後始末 2
土倉広坪支配地域 コアエリア入り口前
俺が昼寝から目が覚めると、簡易シェルターの中には誰も居なかったので、顔を洗い眠気を飛ばしてから、水をコップ一杯飲んで外に出た。
「ブギィィィ!」
オークの鳴き声が聞こえてきたが、それは防壁の外からだと思われた。
俺が簡易シェルターから出ると、昼食前には無かった防壁があり、防壁の上でゴーレム達が動いていたからだ。
「ん?広坪、起きたのか」
「オシホ様、おはようございます。俺はどのくらい眠ってましたかね?」
「三時間程じゃな」
「そんなに……」
「朝も早かったからの。仕方があるまい」
「そう言ってもらえると助かります。それで、この状況はなんですか?」
「うむ。東からオークが来たのじゃ。シグマとタウが迎撃に出た。上に居るのはツヴァイじゃな」
周囲に警戒部隊として配置されていたオークの部隊がここを目指してきているみたいなので、その一部か。
北と南はアイン達とドライ達が向かったから大丈夫だろうから、西からも――。
「西からオーク接近!」
噂をすれば影、では無いが西からオークが来たらしい。
「迎撃に出ましょうか?」
「いや、シグマとタウが間も無く東からのオークを討伐し終わる。被害も無いみたいじゃしそのまま迎撃に向かうじゃろうから、お主は待機じゃ」
「そうですか。了解です」
何もすることが無いので、搭乗型メタルゴーレムに乗って防壁の上に登る。
「ツヴァイ、おはよう」
「広坪様、お目覚めでしたか。おはようございます」
「状況はどんな感じですか?」
「今、シグマとタウが東からの来たオークを撃滅した所ですね。これから西から現れたオークに対処に向かいます」
10mほどある防壁の上から見ると、それぞれ戦闘用ゴーレム20体を率いたシグマとタウが見えた。
戦闘用ゴーレム20体はアインやドライ達と比べると少ないが、ここに残っている通常タイプの戦闘用ゴーレムとしては、ほぼ全てになる。
それも、損傷が軽いものを修復したものが大半を占めている様だが、オーク相手ならば武装した戦闘用ゴーレムの相手にはならないだろう。
現に、東側から来た30,000程度のオークを無傷で倒した様だ。
シグマとタウは、東側から来たオークを殲滅した後は、コアエリア入り口を防壁で囲んだ場所を北と南に分かれて迂回して、西から現れたオークに向かっていっている。
南側は明らかに遠回りになっていたが、あの数で挟撃をするつもりみたいだ。
「援護はするのか?」
「いえ、良い戦闘訓練になるので、二人だけで戦闘させたいと思います。なので、手出しはしないでいただきたいです」
シグマとタウは、ツヴァイと共に先程は防戦に専念していたので、攻勢の経験を積ませたいのだろう。
「了解です」
シグマとタウの動きを見ていると、北側から回り込んでいたシグマが、西から現れたオークの北側に回り込む動きを見せながらオークに『ロックジャベリン』で攻撃を加えていた。
すると、オーク達は進路をシグマへと移して、突撃を始めたのだが、そこへ南側を迂回してきたタウが現れて、側面に『ロックジャベリン』で攻撃しながら突入していった。
オークへ混乱をみせるも、対応しようとして見せたが、そこへシグマも突っ込んできた事で混乱が大きくなった。
20,000に40体程度の数か突っ込んでも大した事は無いが、突っ込んだゴーレム達が一騎当千と言わんばかりに剣と盾を振り回し、次々にオークを倒していくものだから、シグマとタウがオークの群れに突入してから20分程で、東からの現れたオークの群れは壊滅した。
「お見事。あっという間にオークを殲滅しましたね。特にオークジェネラルをあえて残して、統率を維持させて拡散させなかったのが素晴らしい」
「シグマもタウも喜ぶと思うので、後で二人を褒めてあげてください」
「勿論です」
その後、魔石を回収してから防壁内に戻ってきたシグマとタウを褒めたのだが、俺が思っていた以上に喜んでくれた事には驚いた。
オークの殲滅を確認した俺は、コアエリア入り口を囲む防壁を一から作り直す手伝いをした。
俺が見た防壁は魔法で作った石壁だったので、改めて俺が周囲から土を集めて、オシホ様が防壁として固めていった。
一周した所で、魔法で作った石壁を消して、防壁内の整地などをした。
日が暮れ始めた頃、アイン達とドライ達が戻ってきた。
そして、戻ってきた全員が作業用ゴーレムに魔石の入った袋を持たせての帰還だった。
「「只今戻りました」」
「ご苦労様です。報告お願いします」
「まずは私から、北で三方向に分かれ、それぞれが20,000のオークの群れを撃滅。周囲を探索しましたが、他のオークは発見できませんでした」
アイン達は北でそれぞれ分かれて、突破してきた群れと北東、北西の外周警戒の群れを倒してきたのか。
「共同で30,000のオークを撃破、散開、20,000を三つ撃破、南西に50,000以上のオーク発見。」
ドライは共同で近場の30,000を倒した後、南、南東、南西に居たであろう群れを倒して、更に50,000以上の群れを発見か。
日没までの帰還を命じたから、時間切れで戻ったのだろう。
「南の方が多かったのか!失敗した……」
アインが落ち込んでいた。
戦闘大好きなアインとしては、確実に敵が居る北を選んだのだろうが、北側は俺達の侵入を知っていたので、逸早くコアエリアに到着したので、30,000の群れはコアエリア周辺に居た群れと共に殲滅されており、その分だけ南側より少なくなったのだ。
こうなると、オーク達は予想通りコアエリアの東西南北に30,000ずつ、更にその外側に東西南北とその間の八方向に20,000ずつ配置されており、東西に20,000の群れがまだ居る可能性が高い。
