表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/236

アクエル・フォン・ビエランテ

 



 ビストラ市



「キレイ……」


 私は思わず言葉を漏らしてしまった。

 だが、聞いている者は居ないだろう。


 私は、ビストラ市防壁の上で、ツチクラ・コウヘイ達の戦闘を見ていた。

 そして、防衛の上で戦闘に備えていた者達全員が、下で行われている戦闘に見入っていた。




 ☆☆☆




 事の始まりは、王国軍敗北の知らせからだった。


 正確には、王国軍一時後退というものだったが、王国軍の伝令の話では、こちら側にオーク十万規模で侵入したという報告を聞くと、敗北したのだと考えても良いのてしょう。

 伝令は、既に村々に警告に出ているそうなので、その受け入れ準備を告げてきた。


 私は、父の隣でそれを聞いていたが、父が頭を抱えたのも仕方がないと思う。

 この街は、四万人が暮らす街だ。

 辺境の割りにはかなり大きいと思う。

 けど、周辺の村々は50にもなり、一つの村に300~1000人程度の人が済んでいるので、全てを合わせると三万近くになってしまう。

 これ等を受け入れる事はできるけど、相当に大変です。


 さらに問題なのは、オークへの対処です。

 十万がこちらにそのまま来たら、とても持ちこたえる事は出来ない。

 民から兵を募ったとしても、追加で二、三万が限界。

 元々兵士は五千は居たけど、王国軍に三千を出しているから、最低限の二千しか居ない事を考えると、かなりの数にはなるけど、軍としては脆弱でしょう。

 何より、この街の防壁でどれほどオークを抑えられるか……。



 ビストラ市の防壁は、子爵への資金提供、辺境にしては多い民や村々の支援のために、防壁の維持管理が最低限しかできていない。

 なので、かなり老朽化している。

 ビストラ市か、人数に対して広さが大きいのも、元々が街の跡を利用して成り立った街で、防壁も、崩れてはいけど、元からあったものをかなり利用して、安く、広く街を作る事が出来たと、この街の成り立ちを学んだ時に、私は知った。



 防壁を今すぐに改修する事も出来ないのだし、破られる事を前提に準備をした方が良いでしょうから、お父様にもそう進言しましょう。


 お父様は、私の進言を受け入れてくれて、街の中での防衛戦の計画を建てるように指示を出し、オーク対しても斥候を出した。

 オークの接近をより正確に知れれば、準備の仕方が違ってくるので、良いことだ。

 けど、斥候からの報告は、意外なものだった。


「オークは南を、村々を破壊しながら西に進んだ様子です」


 北に侵出したオークなので、こちらに来るとばかり思っていたので、こちらに来ないことは、幸いでした。

 オークの正確な規模は分かっては居ないけど、数万規模なのは間違いない。

 オーク達も斥候を出していて、こちらの斥候が近寄れず、正確には数を把握できていないからです。

 もし、数万でこちらにこられていたら、街は間違いなく落ちていたでしょう。

 けど、オークは西に進んだので、お父様は西街に警告と、オークの継続監視を指示するだけに留まった。




 私は、お父様の負担を減らすべく、村々の受け入れの責任者をしていた。

 48の村が既に到着しているというのに、二つの村がまだ来ない。

 二つの村は、東の端になるので、オークに襲われた可能性を考え、お父様に頼んで、偵察の兵を出してもらおうと、お父様を尋ねると、伝令が駆け込んで来た。


「報告!オーク五万がこちらに接近中!」


 報告はとんでもないものだった。


 詳しい報告を聞くと、オーク五万だと知れたのは偶然で、高台から見ることが出来たそうです。

 そして、西にあった街が壊滅し、私達の逃げ道が無いことが分かりました。

 そして、父が倒れた。


 疲労と心労からだったけど、従順に従うという理由だけで、この街を任されていた気の弱い父にしてみれば、仕方がないと思う。

 兄二人は王都で勉学に励んでいるし、後は妹しか居ないので、私が領主代行をすることになった。


 私は、自分の執務室に戻り、ある人物を呼び出してもらった。

 来たのは、この街に所属する商人、ガレスト・ウワシトスさんだった。



「お呼びとの事で、馳せ参じました」


「そんな堅苦しい言葉を使う必要はありません。私は貴方の事を知っています。東の聖堂院を制圧した者から食糧を買取り、我が街の危機を救った功労者です。今回呼んだのは、聞きたい事があったからです」


