ジルト市救援準備
研究所
ビストラ市から帰還してた翌日には、王国軍前線基地となっているであろうジルト市を目指すために、魔具の埋設のために行動を開始した。
ビストラ市には、街道を進めばそれで良かったので、ルートを選定する必要が無かったが、ジルト市に向かう街道は西寄りになっており、少々遠回りになってしまう。
後方遮断の知らせを聞き、動揺するであろう王国軍前線基地には、できるだけ早く救援に向かいたい俺達はビストラ市に行く時に使った魔具を使い、ジルト市への最短ルート探索から始めた。
「まずはジルト市の発見からじゃな」
「ジルト市を見つけなければ最短ルートも分かりませんからね。街道を進む事になると思いますし、アレを使いましょう」
「うむ。そうじゃな。発見だけならドライだけで済みそうじゃし、丁度よかろう。準備をさせる」
アレとは、リアカーの事だ。
回転式連続発射機構を搭載する物を検討する時に、戦車という発想から、チャリオットを思いつき、リアカーを再現した。
チャリオットも馬で牽く二輪だし、機動力に優れると思ったのだ。
だが、安定性に難アリとされ、回転式連続発射機構の搭載は荷馬車の足回りの強化することになった。
だが、リアカー自体は便利だという事で、大きな物が5台と標準的な者を10台作られ、小さいもののみ運用されている。
今回使うのは、大きなリアカーだ。
鉄で強化されている事もあり、戦闘用ゴーレムが2体は載り、作業用ゴーレムも4体載せる事ができる代物だ。
その大きなリアカー3台に、ドライ、ファイ、オメガと遠征用の作業用ゴーレム15体でジルト市発見に向かう事になった。
俺達は、ジルト市の位置を正確には知らない。
ルティ達が暮らし、カティも知ってはいたが正確な地図もなく、あるのはアリスさんが保管していたかなり昔の物しか無く、地域の境界線の移動や地形の変化を考えると、あまり当てには出来ないし、地図自体が正確では無いことも分かっていた。
それは、オシホ様達によって作られた地図を見たからだ。
オシホ様達の地図は、ビストラ市でも利用した様に、土の精霊の一度通った場所を完全に記憶できる能力を使い、かなり精度の高い地図を作れていた。
メイダ村に直接向かえたのも、地図を作っていたお陰だ。
準備を整えた俺達は、リアカーを担いで街道まで移動した。
リアカーでも流石に森は抜けられない。
俺達の探索が済んでいる範囲で、最も南の街道までドライを送り届けた。
「では、気をつけて行ってきて下さい。無理はせず、帰還を優先して下さい」
「了解」
ドライが短く答え、3台のリアカーが、それぞれ2体の作業用ゴーレムに牽かれて街道を南に向かって走っていく。
ドライ達を見送った俺達も、これから探索を行う。
ジルト市があると思われる南西から南南西を中心に、散開して調査をする。
調査目的は、ゴーレムでの移動の痕跡を消しやすいルート探しだ。
今回は研究所からの直接出撃になるので、痕跡を隠しやすいルートを探しておいた方が、研究所の安全を確保できる。
ジルト市に救援に向かうのも、研究所に居るルティ達のためなので、そのルティ達の危険を無用に増やす真似はしたくない。
調査は俺抜きでも問題は無いが、自分の目で直接見ておきたかったので、同行している。
改めて盛りを見ると、寒くなってきているので、葉が色付き地面に生える草花も少なくなっている。
南の方に向かうと小川が見える。
この小川は、大山脈からの湧き水が川になったもので、南にずっと続いていた。
更に南の方に向かい、小高い丘に登り辺りを見渡すと、南のある一定の距離から全体的に下り坂になっているのがわかる。
「あの辺りから下り坂になっていると言うことは、この辺りは台地になっているのですか?」
「ん?知らなかったのか?……そうか、この辺りまでは来たことが無かったな。大山脈からある程度の範囲は台地になっておる。ビストラ市の南や西に向かえば似たような場所を見ることが出来たハズじゃ。そして、アリスの地図ではあと二段ほどは段々があり、その境目はゆるやかな坂になっておるはず」