ドライが発見した50,000は、南の冒険者の国に向かっていた部隊……にしては早すぎるか。
南に対する予備部隊かも知れない。
「俺としては、東西に20,000の群れが一つずつあり、南西の50,000は冒険者の国に対する予備部隊だと考えます」
「ワシも同意見じゃな」
「今後の予定としては、ダンジョンの発生を確認したら、その日の内に北の前線拠点だった場所に戻っておきたいです」
研究所から前線拠点だった場所まで丸二日かかった事を考えると、明日は日没までの前線拠点に戻っておきた方が、無理無く研究所に戻れる。
「なので、ここをアインに任せる事を考えると、日の出を待ってから迎撃に出していては間に合いそうに無いので、アインとドライは今の編成で日の出前にここを出撃して南西に進出し、日の出と共に50,000のオークを襲撃して下さい」
「おお!広坪様ありがとうございます!」
「承知しました」
「ただ、もし苦戦するようなら、無理な戦闘は避けてください。苦戦しての撤退をした場合は、全員真っ直ぐここを目指してください。殲滅できた場合は、アインは北上し西から来るであろうオークの攻撃を目指してください。ドライは真っ直ぐここに帰還をお願いします。何か質問はありますか?」
「「……」」
「でしたら、ここからの出撃時間はお二人に任せるので、日の出前に到達できるようにしておいて下さい。以上です」
「「了解!」」
出すべき指示は出したので、仕事の続きをしようとする。
「それでは、防壁内の整地の続きを――」
「駄目じゃ。もう暗くなるのじゃから、晩飯を食べて寝るのじゃ」
「昼寝もしたので、元気一杯なのですが?」
「駄目じゃ」
「はぁ、了解です。寝る前に考えを纏めたいので、紙とペンありましたかね?」
「一応持ってきてあったハズじゃ。夕食後までに持っていく」
「お願いします」
地域を手に入れ、魔力供給範囲は最上の結果を得れたので、今から地域の整備計画や作りたいものリストなんかを作っておきたいので、紙とペンを出してもらう様にお願いして簡易シェルターの中に戻った。
翌朝、起きてみるとアイン達とドライ達の姿が無かった。
夜中の内に南西のオークの迎撃に出たのだろう。
「オシホ様、おはようございます。要塞化の調子はどうてすか?」
「ふむ。粗方済んだぞ。防壁の厚さは昨日の三倍にした。空堀も大きいのを作ったが、こちらは魔石回収用じゃな。後はアインにでも任せれば良いじゃろう。あれにも仕事を残しておかねば暇になってしまうわ」
防壁、ゴーレムの簡易的な整備をする空間、武器の保管庫等を作ってあるが、他に必要な物はアインにお任せになる。
これからもオークの襲撃はしばらくは続くだろうが、ここは戦闘大好きなアインに任せて、俺達は報告と地域整備のための準備などがあるので、さっさと研究所に戻る事になっている。
ここには可能な限り戦力を置いていく。
今出ているアイン達の被害状況にも影響されるだろうが、通常タイプの戦闘用ゴーレムを200体、作業用ゴーレムを50体、メタルゴーレム10体を残していく予定だ。
今残っている戦力の殆どを置いていく。
残っている戦闘用ゴーレムは230体程で、その中から状態が良いものを優先して置いていく。
他には、予備武器を含めて、使える盾や剣、槍も置いていく。
折角手に入れた地域なので、出来るだけ確保しておきたいための処置だ。
持ち帰る魔石や、大破したゴーレムから回収されたゴーレムのコアや貴重な物、破損して使い物にならなくなった武器などを整理していると、ドライが帰還してきた。
「南西のハイオーク10,000を含むオーク50,000全てを撃破。被害は軽微。アインは北上」
「承知しました。ドライは引き続き東の偵察に出て下さい。昼までには帰還をお願いします」
「了解」
ドライを見送った後、オシホ様が話し掛けてきた。
「広坪、そろそろダンジョンができるハズじゃ。コアエリアで待機するぞ」
「了解です」
コアエリアに入ると、相変わらず明るかったが、コアの発する光が弱まっている様だった。
取りあえず、ダンジョンが出来るまで暇なので、祖とで作った石製のテーブルや椅子を運び入れてお茶を飲んでまったりと過ごす。
お茶を飲み始めで30分ほどするのと、コアエリアの入り口とコアの中間の壁、コアエリア入り口を北、コアを南としたとき、東西の位置に新たに入り口が出来た。
「あれがダンジョンの入り口と出口、ですか……。どっちがどっちでしょうね?」
「行けば分かるじゃろう」
結論から言って、東側が入り口、西側が出口だった。
ダンジョンの入り口は、コアエリアへの入り口の様なスロープになっていて、ダンジョンの中を覗いてみると、スライムを一匹確認する事が出来た。
出口は、西側に出来た穴から通路を少し進むと、直径10mほどの空間があり、そこに八つの魔方陣があった。
事前情報によれば、ダンジョンの中にある帰還用の魔方陣からここのどれかの魔方陣に帰還出来る様になっているのだそうだ。
「ダンジョンの発生を確認。これで目標達成じゃな」
「そうですね。これで研究所に帰れます」
その後、西のオークを撃破したアインの帰還と、ドライがオーク接近の知らせを持ってくるのがほぼ同時だったので、アインがそのまま迎撃に向かっていた。
その間に昼食を済ませ、アインが魔石を回収して戻ったのを確認した俺達は、通常タイプの戦闘用ゴーレムを選別してからアインに引き渡し、北の前線拠点だった場所に向かって出発した。
そして、それから二日後の夜に研究所に帰り着く事が出来た。




