オーク本陣強襲
ジルト市北 街道上 ジルト市救援前線拠点
午後1時、俺達は前線拠点を出発し、南下を開始した。
ここからは足跡などを気にせず行動できる。
一番遅い戦闘用ゴーレム達に速度を合わせながら南下した結果、一時間掛からずにドライと合流した。
ドライからの偵察結果を聞いた俺達は、少し北に戻ってから東側の森の中を移動してジルト市の東側に回り込んだ。
距離はそれほどでも無かったが、30分ほどかけてジルト市から東に延びる街道に出た。
「それで、この街道の先に報告にあった本隊と思わしき群れが居るのですね」
「そうなります」
俺達が東側に回り込んだのは、包囲する一団とは別で後方、つまり東側で待機している一団が居るとの報告を受けたからた。
幸いに、手持ちの魔具で移動できる距離にあり、敵本陣と思わしき群れに奇襲を仕掛けるために回り込んで来たのだ。
「――手筈は以上です。正面はツヴァイ、右翼はアイン、左翼はドライ、俺達は正面のツヴァイの後方になります。何か質問はありますか?」
「「「「……」」」」
「無ければ出発します!全速前進!」
全速前進では、移動の地響きでオーク達に俺達の接近を気付かれ、奇襲の意味がなくなってしまうが、地形的に奇襲は難しいので気にしないことにする。
地形は、俺達が通ってきた森が北にあるが、街道と南側は平地になっており、とても見晴らしが良いので、奇襲は難しい。
なので、敵側の退路から接近して遠距離攻撃を仕掛ける。
救援に来て、いきなり敵の本陣に強襲とか上手く行きすぎな気がするが、頭を潰せるチャンスならやっておきたい。
ただ、本陣と思われる群は数にすれば10,000程だが、全てがハイオークらしい。
しかも、指揮固体と思われるのは、かなり大きく、ハイオークジェネラルなのでは無いか、と言われた。
オークの上位固体であるハイオークのジェネラルとなると、かなりの強さが想定され、賢さもオークジェネラルを越えてくるだろうから、油断は出来ない。
俺達は、精霊ドライに預けたそれぞれ100体の通常の戦闘用ゴーレムを前衛に進んでいる。
戦闘用ゴーレム達は、10体が精霊トリオに付き、残りが三列になって横にずらっと並んで前進している。
これだけで横幅200m程になっており、かなり広い。
精霊トリオの後ろには、アインはラムダ、ツヴァイはタウ、ドライはオメガがそれぞれ通常の作業用ゴーレムを率いている。
俺達は予備戦力としてタウの更に後に位置して、共に前進している。
俺達の編成は、全員が遠征用になっているので、万が一は魔力供給範囲を無視して離脱もできる。
俺達が全速前進していると、500ほどのオークの群れが見える。
周辺警戒のための群だろう。
オーク達は、俺達が近付く地響きでこちらに気付いて逃げているが、こちらに方が良いだろう早いので、簡単に追い付く。
「移動しながら遠距離攻撃で前方のオークを攻撃!蹴散らせ!」
ツヴァイの班の最前列を走る30体の戦闘用ゴーレム達が両腕を前に向けて『ロックジャベリン』を放つ。
60もの『ロックジャベリン』がオーク達に殺到し、100近くを倒した。
60で100近くを倒せたのは、『ロックジャベリン』が貫通し奥のオークにも命中したからだ。
そして、数秒後にはアインとドライの最前列を走る戦闘用ゴーレムも攻撃に参加し、オーク達を殲滅する。
敵本陣はハイオークのみだが、周辺警戒にはオークが使われていた。
今回は、俺が全体の指揮を執っているので、俺の号令で動いてもらっている。
これは、王国軍相手に俺の存在をアピールする意味が大きい。
ビストラ市でも俺が前に居ることが多かったが、これらはゴーレムであるオシホ様達を前面に出しすぎると、聖堂院でも起きた人を生け贄疑惑が発生する、というのもあるが、責任者の顔を広めるという意味の方が大きい。
万が一の時は、俺の首で済むようにするためだ。
オシホ様達が責任者だと思われれた場合は、ゴーレムの首になり、ゴーレムの首では責任をとったとは見なされず、俺以外人間、ルティ達に責任が及んでしまう可能性があるので、それを避けるため人と接触する場合は、俺が極力前に出るようにしている。
それに、今回の攻撃では魔具の数がギリギリなので、この攻撃も魔力供給範囲に余裕が無いので、オシホ様は魔力供給範囲の調整をしてもらっている。
主に、遠征用の作業用ゴーレムに魔力供給用の魔具を持たせて移動させる事で、ロスを少なくする様に調整してもらっている。
敵本陣攻撃の方法を遠距離攻撃主体にしたのも、十分な魔力供給範囲を確保出来ないからだ。
