現代勇者アスカロンと千年勇者
タブレットのデータベースによると、亜人種、つまりその星の知的生命体である人間と、遺伝的にかけ離れた獣を合成したような中間種族は、自然発生は絶対にしないそうだ。
もし何かの事故で生まれたとしても、自力で子孫を残すことはできないため、特別に合成獣と呼ばれる。
遺伝子レベルで獣と人の要素をあわせもった亜人種の発生様式は、どんな惑星でも2パターンに絞られる。
まずは、苛烈な土地に移住した人間がその環境に適応するため、変身能力によって獣の姿を借りて生き延びた、というもの。
そして逆のパターン、変身能力を手に入れた獣が人間社会に適応するために人間の姿へと変身した、というもの。
すなわち、生得的な『変身魔法』という遺伝要因が、獣人という種族をこの世に生み出すカギなのだ。
そして、いちど環境に適応する体を手に入れれば、用済みになった変身魔法は代を重ねるうちに忘れ去られ、あとには獣人という種族だけが残る。
だが、他人に『変身魔法』をかける獣人がいるなんて、俺は夢にも思わなかった。
獣人の神官、チート級獣人アイスキャット……あいつはいったい何者なんだ?
現代勇者の男が俺の食事を用意してくれている間、俺はそんなことを考えていた。
現代勇者の男は、アイスキャットに変身させられた俺をぎろっとにらんだ。
「いつまでそんな恰好をしている?」
「この部屋あついからさ。ふー、あちーなー」
俺はセクシーな胸元を開いてぱたぱたさせてみた。
ちらっと、あいつの顔を覗き見たが、逆に顔色を悪くされた。気味が悪そうだ。
おかしいな、アイスキャットの色仕掛けが通じないなんて。
ブリトニー・スピアーズの魅力は万国共通だと思ってたんだけどな。
「また脱獄を企んで下見をしているのか? 諦めろと言ったはずだ、この島から脱出するのは不可能だ」
「硬いこと言うなよ。『勇者ギルド』の勇者は出入りできるんだろ?」
「勇者だからな。だが、お前は違う、アイスキャット」
「え、勇者だけど?」
「お前は『勇者ギルド』に登録されていないだろう。1000年前と今とは勝手が違う」
あれ、こいつ、アイスキャットが千年勇者だってことを知ってるのか。
じゃあ、現代勇者じゃないと出入りができない認証ゲートでもあるんだろうか。面倒くさいな。
けれど、どんなゲートがあったとしても、そんなものアイスキャットの手にかかれば一発で破れそうだけどな……。
あいつでも破れなかったんだろうか?
「あのさ、お前、なんか勘違いしてるけど……そういえばお前、名前なんてったっけ?」
「ふざけてるのか? アイスキャット」
「ちょっと忘れただけじゃないか? そんなに怒るなよ。いいから教えてくれよ」
「アスカロンだ、二度と忘れるな」
「それって、偽名かなんかだろ?」
「馬鹿を言え、我が家に代々受け継がれている由緒ある名だ」
ふん、と鼻を鳴らしたアスカロン。
獣人の神官に本名を知られると魂を操られる……というのは、この惑星アヴァロンにも広く知られた逸話である。
こいつがアイスキャットに本名を教えている、ということは、つまり、こいつは敵ではない、ということだろう。
まあ、本名を知ったからと言って、アイスキャットも軽々しく他人の魂を操るようなことはしなかったけどな。
知り合いの電話番号を手に入れて悪用しないのと同じで、節度をわきまえなければ社会的制裁を受けてしまうのは、他のどんなチート能力ともかわらない。
アイスキャットは前いた世界では高貴な身分だったので、そのへん頓着せずに他人に使いまくって、チート級勇者たちに反撃を受けて後でお尻ぺんぺんされてたこともあった。「こんな屈辱はじめてじゃ」とか言って泣いてたな。懐かしいな。
「アスカロン、お前さ、なんでそこまで俺によくしてくれるんだ?」
アスカロンは、ティーカップにお湯を注いでいた手を止めて、小さくため息をもらした。
「お前が千年勇者だからだ」
彼は言った。
「千年勇者のお前たちがいまここにいるのは、あるいは、私の祖先の采配が悪かったせいかもしれないと、そう思ったからだ」
どうやら、アスカロンは1000年前に俺たちの采配をとっていた人物を祖先に持っているらしい。
ふむ、采配を取っていたってことは、軍師かなにかか。
こうしてアイスキャットの身の回りの世話をしていることからも、深い関係であることがうかがえた。第50勇者連隊に関係しているんだろうか?
