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「皇帝陛下、この帝国には何代も前のお妃に遥か東の王国の姫君が輿入れしたのをご存知ですか?」
「…」
皇帝は黙った。そう、気づいてしまったのだ。
「私が調べましたところ、その姫君の風貌は…」
「ユーリ、もしかして私…」
今までどう反応していいかわからなかったリアがユーリの服を引っ張りながら囁く。
「そうです、アリアドネ様。あなたは所謂先祖返りで、最近の皇族と似ない風貌だっただけなのです。」
「!!」
リアの頬を涙が伝う。そして皇帝が話し始めた。
「曾祖母が言っていた…曾祖母よりも遥かに前の時代には大陸のあちこちの国と交流があって、東の国の姫君が輿入れしたことがあると…ただ、側妃としてだったため地位はあまり高くなかった。
しかし、皇妃に子が産まれなかったためにその側妃が産んだ子が皇帝として即位したのだと…」
「その皇帝の血が巡り巡ってアリアドネ様に現れたのでしょう。」
涙が溢れてくるリアの背中をユーリが擦る。
「なぜ、私はそんなことも忘れてアリアドネを不当に…」
「…」
皇帝が項垂れ、皇妃は言葉も出てこない。
「あなたたちがアリアドネ様に何をしてきたのか私は知っています。親としてどうしてそんなことができるの理解に苦しみます。
私があなたたちに直接手を下すことはできません。ですが、親としてのお気持ちが芽生えたのであれば今、この場を以って皇帝位をデューク皇太子殿下に…」
ユーリが皇帝へ告げ、皇帝はデュークに視線を向けたあとに会場内に向けて話し始めた。
「…
集まった帝国貴族たちよ。
私はこの場で退位を宣言し、息子であるデュークに譲位することをここに宣言する!
私や皇妃、第二皇女が犯した罪を近日中に白日の下に晒し新たな皇帝となるデューク、そしてアリアドネ皇女に処遇を決めてもらうこととする!」
皇帝はリアが産まれて初めて彼女を皇族として認めたのだ。
「リア、よかったですね。」と彼女の頭を優しく撫でるユーリ。
「う…ん…。ユーリが隣にいてよかった…」
彼女は周りの目を気にすることなくユーリに抱きついた。
「ユーリクス·ヒルデスト、娘をよろしく頼む。」
いつの間にか近くにきていた皇帝がユーリに伝える。
ユーリは頷いた後に最上の礼をとった。
* * *
調査の結果、皇帝は皇家直轄地で生涯幽閉、皇妃は第二皇女を皇帝の御子と偽り、リアに充てられていた予算や納められた税金を横領し、第二皇女と贅の限りを尽くしていたことで皇族の身分を剥奪。皇妃は一代限りの女男爵を与えられ第二皇女とともにそこで生活をすることになり、生涯皇都への立ち入りを禁じられた。
皇妃の実家の侯爵家は皇女殺害未遂の咎で子爵へ降爵され、遠縁が当主に就任することになった。
騎士団長も辺境の地へ左遷され騎士からやり直すことになった。
ユーリとリアはその事後処理が済むまで皇城で過ごすことにしたのだ。
「ようやく一息つけましたね?」
「ユーリ、ごめんなさい。私が…」
「リアは見届けなければならないのですよ?
俺はあなたの傍を離れないと決めたのですから、一緒にいるのは当然です。」
「ありがとう。」
「リア、すまない…皇族が私だけしかいなくなってしまったから、君にも皇位継承権を残したまま王国へ輿入れしてもらうことになってしまった。」
デュークが申し訳なさそうにユーリとリアに告げると、二人はなんだ、そんなことか。と全く気にする様子がない。
「デューク様、リアの継承権はすぐにでもなくなると思いますよ?」
「ユーリの言う通りですわ、お兄様。」
「ふたりとも何故、そう思う?」
「ユーリ、お兄様は気がついていないわ。」
「そうですね。」
「ん??」
「はは。デューク様はリリーアンナ様とご成婚されればお世継ぎは時間の問題でしょう?」
「ふふ。お兄様はリリーアンナ様を離さないですもの。同性である私がリリーアンナ様と話しているだけでもお兄様は嫉妬されて。
独占欲が強いのですから、皇族はあっという間に賑やかになりますわ。」
「帝国貴族は今は混乱していておりますが、あのパーティの一件は解決しました。おふたりの治世もすぐに落ち着きましょう。」
ユーリの発言に頷くリア。
「お前たちの言う通りだな。」
「何の話をしてますの?」
衣装の採寸を終えたリリーが部屋に入ってきた。
「ふふ。リリーお義姉様がお兄様に愛されているという話ですわ。」
「まあ!アリアドネ様がお義姉様って呼んでくれましたわ!ねえ!デューク様!」
「リリー、よかったな。」
「リリーお義姉様、お兄様のこと、宜しくお願いします。お兄様は無茶をしすぎることがありますので。」
「もちろんですわ!」
「リア、リリーアンナ様も無茶をすることがあるから、お願いするのは宰相閣下とかのほうがいいと思います。」
「ユーリクスは私の味方ではないの!?」
「俺は常にリアの味方ですが?」
「ユーリ、嬉しいわ。」
愛おしそうにリアを見つめるユーリ。
「リリー、俺は君の味方だよ?」
「ふふ。わかっておりますわ。」
愛おしそうにリリーを見つめるデューク。
四人の幸せを祝福するように、晴れた空に虹がかかったのだった。




