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「偉大なる皇帝陛下にそのように仰っていただけて恐悦です。
私たちから帝国貴族へ挨拶をさせていただいても宜しいですか?」
「もちろんだ。」
デュークとリリーがユーリたちに視線を送る。
「リア、私の後ろに隠れていてください。
もしも途中で聞きたくなくなってしまったら、俺が耳を塞いであげますから遠慮なく頼ってください。」
リアはこれから何が始まるのかわかっていない。
しかし、以前にデュークたちが何かをするときいていたので、不安はなかった。だからコクッと頷いて笑顔を見せた。
「帝国貴族の皆さん、王国のクローデル公爵家のリリーアンナです。此度、縁がありデューク皇太子殿下と婚約する運びとなりました。
しかし、デューク様はもう皇太子ではなくなります。」
リリーの発言にユーリとデューク以外の参加者は目を丸くする。
この公爵令嬢は婚姻前なのに何を言っているのかと…。
「帝国貴族諸君、今からこの私デューク·リンドグレーンは現皇帝陛下に生前退位をしてもらい、皇帝として即位する。」
「デューク!貴様!どういうつもりだ!」
「そうです!デュークいったい何を!?」
皇帝と皇妃は怒りを顕にする。
「お兄様!どうしてしまわれたのです?
お父様に退位を迫るなんて!」
「黙れ!お前に兄と呼ばれる筋合いはない!」
デュークに黙れと凄まれた妹姫は青ざめる。
「デューク、何を言っているの?あなたのたったひとりの妹でしょう?」
皇妃がデュークに訴えるが、彼は聞く耳を持たない。
「確かに私の妹はひとりです。ですが、そこにいる女ではなく、アリアドネだけが私の妹です。
そうであろう、宰相よ?」
名指しされた宰相の前に道ができる。
「で、殿下、な、何を仰っているのです!?」
「はは。私が知らないとでも?あの女は皇妃と宰相の子供であろう?」
「お、お前!」
デュークの発言で皇帝が皇妃を忌々しげに見る。
「へ、陛下!そ、そんなはずはございませんわ!
信じて…」
「証拠ならありますよ?」
デュークは次々と証拠を出していく。
皇帝、皇妃、妹姫、宰相の顔色がどんどん悪くなっていく。
「陛下、皇妃様の罪はそれだけではありません。そして、あなたにも罪状があります!
陛下も皇妃様も民や貴族からの税金を湯水の如く使っておいでですね?」
「な、何を証拠に!?」
皇帝は非を認めていない。予想通りだと思いデュークは証拠の数々を参加者にもわかるように見せる。
「お、お兄様はお姉様に騙されているのですわ!」
証拠を提示されたのにも関わらず妹姫はリアに騙されていると言い始めた。
「お父様たちは税金を不当に使ったりなんてしてないわ!
お姉様が湯水の如く使って、それをお父様たちに擦り付けただけでしょ!?」
この期に及んでリアの仕業にしようとする。
「ふっ…リアのせいにするとはな…。」
ユーリが嘲笑う。
「王国の人間には関係ないでしょ!?私が声をかけてあげたからって調子にのらないで!黙ってなさいよ!」
「おや?私はアリアドネ様の婚約者ですから、帝国のこととはいえ関係あるのでは?それに、第二皇女殿下とは先程、ほんの少し言葉を交えただけです。
それ程までにご自分が敬われていると勘違いなさっているのですか?」
「!!皇族に対する不敬よ!騎士たち!その男とそれを増長させているアリアドネを捕らえなさい!」
ユーリの見下した発言が気に入らなかった妹姫は騎士たちに命じる。が…
「…ど、どうして捕らえないのよっ!?」
「そ、そうよ!姫の言うことが聞けないの!?」
騎士団には昨日新たな掟ができた。『ユーリクス·ヒルデストには手をだすな。アリアドネ皇女殿下に手を出すと返り討ちにされる。』と。
だから、騎士たちには出るに出れない。
「無駄ですよ。皇妃様、第二皇女殿下。
彼らでは私とアリアドネ様を捕らえることはできません。
報告を受けておられませんか?騎士団上層部は昨日中に私が壊滅状態にさせたこと。」
「あ、あなたがお兄様を!?」
「おや、知っておいででしたか。」
何の話かわからない参加者のためにデュークが口を開いた。
「このユーリクスは王国最強の騎士であり、この帝国の騎士団の団長と副団長が束になってかかっても倒せない。昨日、団長たちはユーリクスに討たれたのだ。命はあるがな。」
参加者たちから「ま、まさか、そんなに強いのか…」「近づいたら殺され…」など聞こえてくる。
「皇妃様、あなたがアリアドネを消すためや俺に怪我を負わすために王国に送った刺客たちを倒したのは全てユーリクスです。」
「刺客!?」
リアは知らないうちにユーリに護られていたことが嬉しかったと同時に王国にまで監視だけでなく刺客を送っていた母親の顔が見れなかった。
「アリアドネが悪いのよ!陛下や私に似ずに産まれてきて!あんな子、小さいうちに殺しておけばよかったのよ!」
「それがあなたの本音ですね?」
皇妃の発言にユーリはキレた。
流石に他国の皇族に危害を加えようとは思わないが、言わずにはいられなかった。
「アリアドネ様を幼い頃から不当に扱ってきて、彼女が悪い?全く…一国の皇妃ともあろう御方が子供じみたことを。
親ならば、子供を愛するはずでしょう?」
「あなたに何がわかるのよっ!?」
「私は家族の誰とも似ておりません。
父親とも母親とも、祖父母やそれより先代たちにも私と同じ風貌の子供は産まれておりませんでした。
周りから何を言われようとも家族は護ってくれました。
ところで皇帝陛下、先程から許可なく発言したことを謝罪すると共に確認があるのですが?」
ユーリは皇帝へ頭を下げると「許可する…」と力なく返事が返ってきた。




