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後始末 1

 



 土倉広坪支配地域 コアエリア



「大丈夫か?」


 オシホ様が、膝から崩れ落ちた俺に声をかけてくる。


「はい、大丈夫です。それよりも魔力供給範囲が地域全体になったのを感じました。確認願います」


「それは大丈夫じゃ。ワシの方でも感知した」


「そうですか。でしたら、後は外のオークを倒すだけですね。……くっ」


 俺は足に力を入れて立ち上がろうとするが、力が上手く入らず立てない。


「待て、お主も疲れたじゃろう。後は我らに任せよ。アイン、ツヴァイ、ドライ、外に出てオークへの対処に加われ。広坪の護衛はワシと搭乗型、遠征用で良い。メタルは持って行け」


 オシホ様が近くまで寄ってきていた精霊トリオに指示を出す。


「「「了解!」」」


 精霊トリオが通常タイプの戦闘用と作業用ゴーレムに加えて、メタルゴーレムをそれぞれが率いてコアエリアから出ていった。

 そして、俺の回りには遠征用の戦闘用ゴーレムの半数、20体ほどが陣取った。

 陣取ったのは、戦闘で比較的ダメージの少ないもののみで、残りは損傷が激しかったり、大破して動けないような物ばかりだ。




「お主がそれほど恐怖していたとは思わなかった。すまぬ」


 静かになったコアエリアで、オシホ様がそっと話しかけてきた。


「……戻った時に、ですか?」


 俺がひた隠しにしてきた事を、看破された理由を尋ねる。


「そうじゃ。一年以上前以来じゃったし、戦闘中だったが、お主の感情は読み取れた。……しかし、何故じゃ?搭乗型のメタルゴーレムに不安でもあったか?」


「いえ、搭乗型のメタルゴーレムは非常に優秀でした。ハイオークジェネラルよりも強力なオークキングの蹴りを受けても大した損傷は受けませんでしたから。……事欠けは矢を受けた事です」


「あれか……」


「はい。訓練以外で初の怪我。それも、オークからでは無く、助けに行った王国軍からの攻撃でした。あの時は、強敵なハイオークジェネラルを倒した事で、王国軍に喜ばれるのでは、歓迎されるのでは、そんな浮わついた考えも浮かんでいました。そして、後からオシホ様の介入が無ければ危なかったのだと知ったとき、心底恐ろしくなったのです」


「何がじゃ?」


「俺の死の事もそうですが、殺された後の事です。あの時俺が殺されていたら、ルティ達がどうなっていたか考えたのです。俺が死ねばオシホ様達は去るでしょう。そうなると、残るのは王国に反逆した馬鹿に囚われていた人達と、反逆者の子を宿した者達です。アリスさんが居るとは言え、管理者の居なくなった研究所でどの程度生活できるか分かりませんし、戦力も半減です。王国が敵対してきている以上、あまり良い未来があるとは思えませんでした。そして、それはこの作戦が失敗した後にも続く事が予想されたので、どうしてもここが欲しかったのです」


 俺は、矢を受けた後に脳裏を過り、頭から離れなかった事を吐露していた。

 王国は大きな国らしいし、そんな国に敵対されては、聖堂院はまず諦めなければならないし、研究所もどうなるか分かったものでは無いのだ……。

 ルティ達の未来のためには、王国以外への道を確保するために、ここがどうしても必要で、決死の覚悟をしていた。


「心外じゃな。お主が死んだとしても、少なくともワシとツヴァイは研究所に残ったハズじゃ。じゃからある程度はお主の妻達や子達の事は守ってやったわ。忘れとるかも知れぬが、ワシは人が少ない場所でのんびりしたいからお主に付き合っておるのじゃ。居心地が良いあの場所を早々簡単に離れると思うで無い」