あえて突撃はせず、遠距離攻撃でこちらが接近戦を避けてる様に見せ、こちらに引き込み殲滅を図るたもりだ。
オーク達が俺達の事を知っていれば逃げ出すかも知れないが、オーク達は俺達の事を知れないハズだ。
これまで出会ったオークは全て倒しておるので、情報は漏れていない、と思う。
こちらは全部合わせても500に満たぬ数なので、10,000のハイオークなら簡単に倒せるとみて襲いかかってくれば良し、強敵と見て、各個撃破のチャンスと見て無理押ししてきても良し、逃げたなら逃げたで可能な限り追撃をするだけだ。
今回の200,000を超えるオーク相手は、正直殲滅は難しい。
なので、今回で俺達の情報がオーク側に漏れるのは仕方がないと思う事にしている。
攻撃を待てる知性を持っているオーク達の指揮固体は、必ず俺達への対処をしてくるだろうが、それは遅いか早いかの違いでしか無いので、今回の地域陥落の危機回避を優先する。
「見えた!」
警戒にはオーク達を倒して三分程でハイオークが見えた。
俺達の接近を知り、防御体制をとっている様だ。
「遠距離攻撃をしながら接近!撃て!」
まだ有効射程から少し遠かったが攻撃指示を出した。
ゴーレム達は、やや上の方を狙い、軽く曲射気味に『ロックジャベリン』を放つ。
ゴーレムが放った『ロックジャベリン』は、ハイオークの最前列では無く、その後の方に着弾した。
「止まれ!陣形を整えながら攻撃!」
遠距離攻撃をしながら接近し、ハイオーク達の三分の一程が有効射程に入った所で止まり、少し乱れた陣形を整える。
陣形は鶴翼に近く、左右のアインとドライが中央のツヴァイより少し前に出ている。
精霊トリオの戦闘用ゴーレム達は前列が座り、中列が膝立ち、後列が立ったまま、両腕の魔具による『ロックジャベリン』を放っていく。
戦闘用ゴーレムの後ろで作業用ゴーレムを率いていた新精霊達は、地面を1mほど隆起させ、その上に作業用ゴーレムを立たせて、両腕の魔具による『ロックジャベリン』を放つ。
俺達は、更に後方になるので、2mほど地面を隆起させて、その上から『ロックジャベリン』による攻撃を行う。
俺達の攻撃参加は、俺、オシホ様、新精霊四人、ステラ、ニーナ、メリッサになる。
「攻撃止め!」
俺は、全員が攻撃可能になった段階で攻撃を止める。
陣形を調整しながらの攻撃は、それぞれの指揮下のゴーレム達による一斉攻撃で全体としてはバラバラだったので、呼吸を合わせるために一度止めたのだ。
「交互攻撃始め!」
中央のツヴァイと両翼の後方、ラムダとオメガ、俺達が一斉射し、少し間を開けて両翼のアインとドライ、中央後方のタウが一斉射する。
これで、一斉攻撃の効果を残しつつ、『ロックジャベリン』を放つ間隔を短くする。
こちらの攻撃に耐えていたハイオーク達は、こちらが止まった事で動揺が見えたが、それに構わず攻撃を続けた。
更に俺達が完全に止まって攻撃を始めた事でハイオーク達にかなりの動揺が見えた。
「ブギィィィィ!!」
俺達がそれぞれ10回ほど一斉射をした頃、鳴き声が聞こえ、ハイオーク達が動き出した。
その行動はこちらへの突撃だった。
この場合は、交互攻撃を続けながら、攻撃目標を最も接近している先頭に集中攻撃と伝えたあるので、改めて指示は出さず、攻撃を続ける。
こちらに接近しようとするハイオーク達に『ロックジャベリン』が当たり、次々に倒せてはいくが、ハイオークはオークと違い、当たり所が良くないと一撃では倒せず、貫通もしないので、オークとは違って段違いに倒せて居ない。
それも、攻撃を続けた結果、2,000以上のハイオークは倒せていた。
ハイオークとの距離は500mほどあり、こちらが遠距離攻撃で足止めを行ったとしても、1、2分で詰められる距離だ。
ハイオークの足止めを中心に行いながら攻撃を続けたが、どうとうハイオークとの距離が100mを切ったので、前衛に戦闘用ゴーレム達は立ち上がり迎撃体制に移行した。
ハイオークの接近の間に、さらに2,000ほどのハイオークを倒せた。
これで四割程を削れた事になる。
「抜かせるな!」
ハイオーク達は、中央のツヴァイを目掛けて突っ込んで来ており、勢いに任せた突撃で戦闘用ゴーレムの隊列を何匹が突破したが、後方に率いていた精霊トリオ達が押さえ込んだ。
これも、直前まで攻撃を続けた作業用ゴーレム達のお陰だ。
「第二段階へ移行!押し返せ!」
三列になった戦闘用ゴーレム達で、突撃してきたハイオークを押さえ込んだのを確認した俺は、第二段階への移行を告げ、戦闘用ゴーレム達は、突撃を押さえ込む防御から殲滅の攻撃へ移った。