アスカロン……どっかで聞いたような覚えが……あ……。
「ひょっとして、お前の祖先って、第三異世界の惑星ナナブムルカ、ヒュンカジゼン連邦出身の、アスカロンⅢ世?(2話参照)」
第50勇者連隊の指揮官の名前だった。
アスカロンは、俺をじっとねめつけながら、慎重に「そうだ」と言った。
うおおおお! あの指揮官の子孫か!
超なつかしー!
まさか、こんな形で見つかるなんて!
「お前の祖先の名言はぜんぶ覚えてんぜ! 『最大効率の最大機動』だ! あと、えーと、『V8を讃えよ』だったっけ?」
「いや、それは聞いたことないな」
「あとは……ごめん、俺も居眠りしててあんまり聞いてなかったや」
「おい」
ともかく、思わぬところで思わぬ人物と出会えた。
第50勇者連隊の指揮官の子孫。こいつは強力な味方になりそうだぜ。
俺は9股の尻尾をわっさわっさと振り回した。
「アスカロン、実は俺、アイスキャットじゃないんだ!」
俺は、思い切ってアスカロンに真相を打ち明けた。
アスカロンはぎょっと目をむいていたが、俺は気にしない。
「あいつの魔術かなんかでこんな格好にさせられてるけどさ、俺はアイスキャットと同じ第50勇者連隊の勇者の1人なんだよ。ほら、あんたの祖先って、指揮官だっただろ? 第四異世界の勇者ディップって聞いたことあるか?」
アスカロンは、ちょっと不気味なものを見るように顔をしかめた。
「いい加減にしろ、アイスキャット。そんなデタラメで俺をごまかせると思うのか? また脱獄を企んでいるのなら、やめておけ」
「そうじゃねぇってば~!」
頭の固い奴だ。あの指揮官そっくりだな。
まあいい、これからゆっくりと真相を教えてゆけばいい。
散り散りになってしまった第50勇者連隊の仲間を再び集めるのに、指揮官のアスカロンほど使える名前はない。
「おっと……」
アスカロンはタブレットを取り出した。
俺と同じタイプだが、外装はだいぶんボロボロに朽ちている。
おそらく彼の祖先、指揮官の持っていたタブレットを使い続けているのだろう。
しかし、1000年前のアイテムなのにまだ生きているとは。驚きの耐久力である。
そういえば、異世界勇者は150億人もいたんだ。
ということは、タブレットも150億個。壊れてもスペアがたくさんあるってことなんだろう。
俺はアスカロンのタブレットを覗き込んだ。
「なにそれ、通信? えっ、タブレットで通信できんの? そうか、通信サーバー新しく作ったんだな! さすが『勇者ギルド』!」
「うるさいな……技術的なことは私にはわからん。どうやら魔王城から人が来る」
「魔王城から? ああそうか、魔王領だもんな、ここは」
「いいかアイスキャット、くれぐれも余計なことはしゃべるな? いちおう、お前の身柄をわたしが預かっているのは、『伝説の武器』の情報を隠し持っているという建前だからな」
へー、意外と親切にしてくれてたんだな、アスカロン。
そんなことを言って、アイスキャットを魔王軍に引き渡すのをずっと拒み続けていたのか。
最初は『勇者ギルド』なんてどんな連中かわからなかったけど、それほど悪い連中でもないらしい。
