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戦闘報告と侵攻準備

 



 研究所



「只今戻りました」


 そう言って聖堂院経由で戻った俺は、アリスさんと妻達総出の出迎えを受けた。


「「「お帰りなさいませ」」」


「あ、あはははは。皆で出迎えですか。ありがとうございます」


「コウ様、お体の調子はどうですか?」


 お腹が大きなルティが尋ねてきた。


「あぁ、はい。大丈夫です」


「でしたらこちらへ」


 俺はある程度状況の予想が出来ていたので、黙って従う。




 会議室



 ルティに案内され会議室に着いた俺は、コの字型に配置された机の中央、椅子しか置かれていない場所に座らされた。

 まるで、裁判を受ける被告の様に。


 俺の右側にはオシホ様と精霊トリオ、左側はアリスさんとステラ、ニーナ、メリッサが座り、正面にはルティ、カティ、マリーが座っている。

 ミリシアとレティシアも居たが、ルティ達の後ろで椅子に座っていた。



「それではコウ様、怪我をした時の状況の説明をお願いします」


「それは既に報告が行っていると思うのですが?」


 俺が怪我をした日の夜中にも研究所からの補給物資を持った者が訪れており、その者が既に報告を持ち帰っているハズだし、ツヴァイとドライが最短ルートに設置した魔力供給範囲を通って昨日の内に帰還しているので、改めて聞く必要は無いと思う。


「コウ様、怪我をした時の状況の説明をお願いします」


「りょ、了解です」


 やはり逃げられないか。




「――という訳で、気が付いたら簡易シェルターの中に居ました」


 軽く俺が負傷した経緯を説明した。


「分かりました。オシホ様、コウ様の近くには居れなかったのですか?」


「うむ。突撃してきたハイオークリーダー共に足止めを受けた。ステラ達が積極的に動き、早々に向かうことが出来たら広坪を助ける事がてきたが、完全にワシの手落ちじゃ。すまぬ」


「いえ、対策は出来たでしょうが、コウ様も戦力に数えられていたなら、対処は困難でしょう」


「私もそう思う。それに、今回は前線では無く後方待機中にハイオーク共の攻撃によって無理矢理一対一にさせられた様なものですし、ゴーレムが大破はしたものの、ハイオークジェネラルには対処できていたのでそれ自体は問題ないと思います。問題なのは王国軍です」


 オシホ様が謝るも、ルティは俺が前線に出ることを問題視し、カティも俺が前に出るのを問題視はしているものの、戦闘そのものよりは、そのあとの王国軍の攻撃を問題視していた。



「王国軍が攻撃してきた理由については状況、理由一切分かりません。なので、王国との交渉にはしばらく俺は出ません。それに、ルティやステラ達も交渉には出させません。突然攻撃してきたとしてもおかしくないと俺が考えるからです。交渉はオシホ様達、精霊の方々に任せます。どんな事態になっても構いません。責任は俺が持てます」


「了解した」


「それから、戦闘についてですが、しばらくは控えますが、あと一回は遠征に参加します。申し訳ありませんが、これは決定事項てす」


 俺の言葉にルティ達が反応する。


「あと一回、ですか?理由を聞かせて貰っても構いませんか?」


「勿論です。王国軍ではオークの攻略は難しいでしょう。なので、俺がオークの地域を攻略するからです」


「コウ様、それは――」


「待てルティ、広坪様の話を聞こう。広坪様、話の続きをお願いします」


 ルティが俺の無謀な計画に反対しようとしたのだろうが、カティが止めて話の続きを促された。


「了解です。以前から地域支配は考えていました。王国軍に気を使うというのもありましたが、正直場所が良すぎて躊躇っていました。オークが支配している地域は交通の要衝となる場所なので、大きな利権が絡みます。利権は面倒事を呼び込んでしまいます。なので、王国軍の支援をして、他へ行くときに協力的とは言わなくても、邪魔されない程度の権利を得るぐらいはしたかったので、今回動きました。ですが、攻撃されては最早気を使う必要も無いので、地域支配をして独自のルートを確保しようと思ったのです」


「……それは、私達のため、ですか?」


「それはそうですが、半分は俺のためですよ。未練を少しでも減らしておきたいので。俺が生きている間は問題ありませんが、死んだ後はどうなるか分かりませんからね。早めに生活基盤を確保するに越したことは無いでしょう」


「……ありがとうございます」


 ルティがお腹を撫でながらお礼を言ってきた。


「ですが、コウ様が危うく死んでしまうかも知れなかったのです。出来れば控えていただきたいです」


「全くです。私達は広坪様と少しでも長く一緒に居たいのです。危険な事は避けるべきです。王国軍も力を落としているでしょうし、しばらくは力を溜めるべきです」


「私も出産後なら力になれますから、それまで待てませんか?」


 ルティは否定的ではあったが、カティは力を溜める事を推奨し、マリーは参戦を希望してきた。

 だが、マリーの出産は半年後の4月頃になり、春になってしまうし出産後はすぐには動けない以上地域支配への参戦は難しいだろう。


「早ければ一ヶ月半、遅くても二ヶ月後には行くつもりなので、マリーは難しいですね。それから、安全対策は十分にするつもりです。少なくとも搭乗型ゴーレムをかなり強化してたいと思います。というか、現行の搭乗型ゴーレムはしばらくは全面的に使用禁止にします」


「やはり、今の搭乗型ゴーレムでは役不足ですか。かなり強化していたつもりだったのですが、破壊されたなら仕方がありませんね。広坪様、不良品を使わして命の危機に曝したこと、真に申し訳ありませんでした」