「ありがとうさんございます。私は商人ですので、利益のために動いたのです。それで、聞きたいこととはなんでしょうか?」


「あぁ、村からの待避を勧告したのは知っているでしょう?なのに、東の端の村が二つ、ヤハナリ村とメイダ村がまだ来ていないの。その隣の村は昨日には到着しているから、既に到着していておかしくは無いのだけれど、何か思い付く事は無い?」


 私は、本題の前に軽い質問をした。

 村の安否に関することなので、軽くはないけれど、本題に比べれは軽いでしょう。


「今回の事は、オークによるものと聞いています。なので、オークに襲われた可能性を考えますが、ヤハナリ村は大丈夫だと思います。ですが、メイダ村は分かりません」


 私は、ガレストの言葉に首を傾げる。


「オークに襲われたかは分からないけど、何故ヤハナリ村だけが大丈夫だと言えるの?」


「ヤハナリ村は、聖堂院の主になった広坪土倉との協力関係、と言ってはなんですが、多少支援を受けています。私が広坪様と取引をするようになったきっかけがヤハナリ村なのです。広坪様は村に商品を預け、行商に来る私に売り込みを頼んだそうです。そこで、村長が正確な対応をし、気に入られた結果、聖堂院との行商拠点にすべく、村に支援があったみたいでして、村には似つかわしくない防壁が築かれたました。あれなら、オークでもそう簡単には破れず、聖堂院からの救援が余裕で間に合うでしょう」


「そんなに頑丈な防壁なのですか?」


「はい。高さは街の防壁に比べて半分ほどしかありませんが、厚さが3mはあり、かなり頑丈な様です」


「となると、避難では無く、残留を決意したと?」


「いえ、聖堂院に待避をしたのでは無いかと考えます。聖堂院は、木造の防壁ではなく、この街と同規模の防壁を持ちます。なので、広坪土倉次第ではありますが、保護をされた可能性が高いと思います」