なんてったって、俺たち勇者の子孫なんだからな。魔王に屈したように見えて、腹のうちでは反発心を抱いていたんだろう。
そのとき、ぶひぶひ、とブタっぽい鳴き声が部屋の外から聞こえてきた。
鉄格子は否応なく、その声と異臭とをセットで俺のもとに届けてくる。
……においは記憶にもっとも直結する感覚だ。
俺は背筋が凍り付いた。
このにおいは、オークだ。
筋骨隆々のオークたちは、独居室にぞろぞろとなだれ込んできた。
全身を鎧で固めて顔も見えないオークの1人が前に進み出てきて、「ぷぎぽぉ!」とひときわブタっぽい声でなくと、周りの連中はぴたりと押し黙った。
リーダーオークは、虹彩をもたないガンプラみたいな目をいからせながら、アスカロンに言った。
「オマエ、イラナイ、デテイケ」
そして、いきなりの退場命令。
ぶしつけな物言いに、アスカロンはぐっと拳を握りしめた。
「……まずはお前たちがいったい何者なのかはっきりさせろ」
「オレ、マオーグン、ソイツ、ホシイ」
「……魔王軍が『勇者ギルド』の捕獲した重要参考人を、勝手に連れ出せると思っているのか? 魔王との協定により、我々勇者の活動を魔王軍は妨害しないと定められているのだぞ」
「クウ、ツモリ、ナイ。オレ、ソイツ、キニイッタ。アソブ」
ぐっひっひ、とよだれを口から垂らすオーク。
監獄は異様な熱気と雰囲気に包まれていた。
オークの汚らわしい視線を浴びて、俺はぎゅっと縮こまった。
始まる。いよいよ「くっ殺せ」的なあれが始まろうとしている。
ちょっとドキドキしてきた。いつでも撮影できる準備をしておこう。
「オレ、マオーグン、エライ。ユーシャ、エラクナイ」
簡潔にしてわかりやすい物言いのオークに対し、アスカロンは、なおも食い下がった。
「ふざけるな、アイスキャットは大盗賊として各地を荒らしまわっていた際に、勇者ディオスタン家に伝わる法具、《天炎銃剣》を盗み出した……!
異世界技術によって作られた1000年前のアイテムを我々『勇者ギルド』が管理することの重要性は、すでに魔王軍も認識しているはずだ。
その所在を突き止めるまで、魔王軍にアイスキャットを手渡すわけにはいかない……!」
さっきから単純な単語の組み合わせでしかしゃべらないわかりやすいオークに対し、アスカロンはその何倍も長い説教を垂れていた。本当にあの指揮官の子孫なんだな。なんだかすでに眠くなってきた。
「オマエ、コノ、デンセツノ、ケン、ホシイカ?」
リーダーオークは腰に携えていた剣、見事な装飾の施された豪勢なロングソードを手に取った。
アスカロンの顔がこわばり、真っ赤になった。
なに、あれが伝説の剣か? 《天炎銃剣》?
俺はタブレットを起動させて、その剣の写真を撮り、ステータスを見る。
魔剣グートリンデ
攻撃力:殴った方が強い程度の切れ味
耐久性:下手すると人が踏んでも壊れる
特殊効果:貴族が身に着ける装飾用の剣
備考:売ると高い。相場5000シルバー
オークはニタニタ笑って、その剣を投げ渡した。
「コレ、ヤル。オマエ、ナニモシャベルナ?」
ただの賄賂だった! オークにしては頭がいいなこいつ!