 アリスさんが謝る。


「いえ、不良品という程ではありませんでした。俺の対処の仕方も悪かったです。それに、ハイオークジェネラルは倒せましたし、少々タイミングと相手が悪かったのです。ハイオークジェネラルがあの熊並みだとは思っていませんでした」


「そうですか。戦闘報告は後で改めてお願いします。強化計画もあるのですよね?」


「はい。また面倒事をお願いする事になりますが、よろしくお願いします」


「勿論です」


 搭乗型ゴーレムの事はアリスさんにお任せだ。



「……行っては欲しくありませんが、必要な事なら仕方がありませんし、安全対策をしていただけるなら持てます。コウ様は意外と頑固ですから。必ず無事に戻ってくださいね」


 搭乗型ゴーレムの強化の話を聞いて、ルティが認めてくれた。


「約束します。それに、無理そうなら引くつもりなので、怪我をするつもりはありません」


「信じて待ちます」


「ありがとう」


 ルティの許しも出たので、これで本格的に計画をたてられる。



「あの!イツツッ……僕も同行したいです」


「「わ、私も!」」


 ステラ、ニーナ、メリッサが参戦を希望してきた。


「三人共落ち着きなさい。昨夜は相当無理をしたのでしょう?座ったままで大丈夫ですよ」


 ルティが三人を落ち着かせる。

 ルティの言う通り、昨日は夜営になったのだが、肉体全体で過剰再生をした結果、一時的に元気になりすぎて三人では足らなかった。

 結果として、ステラ達は足腰にダメージが残った。


「……」


 俺は、何も言うことが出来ない。


「僕達の搭乗型ゴーレムも強化して、広坪様の力になりたいです!」


「善処はしてみますが、正直難しいかもしれません。俺のゴーレムのコアならなんとか大丈夫というぐらいにはなると思いますから」


「……分かりました」


 分かったとは言ったものの、ステラ達の表情は諦めた様には見えない。

 出撃するときは注意しておこう。




「では、大体の用件は済んだみたいですし、解散ですかね?」


 今後の方針もおる程度決まったし、俺はここでの解散を希望してみた。


「いえ、これからが本番です。コウ様は私達に心配をかけたので、しばらくは私達と共に過ごしてもらいます。なので、その順番を決めたいと思います」


「了解です……」



 ここからは、俺が誰ととんな順番でどんな風に過ごすのかの話し合いが行われた。

 愛されているなぁ……とは思ったが、話し合いが行われたのは最初と最後の方だけで、その途中は俺への文句大会になっていた。

 もっと一緒に居たいだとか、すぐに妊娠したのでステラ達が羨ましい、孕みたい、文句と共に様々な要望が出された。

 これらには、俺は羞恥心を抑えながら恥ずかしい台詞で対応した。

 悪くは無い手だったが、一人ずつ皆の前で愛を囁かされたのは、大変だった。


 今回は、俺が矢を撃ち込まれた結果、心配や不安からこのような事態になったと思うので、自身の身の安全には最大限気を付けようと改めて思った。




 ☆☆☆




 ルティ達と様々にして過ごしながら、地域支配への準備を進めた。


 まず、搭乗型ゴーレムの強化についてだが、こちらは単純にメタルゴーレムにすることにした。

 メタルゴーレムは魔力の消費が激しいし、コアもロックゴーレムよりも大きな物が必要だが、俺の搭乗型ゴーレムならばメタルゴーレムに換装する事も可能だった。


 メタルゴーレムにしていなかったのは、魔力消費が主な理由で、搭乗型ゴーレムは俺を安全に運ぶことが最優先なので、魔力供給範囲外での活動もある程度必要だった。

 だが、今回は魔力供給範囲内での戦闘を想定し、魔力供給範囲外での活動時間を大幅に犠牲にして搭乗型メタルゴーレムを作り上げてもらった。

 それも、かなり操作がしやすい様にするために、何度も改善をしながら、である。

 お掛けで、納得がいくものができ、ゴーレムに乗って居る限りは相当な安全なものになった。


 完成した搭乗型メタルゴーレムを見て、ルティも納得してくれた。



 他にも、搭乗型ゴーレムは、既存のロックゴーレムの状態での強化が行われた。

 ロックゴーレムの搭乗型ゴーレムは、ハイオークジェネラルが出た場合を想定して使用禁止にしたが、地域を攻略すれば使用許可を出すつもりなので、こちらの強化も行ったのだ。


 こちらは、関節を強化した。

 俺の搭乗型ゴーレムは、ハイオークジェネラルとの戦闘で左腕の肩関節の破損や手首の破損で苦境に立たされたので、関節を強化するだけでも大分違うと思う。

 関節は、操作性を重視して丸形の関節を使っていたが、曲げる方向を限定した関節にすることでいくらか強度を高める事が出来た。

 あとはゴーレムの障壁を強化することで、ゴーレム全体の強度を高めた。


 今のところ現行のコアではこれが精一杯だったが、魔力供給範囲外での活動時間を多少犠牲にはしたものの、計算上はハイオークジェネラルにも以前よりははるかに対応できると思える物が作れた。



 両方とも魔力供給範囲外での活動時間を犠牲にしているが、これは魔力供給範囲をかなりの範囲で使用可能になった事で、そこまで活動時間を確保するに必要が無くなったからだ。

 それに、上手くすればゴーレムの活動範囲が飛躍的に広がるので、魔力供給範囲外ての活動時間をそこまで気にしなくても良くなったのだ。




 二ヶ月が経ち、オークの支配する地域のコアに攻撃を仕掛ける計画がある適度立った頃、雪が降り始めた。


 そして、侵攻準備が最終局面という所で、ルティが産気付いた。




明日、明後日の更新は難しいかも知れません。

すみません。

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