更に、作業用ゴーレムを率いていた新精霊達は更に後に下がり、合流して2mほど地面を隆起させて左翼から回り込もうとしているハイオーク達を集中攻撃する。
右翼は森なので集団の突破は難しく、遠距離攻撃には適さないので、左翼支援が中心になる。
俺達は、地面の隆起を戻し、作業用ゴーレム達と入れ替わる様に前に出で、不足の事態に備える。
前衛の戦闘用ゴーレム達は、少しずつ陣形を変えていく。
両翼のアインとドライはそれぞれの両端を少しずつ下げで凸陣形に、中央のツヴァイは全体で下がりつつ中央部を下げで凹陣形に移行して、全体的にM型に陣形を変えていく。
中央部は、部分的に半包囲してハイオークを削っていく。
この中央に、攻撃力の高いアインを配置したかったが、中央部の突破は避けたかったのでツヴァイとなった。
右翼も森と接しているので、部分的に森での戦闘も予想されたので、こちらにアインを配置した。
左翼は、一番回り込まれる可能性が高く、場合によっては下がることも想定されたので、ドライの担当にした。
今の所、上手くいっている。
部分的にはたまに危なくなるが、オシホ様が遠征用の戦闘用ゴーレムをすぐに派遣するので、全体的に安定してハイオークを倒せている。
このまま殲滅できるか?そんな事を考えていると。
「来るぞ!」
オシホ様の警告を受け、オシホ様が警戒している方を見ると、俺達の正面、ツヴァイが半包囲しているハイオークの一団の中央部に一本の道が出来ていた。
そして、そこをハイオークより一回り大きいハイオーク、恐らくハイオークリーダーと思われる数匹が突撃をしていた。
あれは……。
「ツヴァイ!無理に受けるな!流せ!」
俺は咄嗟に突っ込んでに指示を出す。
「ステラ、ニーナ、メリッサは下がれ!俺が受ける!」
更にステラ達に指示を出したが、反応が鈍い。
咄嗟の事なので、動けないのかも知れない。
仕方がないので、俺は数歩前に出でハイオークリーダー達を待ち受ける。
「オシホ様足を!」
俺はオシホ様足に対して何かして欲しいと手短に伝えた。
何をするかはオシホ様任せだが、何匹が転けてくれたから嬉しい。
ツヴァイがハイオークリーダーを真正面からは受け止めず、流すようにハイオークリーダー5匹を突破させ、穴をすぐに塞ぎ、陣形を維持する。
オシホ様は、咄嗟に地面から50cmほどの壁を発生させ、ハイオークリーダーを転ばせようとする。
先頭のハイオークリーダーが転け、後の2匹も倒れたが、最後尾の2匹が小さい壁ごと転げたハイオークリーダーを飛び越え俺に迫る。
「おぉぉぉ!」
俺は一匹を大剣で突き、もう1匹を盾で受けとめた。
大剣で突いた形でハイオークリーダーを受けとめたので、ハイオークの肉弾によって後に倒される。
まずい!
咄嗟にそう思ったが、突っ込んで来たハイオークリーダー達は、大剣で突いたハイオークリーダーはステラさん達が、盾で受けとめたハイオークリーダーはオシホ様がトドメを刺していた。
小さい壁によって倒されたハイオークリーダー3匹は遠征用の戦闘用後ゴーレムに集られ、俺が立ち上がり頃には倒されていた。
俺達がハイオークリーダーに対処している隙に、状況は大きく変わっていた。
右翼と中央からハイオーク達が撤退し、一部のハイオークが左翼のドライ達に集中攻撃をしており、新精霊率いる作業用ゴーレム達がドライ達を援護していた。
そして、1,000ほどのハイオークの一団が南に逃走していた。
「っ!追撃を!」
「待て!」
俺は追撃をしようとしたが、オシホ様に止められた。
「既に魔力供給範囲限界にあのハイオーク達は居る。追撃は我等だけでは不安じゃ。今は諦めよ」
作戦が上手く行き、殲滅も見えていたので、思わず無理に殲滅を狙おうとしてしまい、リスクの高い行動を選択しようとしてしまった。
冷静さを欠いていたな。
「……了解です」
「うむ。では残されたハイオークを殲滅する。良いな」
「はい。残されたハイオークを殲滅する!半包囲だ!」
俺は全体に指示を出して、足止めとして残ったハイオークを殲滅する。
30分程で残されたハイオーク2,000程を殲滅した。
最後の方は、散開して逃げようとしたが、『ロックジャベリン』からは逃げられず、残ったハイオーク全てを倒せた。
指揮固体には逃げられたが、9割程の殲滅ができたので、十分な戦果だ。
逃げた指揮固体が気になるが、ここではこれ以上することが無いので、ハイオークの魔石を回収して前線拠点に引き上げる。