ぽーん、と投げ渡されたそれを、アスカロンは足で蹴って脇にどけた。当然だ。
リーダーオークの後ろのオークたちは、「センソウ!」「ハンギャクノイシ!」とか口々に叫んで武器を構えた。
俺は腹筋が崩壊してその場に横たわった。なにこれ、腹が痛い。
リーダーオークは「ぷぎぽぉ!」と叫んでオークたちを黙らせた。しーんと静まり返る独居室。
「グップププ、オマエ、テキ。マオーグンニ、サカラウ」
「時として勇者とは、蒙昧たる1匹のオークよりもはるかに愚かな行為に走るものだよ……」
名言とともに、アスカロンは剣を抜いた。
おお、剣を構えるってああするのか。
俺はいつも無形の位だからな。斬新だ。
「……異世界の記憶もすっかり薄れ、すでに勇者とは言いがたいが……。ナナブムルカ星人の力、とくと見るがいい!」
ついに、アスカロンとオークたちの戦闘がはじまった。
オークたちは数にものを言わせてアスカロンに殺到する。
アスカロンの剣はオークたちの剣と切り結ぶと、その剣に熱線で加工したような切れ込みを入れた。
目にもとまらぬ早業で、まるで壁に取り付けて物をつりさげる系のおしゃれなインテリアへと変えていった。
だが、かろうじて剣の形を保っている。オークたちはそれで切り付けようと躍起になっているが、どれもアスカロンを殴っただけでバキッとへし折れてしまう。
うまい。あえて相手に『無駄弾を撃たせる』ために、ギリギリへし折れない程度の傷をつけたんだ。さすが冶金スキル使い。オークは単細胞だからそれに気づかない。無駄弾を抱えたままアスカロンを取り囲む、『移動する防壁』にされていた。
1対多数の戦闘の基本は、隘路に誘い込んで1人ずつ相手にすることだ。
しかし、アスカロンは無力な複数の敵を生み出すことでそいつらを壁にして、広い部屋のど真ん中に戦闘に有利な地形を生み出していた。
まっすぐに突っ込んでくる素早いオークはどてっぱらを蹴り飛ばし、ちょっと後ろに引っ込んでもらう。ひときわでかくて壁になりやすそうなオークは、兜をべしん、とはたいて前後ろにして、視界を防ぐ。そのまま棒立ちになるでかい壁になってもらう。そして壁になったそいつの脇からわらわらとやってくる奴からばっさばっさと切り倒す。
背後から次々と振り下ろされる剣をそのまま背中の鎧で受けてへし折り、さらに余裕のできたアスカロンは、食器のナイフを手に取ると、冶金スキルを発動させ、鋭くとがったアイスピックのような形状に変えた。
それを指の間に挟んで片手に4本取ると、投げナイフのように投擲し、無駄弾持ちが壁になっている間に背後の方にいるオークの頭をすこここーんと貫いた。
十分に余裕ができてから、壁になっていたオークを切り伏せる。
へー、俺は自分がオークと戦う時どうやってたのかさっぱり記憶がないんだけど、こいつかなり強いんじゃないか?
俺はタブレットの戦闘力評価アプリを起動させて、アスカロンの様子を撮影していた。
攻撃力88、防御力90、戦力D、評価『ちょっと強い現地人レベル』
『ちょっと強い現地人レベル』か……。
うーん……異世界勇者としては弱い方なんだな。
アスカロンは軍師として召喚されたから、戦闘能力はあんまり期待されていないんだ。
「終わりだ……《アイゼン・メイデン》ッ!」
技名の呼称とともに、アスカロンはリーダーオークの鎧に触れた。
どんっと両手で突き飛ばされたリーダーオークは、急に縄で体を縛られたかのように両手をだらんと下げ、鎧の内側から突き出してくるトゲに全身を貫かれ、ぶはっと血を吹きこぼした。
アスカロンは冶金スキルを発動し、鎧を加工したのだ。
魔法プルーフ加工がなされていない鎧など、冶金スキルの前には粘土も同然である。
リーダーオークは狼狽え、恐怖に青ざめながらアスカロンを見ている。
「ぷぎっぽ……ぷびぶぶぅ! オマエ、ユーシャ! オレ、マオーグン!」
「どうした、もう言語を失ったか……」
アスカロンはリーダーオークに剣を向けると、すばやく剣を左右に動かした。
ガンプラみたいにバラバラにしてしまった。長く苦しまないよう慈悲を与えたのだろう。
リーダーを失ったオークたちは、もはや単なるブタの群れと化してしまった。
どうすればいいのか、ブタ頭ではもう処理が追い付かない。
アスカロンは、きりっと彼らをにらみつけ、言い放った。
「魔王に伝えておくがいい、余計な真似はするなと……そしてもし私を討とうとするならば、S級の怪物を引っ張ってくるんだな……《《『勇者ギルド』でも五本の指に入ると言われている私だ、オークごときに簡単に討たれはせん》》……!」
……。
…………………………。
……………………………………………………。
《《『勇者ギルド』でも五本の指に入ると言われている私》》だぁ~~~~~~!????