「……オシホ様、ありがとうございます」


 オシホ様の慰めに、素直に感謝しておく。

 オシホ様が残ってくれるなら、ある程度はどうにかなりそうだと思えたからだ。


「まぁ、良い。お主はあの時殺されはしなかったし、ここを制圧したのじゃ。過ぎた過去など忘れて、これからの事を考えよ」


「それもそうですね。ですが、既にいくつか腹案はありますから、帰ったら相談しますね」


「なんじゃ、もう考えがあったのか。そらならば楽しみにしておこう」


「はい」



 オシホ様にはいつも助けられている。

 俺が今こうして居られるのもオシホ様の厚意によるものである以上、いつか恩返しがしたいものだ。



「こうしておるのもなんじゃし、お茶の用意をしよう」


「ありがとうございます」


 オシホ様が作業用ゴーレムに荷物を運ばせ、お茶の入った保温魔具等を出してくる。

 大半の生活に必要な物は置いてきたが、俺一人が二、三日程度なら生活出来るだけの荷物が運ばれていた。

 俺一人分という事もあって、量はそれほどでは無い。


「む。支配後でもコアエリア内の地形操作はできぬな。仕方がないの。作業用ゴーレムを台にするか」


 作業用ゴーレム2体を座らせて手を出させ、1体の手にお茶を、もう1体の手にお茶請けのクッキーが載せられた。


「さぁ、お茶を楽しむが良い!」


「少々気まずいですが、いただきます」


 温かいものがお腹に入ると、少し落ち着いてきた。


「外は大丈夫でしょうかね?」


 落ち着いてくると、外の事が気になってきた。


「大丈夫じゃろう。何かあればこちらに来るハズじゃ。それに、魔力供給範囲がこの地域全体になった以上、今頃は外で好きに暴れまわっておるじゃろうな。誰が、とは言わぬが……」


 オシホ様の言葉で、なんとなく想像が出来た。

 暴れているのはアインだろう。

 魔力供給範囲の制限があったから、正面突破、強行突破なんかはしてきたが、好きに攻撃に動く、というのはしてこなかった。

 なので、自由になったアインはオークの群れの中を自由に暴れまわっているだろう。


 ツヴァイは、コアエリア入り口を堅守しているだろう。


 ドライは、新精霊達の指揮を執っているか、オークの群れを突破して、外側から逃げようとするオーク達に攻撃しているかも知れないな。



「そう言えば、ダンジョンは何処でしょうね?」


 完全に落ち着いた俺は、人が地域を支配した場合に作ることができるダンジョンについて尋ねた。


「ん?お主は、ダンジョンを作るつもりなのか?」


「はい。拡散タイプでは色々と不都合がありそうなので」


「そうか。ダンジョンは、コアに触れながらダンジョン作成を希望し、コアエリアを完全に確保したと見なされてから24時間後に作成されるそうじゃ」


「完全に制圧、ですか?出来ていると思うのですが?」


「コアエリアの入り口から半径1kmほどから魔物を全て排除せねばならぬ。まだオークがうろちょろしておるじゃろうし、今しばらくは時間がかかろう」


「そうですか。なら、俺はもう大丈夫なので、外の手伝いに行きましょう」


「……そうか。承知した。じゃが、その前にコアに触れてダンジョン作成を希望しておけ」


「おっと、そうですね。しておきます」


 俺はコアに触れ、『ダンジョン作成を希望し』と念じる。

 すると、コアが一度脈打った様に感じた。


「これで大丈夫ですかね?」


「うむ。それで良かろう。では行くぞ」


 俺がコアに触れダンジョン作成を願っている間に、オシホ様はお茶セットを片付けていた。


「了解です」


 俺はオシホ様に返事をして、搭乗型メタルゴーレムに乗り込む。


「広坪、剣が折れたじゃろう。取り敢えずはこの剣を使っておけ」


「分かりました」


 オシホ様指揮下の無人搭乗型強化ロックゴーレムから大剣を受け取る。


「良し、行くぞ」


「了解!」


 俺とオシホ様、動かせるゴーレム達を率いて、コアエリアから出た。




 コアエリアの入り口に向かうと、案の定ツヴァイが入り口を守護していた。


「広坪様、もう大丈夫なのですか?」


「はい、もう大丈夫です。それで、状況はどうですか?」


「アインとアイン班が攻勢に出ました。ドライも自分の班を率いて外周に出てオークを狩っています」


 アインも予想通り、ドライは攻勢側たったか。

 という事は、ツヴァイが入り口を守り、残りのツヴァイ班、シグマとタウがその周囲を守っているのか。


「大丈夫ですか?」


 戦力が大幅に減っているので、守備の状態を尋ねる。


「オークの統率は、オークジェネラルによってある程度は保たれて居ますが、オークジェネラル同士は連携が取れないなので、全く問題ありません。逃げる群れも出ましたが、そちらはドライが対応しました」


