひとり囲んで、チャカまで使うなんて、不細工もいいとこだ。そこまでして鉄砲玉ひとり仕留められないなんてもう、貫目が下がるてなもんじゃねえ、廃業しかねぇ失態ですわ。流石に恥は知ってたみたいですから、今回の解散声明を出したんでしょうけどねぇ。
こないだ知り合いの親分から聞いた話だと、鬼島本人の裏ビデオなんてシロモノが、闇で出回ってるそうで___
___解説の髑髏島三郎さん、ありがとうございました。一旦CMにはいります。続いてはネコちゃん特集です。
___ネコって言えば鬼島も、結構なユルマ___
____________________
「おい見ろよ兄弟ぃ…サブちゃんが俺のことTVで喋ってるよ、おい」
TVに齧りつくように見ていた百木は、髑髏島三郎のファンだった。特に「兄弟仁侠」は、十八番だった。
「あぁそうだな兄弟、それで一体いつ高跳びすんだ?」
弟分の真坂は、いつまでも居候する百木にうんざりしていた。
「なぁ兄弟、犯人隠匿てのは懲役だぜ、チョウエキ。この歳でお務めなんて、さすがに割に合わんぜ…」
「悲しいこといいなさんな、血よりも濃い兄弟じゃねえかよぅ。それに若い時分は、それこそ何回死刑うたれても足らねぇ悪さをしてきた仲じゃねえか」
百木がふざけて首を絞める仕草をすると、真坂はため息をついた。
「またそれだ…若い頃を引き合いにだすのは狡いぞ、兄弟」
真坂はよっこらせっと、いかにもわざとらしく呟いて立ち上がると、薬箱から飲み薬を取り出した。途端に百木は顔をしかめる。
「おいよせよ兄弟、薬なんか飲まなくても、まだまだ現役じゃねえか」
「まだそんなこと言ってんのか、高血圧の薬だよ。こいつがなきゃ、とっくにお陀仏だわ」
百木の薬嫌いは、堂に行っていた。事情を知っている真坂は、気持ちが分からないでもなかったが、そもそも病院自体が、百木は嫌いなんじゃないかと疑っていた。
百木が徳利を振ると、お猪口に酒は残ってなかった。
「ありゃ、酒が切れちまってる。兄弟、もうねえか?」
「誰かさんが馬鹿スカ飲むから、もうねぇよ。料理酒でよけりゃあるがな、あとはビールか」
百木はじゃあ仕方がねぇと呟くと、迷わず料理酒を選んだ。
しばらくして、真坂の若い衆が声をかけてきた。
「百木のオジキ、お孫さんがお見えになってます」
「おうすまねぇな。ついでに悪りぃが、ちょっくら酒買ってきてくれ」
百木が若い衆に万札を渡そうとして、横から伸びた手が、ヒョイとそれを取り上げた。
「大丈夫だよ、ちゃんと買ってきてるから」
金髪の綺麗な嬢が、座敷にあがる。腕には蛇柄の刺青が入っていた。
「またおめぇは、そんな成りして…」
百木が嘆くと、嬢は悪びれることなく返した。
「いろんなヤバい橋渡ってんだから、変装しなきゃいけないでしょ。そんなこと言ってたら、ほんとに切るよ?」
「なに切るってンだ……いやいい、分かった。なんもいうな…」
「ナニと縁だよ。そしたら百木は、俺で末代だね」
馬鹿野郎、あぁ下らねえと百木が嘆くと、嬢は笑っていた。