あまりに衝撃的な告白に、俺は頭が真っ白になった。
ひょっとして『勇者ギルド』って……めちゃくちゃ弱体化してないか……?
オークたちが水を打ったように静まり返った、そのときだ。
格子戸の向こうから、コツコツ、と足音が響いてきた。
「いったい何を騒いでいる、ブタども……姫が到着するまで騒ぎを起こすなと厳命したはずだぞ」
その姿を見たとき、俺はごくり、と生唾をのんだ。
すらりとした肢体に、シャツの裾を左右で結び付けた、ラフな格好。
右目は血のように赤く、左目は蛍のような黄色い光が飛び交う、緑色だった。
そう、忘れもしない。
1000年前、俺たち第50勇者連隊を現代にタイムトリップさせた、恐るべき魔導の女王。
《大魔導》アリスフォン=ヴェートラーナと同じ、魔力を視る目だ。
アスカロンは血のりのついた剣の切っ先を下げると、その女に言った。
「ふん、白々しい……どうせオークどもをけしかけたのは貴様だろう? 《大魔導》ドリスタン=ラ=ドルチェ」
「なんのことだかな。ブタ頭が勝手な行動を起こすのは我が魔王軍としても頭痛の種でね、これでも軍紀を取り締まる身として誠心誠意努力しているところだよ」
「いつも魔導師軍団を従えている貴様が、あえて手の付けられないブタ頭を送り込んだ時点で確信犯ではないか」
「やれやれ、勇者ってのはめんどくさい生き物だね」
ドリスタンは、乱雑に頭をわしわしとかいた。
「私が魔導師軍団を連れて歩けば『現地人に対する武威行為だ、異世界スキルの乱用だ』と騒ぐくせにさ」
つまり、こいつがすべての魔導師を監視する現《大魔導》ドリスタン。
1000年前の大魔導アリスフォン=ヴェートラーナの後釜ってわけか……。
魔法社会における犯罪者はほぼ99パーセントが魔導師の魔法による犯行だと言われている。
要するに、魔導師の犯罪を監視する大魔導は、地球でいうところの『警察官』にあたる。
厚底のブーツでガンプラのパーツをぐりぐりと踏みつけ、ドリスタンは燃えるような眼でこっちをにらみつけた。
「じゃあ、さっそく《大魔導》のお仕事をしないとね。あんたがやったのは、魔王軍直属の部隊に対する攻撃。対するブタどもは、勇者側に何をしたわけ?」
「そのオークどもは……」
「俺を性的な意味で襲おうとしていた」
「……」
俺が口を挟むと、ドリスタンの目が、俺をまっすぐにとらえた。
あれ、あんまり信用されてないな。
俺はなるべく被害者っぽく見えるように表情をつくった。
ちょうど服も脱いでいて下着姿だ。むぎゅっと谷間を作るように胸をかき抱き、かわいそうな女の子の目で訴えかけた。
「わたし、わたし、服を脱げって命令されたの……そのガンプラオークがすっごいいやらしい目でわたしを見てて、他のオークもくさくって、もう、すっごくこわくて……」
ひぐひぐ泣いてみせた。
ドリスタンは俺から目をそらし、調書らしきものにメモを取った。
「オークが女装したおっさんを性的な意味で暴行しようとしていた……ね、わかったわ。
……で、女装したおっさん、あんた誰?」
……そう、大魔導の魔眼にまやかしは通用しなかったのだ。
ドリスタンは不審者を見るように、底冷えするような目で、まっすぐに俺をにらみつけていた。