「全部で三段ですか……。大山脈周辺となると、かなりの広さになりますね」
「そうじゃな。この台地も大山脈と同じように北西と南東に続いておるらしいからの。まぁ、部分的には多少変わった場所もあるらしいがの」
アリスさんの地図は当てには出来ないが、地形はそれほど大規模な変化は無いという事だろう。
「そうですか。いつか行ってみたいですね……。さて、森に入りましょう」
「……そうじゃな。それほど東の森と違いは無いと思うが、油断はするでないぞ」
「了解です」
東の森は、大山脈沿いにずっと続く森で、俺達が今から入ろうとしている森は、東の森とは平地を挟んだ別の森になる。
この森沿いに南下してきたが、そろそろ森に入る。
森は東の森とそれほどは変わらなかった。
まぁ、5kmほどしか離れていないし、そんなにすぐには変わるハズが無いか。
ただ、お昼をだいぶ過ぎた頃に、オスの鹿の魔獣を狩ることが出来た。
角が鋭く固くなっており、俺のゴーレムが少し欠けてしまった事に驚いた。
探索をもう少し続けても良かったが、手土産が出来たので、早めに帰ることにした。
鹿は、マリーに喜ばれた。
好物らしい。
悪阻で食欲が落ちていたが、それなりに食べることが出来たので、いくらかをマリー専用として残して、後は研究所の皆に振る舞った。
「南の方はどうでしたか?」
夕食後に、ルティ達と雑談をしていると、カティが俺に尋ねてきた。
「オークの進行ルートはもっと南だったみたいなので、荒れた様子はありませんでした。それに、あまり距離を移動しなかったので、それほど変化があった訳ではありませんでしが、見に行って良かったです。お陰でここが台地にあることを知れました」
改めて、世界は広いと思った。
俺は大山脈沿いで細々と動いているだけなのだと実感できた。
この事は、あえて口にはしない。
アリスさんに聞こえれば、また気にやむかも知れないからだ。
「そうですか。獲物も獲れましたし、大収穫ですね」
「本当ですね。マリーが喜んでくれて良かったよ」
それからも妻達と楽しく話し、夜は一人で寝た。
翌日の昼過ぎ、ドライが帰還した。
周辺探索に出ていたオシホ様達もドライの帰還を察知して戻って来ていた。
オシホ様達は、ドライの期間予定時間に、ドライが通るであろうルート付近を探索していたので、ドライの帰還を察知できたそうだ。
なので、皆で報告を聞いた。
「ジルト市を確認。オークに包囲されてた。けど、攻撃はされてなかった」
とりあえず、ジルト市が落ちてなくて良かった。
オークが攻撃していないのは、後方遮断の効果が出るのを待っているのだろう。
そして、オシホ様達の地図にジルト市の位置と、ドライが通った街道と通った村々書き込まれた。
ジルト市は、研究所からは南西よりも南南西に近い方向にあり、距離的には10時間程で向かえそうな距離ではあったが、森の事なども考えると、11~12時間程度はかかると見た方が良いだろう。
なんにしても、ジルト市の正確な位置は分かったので、これで最短ルートを構築する事ができる。
ただ、12時間もゴーレムに乗りっぱなしという訳にもいかないので、途中に寝泊まりができる休憩所を一ヶ所と、ただ休憩所できる場所を二ヶ所作る事が決まり、前線での拠点にする場所を含めて、今後候補地を探すことになった。
ルート作りはオシホ様達に任せ、しばらく遠征のなりそうなので、妻達とイチャイチャしながら、ステラ、ニーナ、メリッサの訓練を集中的に行った。
遠征の行くので、戦力の増加と夜の世話のためだ。
ステラは兎も角、ニーナとメリッサには無理する必要は無いと伝えたが、何故か二人も乗り気で、搭乗型ゴーレムでの訓練を楽しそうにしていた。
☆☆☆
ドライが戻ってから三日が経ち、三ヶ所の休憩所の設置が済んでいた。
必用な魔具の数が揃い、アリスさんから魔具を受け取った俺達は、ジルト市の救援に出発した。
魔具が完成してからの出発になったので、昼の出発になってしまったので、今日は途中の休憩所で一泊になる。