「そうですか……。その、コウヘイ・ツチクラは、我々に協力をしてくれる可能性はありますか?」


 私は、ガレストさんに、コウヘイ・ツチクラが良い人物か、協力を要請した場合の対価や影響を訊かずに、協力をしてくれる可能性を訊いた。

 彼が悪魔でも、協力してくれなければ、この街は滅んでしまう。

 それこそ、全員が殺されてしまう。



 これが、今回の本題です。

 コウヘイ・ツチクラには、良い印象は無い。

 噂では、女好きで、聖堂院から300名もの女性を拐い、マリーディアさんを囲っている可能性が高い人物。

 けど、この街を、領民を生き残らせる方法はこれしか無い。



「……可能性は十分にありますし、広坪様の事情が許せば、普通にお願いすれば、大丈夫だと思います。ですが、その聞き方をするという事は、オークが来ますか?」


「もし、そうだと答えたら、貴方はどうしますか?」


「家族を連れて聖堂院に逃げます。道中で、魔獣やオークに遭遇する可能性はありすが、まだそちらの方が生き残る可能性があります」


「そうですか。……ガレスト・ウワシトスさん。私は貴方を雇いたい。そして、聖堂院へ救援要請の使者になって頂けませんか?」


「オークが来るのですね。聖堂院と私の報酬は?」


「お金はあまり使いたくありませんが、金貨で五千枚が限界です」


「そうですか。なら、私への報酬は、三年間の免税、これでどうでしょう?そうすれば、金貨五千枚を広坪様の報酬にできます」


「分かりました。父に掛け合って、なんとしても許可をもらいます」


「ありがとうございます。それで、いつ出発を?」


「まだ朝です。今すぐにお願いします。兵士は準備させています。お金も金貨千枚を前金として準備させています」


「急ですね。ですが、分かりました。すぐに出ます。行商をしていると、腰の軽さが色々と便利ですからね」


「よろしくお願いします」



 なんとかガレストさんに使者をお願いして、聖堂院へ救援要請をしに行ってもらった。




 ガレストさんを送り出してから、三日で救援が来た。

 下手をしたら、オークとの戦闘の初日には間に合わないと思っていたので、前日の日没前に来たのは、早くて驚いた。


 戻ったガレストさんの報告を聞くと、既に準備してあった様子だったそうだ。

 この事態を予想していた?


 私は、やることが山積みだったので、その日の面会は諦め、翌朝、政務の補佐をしてくれていた者に、コウヘイ・ツチクラを呼んでもらうと、断られて帰ってきた。

 酷く怒っていたので、コウヘイ・ツチクラへの好感度が更に下がった。


 そして、コウヘイ・ツチクラは、先制攻撃に出たと知った。



 昼前に、コウヘイ・ツチクラが自身で作った陣地に戻ったとの知らせがあったので、急いで面会に行った。


 コウヘイ・ツチクラの建設能力は聞いていたが、陣地はかなりのもので、驚いて居ると、コウヘイ・ツチクラが出迎えてくれた。

 そして、謝られた。


 噂や部下の報告から、悪いイメージが先行していたけど、話してみれば、同世代という事もあり、好感が持てた。



 それから、色々と話をした。

 マリーさんの事も知れて良かったけど、嫁入りを断られたのは、少し残念だった。


 そして、話し合いの結果、コウヘイさん達が前衛を勤めると言ってくれて、戦いぶりを防壁から確認しようとしたけど、壁が生えて全く観戦できなかった。


 けど、作戦性行の合図があり、戦闘準備をして、オークを待ち受けていると、コウヘイさん達が動き、直後にハイオークと思われる一団が迫った。

 コウヘイさん達が動かした戦力は、ハイオークを邪魔する様に動いた。

 高々2,000程度なのに、コウヘイさんは更に援軍をこちらに送り、ハイオークの行動阻止に動いていた。

 私達も、矢と魔法でハイオークを攻撃したが、ハイオークは非常にタフだった。

 そして、防壁が崩された。


 私はこの事実に驚愕した。

 いくら老朽化していたとは言え、防壁をこうも簡単には破られるとは思っていなかった。

 もし、コウヘイさんが、戦力をこちらに振り分けてくれていなければ、ハイオークに易々と侵入され、街の中は蹂躙されていたと思うと、ゾッとした。



 その後は、コウヘイ様達が穴を背に戦って下さり、オークを殲滅できた。


 私も、オークと戦った事はあったが、オークが組織だって動く驚異を見て、認識の甘さを痛感し、そのオーク達を蹂躙するゴーレム達の強さを改めて実感した。

 そして、コウヘイ・ツチクラ様の乗る一際大きなゴーレムは、とても美しく強かった。



 戦後処理は、迅速に行われた。

 コウヘイ様は、防壁破壊の事を謝られ、金貨は前金のみ、魔石も半分を置いていかれ、食糧の援助までもらった。

 そして、防壁全てを補強して頂いた。


 後で土魔法が得意な者に調べてもらったが、凄く頑丈になっている事以外分からなかった。


 そして、コウヘイ様は、その日の内に陣地を解体して帰って行かれた。




 私は、オーク襲撃の全ての後処理が終わったあと、コウヘイ様に軽く提案した嫁入りを、真剣に実行する事を検討した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