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プロローグ

 



 冒険者の国 キノトリア ケストリカギルド支部



「どうだった?」


 尋ねたのはケストリカギルド支部のギルドマスター、サム・ノルトルシム、40代男。


「やはりコアエリアまでは到達できなかったそうです。ですが、オークの姿は確認されなかったので、もう安全と思われます」


 答えたのは同副ギルドマスター、クルト・ブルースト、30代男


「そうか。では、王国と共和国の様子はどうだった?」


「共和国の方は、距離があるので少し時間が経ってますが、いつも通り、といった状態の様です。北の要塞で籠ってあるみたいですね。王国は、領都まで撤退して以降は、偵察の動きさえ無いそうです。この一ヶ月動きが無いことから、恐らくはですが、誰があの地域を取ったかは知っているかも知れません」


「移住や軍の派遣が無いなら王国も共和国も取ってはいないだろう。だが、王国は誰が取ったか知っている……か。モルトルデン領の北に聖堂教国の割譲地があったな。もしかしたら聖堂教国か?」


「アリストラ聖堂院、でしたか。あの辺りは雪深く、人が移動できる状態では無いと聞いています。本国の方は調べるには遠いですね。それに、噂ではあそこは魔境からの魔物への対応で精一杯という話です」


「ふむ。魔物への対応で精一杯というのが偽装の可能性はあるか。調べない訳にはいかないな。とりあえずは情報収集を継続、モルトルデン領内では聖堂院に関する情報を特に集めよ。聖堂教国本国の方は俺が中央に問い合わせてみる」


「承知しました」




 ☆☆☆




 タンデリウス共和国 北部対魔境前線要塞 司令官室



「それで、オークの再侵攻の様子は無いのだな」


 尋ねたのは、タンデリウス共和国で北の最前線要塞を任されている、ルゴン・エーデルス中将、50代男。


「はい。我が領内は勿論、オークが出てきた地域にも偵察隊を出しましたが、影も形もありませんでした。やはり、地域が制圧された事でコア奪還に向かっい、殲滅されたのでは無いかと思います」


 報告していたのは、イリミア・バードランド少佐20代中頃の女性だった。

 彼女は中将が見出だしていた人物で、非常に優秀ではあったが、女性と言うことで大尉に長く据え置かれていた。

 だが、一ヶ月前まで来ていたオークに少数で立ち向かい、援軍が来る時間を稼ぎ、援軍到着後も数多くのオークを倒し、果てはオークジェネラルを直接討ち取った事で少佐へと昇進した。

 そして、今はオークに関しての調査隊の隊長を任されており、調査の結果を中将に報告していた。


「かもしれぬな。もしくは――」


 中将が彼女とは違った意見を言おうとした時、伝令が駆け込んで来た。


「伝令!再びゴブリンの群れが来ました!」


「数は?」


「10,000ほどになります!」


「……少ないな。別動隊を警戒させよ。周辺監視を怠るな。迎撃はレグルス大尉に任せる」


 レグルス大尉も中将が見出だした20歳を過ぎたばかりの男で、今は前線での指揮経験を積ませている段階だ。


「了解!」


「オークが来なくなってからかなり楽にはなったが、まだまだ北からの侵攻が止まらんな」


「中将、もしくはの続きは何でしょうか?」


「あぁ、もしくは、殲滅されたのでは無く、北に向かって新たな地域を得ようとしている。かもしれないと思ってな」


「それは……」


「なに、まだ確証があっての事では無い。それに、もし北に侵入していたとしても、我々には確かめようもないからな」


「……そうですね」


「とりあえず、指令所に行くぞ」


「了解です」



 場所を指令所に移り、ゴブリンとの戦闘報告を聞いていると、再び伝令が駆け込んで来た。


「東の砦から伝令!海岸線を南下中のゴブリン30,000を発見!援軍を求めています!」


「海岸沿いの砦では少々荷が重いか。援軍を出す。歩兵10,000と騎兵2,000だ。指揮はパリス中佐に任せる。これも陽動の可能性がある。騎馬隊は先行せずに歩兵と共に行動させよ」


「了解しました!」


 指令所に居たパリス中佐は、中将からの命令を受けて指令所を退出した。

 彼も30代で目立った功績は無いが、堅実な指揮をするので、こういった事には最適な人物だ。


「これだけ優秀な若い芽が出ていれば、我が軍の将来も安泰だな」




 ☆☆☆




 トールデン王国 キジムル 領都キジムル 領主館



「ふむ。とうとう来たか」


 王都から届いた書状を読んで呟いたのは、ハルメジア・フォン・アマルムデン公爵。


「なんと書かれていたのですか?」


 尋ねたのはキジムル領を任されているカバリム・フォン・モルトルデン男爵。


「帰還命令だ。これを拒否すれば、恐らくは司令官職を罷免されるな」


「!」


「まぁ、これだけの失態を重ね、侵攻命令にも従わないのだ。仕方があるまい」


「それは……」


「私の後任は援軍と共に来たベリーズ侯爵になるだろう。あの者は猪武者な所がある。多少強引でもあの者共に行動するのは避けよ。それがお前の命を救うことになるだろう」


「……承知しました。その御言葉肝に命じておきます」


「うむ。では、私は帰還の準備をする」




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