休憩所で一泊した俺達は早朝に出発し、昼前には前線拠点に到着した。
出発前の報告では、まだ前線拠点は完成していないという話だったが、俺達が到着する少し前に完成したそうだ。
前線拠点は、ジルト市から北に延びる街道上にあり、街道の左右にある森の間を完全に塞ぐように作られていた。
俺達は、北の方で街道に出て、街道を南下して南北にある出入り口の北から前線拠点に入った。
前線拠点からジルト市までゴーレムで一時間の距離にあり、馬車やオークの足では半日程かかる距離だ。
この距離なのは、ジルト市を包囲するオークから適度に離れており、左右の森の距離が丁度良かったからだと聞いている。
前線拠点は、完全に要塞化しており、ちょっとやそっとのオークに攻めれれたとしても、大丈夫だろうと思わせる程になっていた。
防壁は高さ10mなのはいつもと同じだが、厚さがいつもの倍で、6時m程はあった。
そして、今回も運び込まれた回転式連続発射機構も設置できるようになっており、ここに連れてこられた戦力を考えると、ジルト市を包囲しているオーク全軍と対峙しても、大丈夫だと思えるほどだった。
俺達の部屋も準備されていたので、俺達が持ち込んだ荷物を整理して、早速ジルト市の救援に向かうことにした。
敵の数は多いし、援軍が来たことを早く知らせたかった。
ジルト市を包囲しているオークの数は分かっている。
ジルト市の位置を確かめにドライに動いてもらった時は、行動の自由があまりなかったので、ジルト市を包囲しているオーク全てを確認する事ができなかったが、前線拠点建設中にドライに改めて偵察してもらっていたのだ。
オークの数は200,000程になる。
統率もかなりとれているみたいなので、突破は難しそうだ。
俺達の戦力は、俺、オシホ様、精霊トリオ、新精霊7、ステラ、ニーナ、メリッサに続き、通常の戦闘用ゴーレムが300体、作業用が100体、遠征用の戦闘用ゴーレム45体、作業用ゴーレム15体になる。
これまでで最大の派遣戦力になった。
新精霊は、精霊トリオの部下を一人ずつ待機組にして、一人が聖堂院、二人が研究所に残った。
オシホ様直轄から待機組を選んでも良かったが、ステラ、ニーナ、メリッサが居たので、オシホ様直轄を俺達の護衛としたのだ。
「こらからどうする?」
オシホ様が俺に尋ねてくる。
「移動で少し疲れておおるので、昼食を食べて少し休憩してから救援に動きます。ドライには偵察に出てもらって、攻撃するのに良さそうな場所を探してもらって下さい」
「承知した」
俺の判断に、ステラ、ニーナ、メリッサは不服そうで、今すぐ出たそうにしていたが、ここまでの移動でそれなりに疲れている。
疲れていては、ミスが出てしまいかねないので、俺の判断で休憩にした。
ただ、この時間を無駄にしないために、今のうちに攻撃に最適な場所、効果的な場所があれば、そこをすぐに攻撃できるように、ドライに探りに出てもらった。
これで、戦場に到着してすぐに攻撃を始める事がてきる。
敵は200,000、ビストラ市での事を考えれば、楽に事を運ぶことが出来るかも知れないが、慢心せずに慎重に事を運びたい。
昼食を終え、休憩しながらステラ、ニーナ、メリッサに話しかける。
「緊張していますか?」
「はい。少しだけ」
「私も少しだけ」
「私も」
「なら良かった。200,000相手に少しだけなら、大したものです。まぁ、俺達は強いですし、皆は必ず守るので、安心して戦闘に参加してください。それに、今回は後ろから魔具での遠距離攻撃をメインにしてもらうので、それほど危なくないと思います」
「「「はい」」」
まだ固そうにしている。
まぁ、200,000という下図を相手にするのだから仕方がない。
三人は、最悪動けなくなっても、ゴーレムをこちらで操作することができるので、安全に引き揚げる事ができるので、何とでもなるだろう。
その後も適当に雑談し、気を紛らせ、前線拠点を全軍で出撃した。