「分かりました。でした、俺も少しオークを狩りに出ます」


「了解です。お気をつけて」


「ありがとう」


 ツヴァイが入り口に並べていたメタルゴーレムを退かしてくれたので、そこから外に出る。



「オラァォァァ!」


 右の方からアインの声が聞こえてくる。

 そちらの方を見ると、アインがオークの群れの中で大剣を振り回して居るのが分かる。

 そして、のの周囲にはアインと連携をとっているアイン班、シータとラムダが居た。

 どうやら、一つのオークの群れを囲む様にして攻撃している様だ。


 ドライは……近くには見えない。

 オークを追撃していったのだろう。


「道を開けてください。俺も出ます」


「広坪様!どうぞ!」


 タウが道を開けてくれた。


「タウ、ありがとう。オシホ様、行きます!」


 タウにお礼を言った俺は、オークに向かって走り出しながらオシホ様に声をかける。


「好きに動け!ワシが適当にサポートする!」


「了解!……はぁぁぁ!」


 俺は大剣を交互に振るいながらオークの群れに突入した。


 オークはハイオークやロイヤルガードに比べると格段に柔らかく、殆ど抵抗無く斬れるので、無双的なゲームの様にオークの群れの中で剣を振るう。


 オシホ様は、俺が作った空間に入り込み、俺の邪魔にならない範囲でオークを倒し、俺をサポートしてくれた。




 それから一時間ほどで周囲のオークを殲滅し、コアがコアエリアを俺達が完全制圧したのを認識した事を感覚的に感じた。


「やっと終わりましたね」


「そうじゃな。ん?ドライも戻ってきておる様じゃな」


 見れば、ドライが北の方から戻ってきていた。


「只今戻りました。報告、北からオークが接近中。迎撃の必要を認めます」


 そう言えば、俺達はオークの群れを突破して突破してここまで来たのだった。

 それが今頃追い付いてきたのだろう。


「オシホ様、どうしましょうか?俺としては、ダンジョンの作成を見届けてから研究所に戻りたいです」


「そうじゃな。ここに防衛拠点を作るか。他にもこちらに向かっていておるじゃろうし、丁度良かろう」


「オシホ様!私は迎撃に出たいです!」


 アインが申し出てきた。


「ふむ。まぁ、良かろう。明日の昼までにここに帰還するならば、好きにして良い」


「ありがとうございます!」


「ただし、戦力は再編する。アインとアイン班はそれぞれ戦闘用ゴーレム30、作業用ゴーレム10、メタルゴーレム1を与える。メタルゴーレムはハイオークジェネラル対策として与えるが、無理はするな」


「了解です!」


「ドライはどうする?」


「偵察にと狩りを」


「了解じゃ。明日の昼までに帰還、後はアインと同じ編成で出よ」


「了解」


「ツヴァイとツヴァイ班はここで我等と待機じゃ。陣地構築を手伝ってもらう」


「了解です」


「広坪は、もう昼じゃし昼食じゃな。ツヴァイが護衛と世話をよせ。ツヴァイ班は周辺警戒しながら魔石回収じゃ。ワシはコアエリアを片付けてくる。では行け!」


「「「「了解!」」」」


 アインとアイン班が北へ、ドライとドライ班は南へ向かい、ツヴァイ班がコアエリア入り口周辺に散乱した魔石を回収し、オシホ様はコアエリアへ向かった。



「広坪様、簡易シェルターを設置しました。こちらへ」


「了解です」


 簡易シェルターの中に入り、ツヴァイが用意した昼食を食べた俺は、少々疲れたので昼寝をさせてもらった。




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