襲撃
今回は、レイバークとタカの護衛任務から始まる。
何事もなく終わるはずだった任務。しかし、突如として闇ギルド・ゾルペスが襲撃してくる。
彼らの目的は、いったい何なのか。
そして、カルタの奥に隠された秘密とは――。
第7話【襲撃】
「どういうことだよ!?」
ラルドが困惑した表情を浮かべる。
「つまり、君たちが倒した中に、幹部クラスの人間はいなかったということだ」
ギルドに戻ったエゼルたちは、魔法局の職員から報告を受けていた。
「じゃあ……まだ、この事件は終わらないってこと……?」
マナが不安そうに尋ねる。
「あぁ、おそらくな」
魔法局の職員は、重々しく頷いた。
――その頃。
「今日はよろしくお願いします!」
タカが元気よく頭を下げた。
「あぁ、よろしく頼む」
依頼人も笑顔で応じる。
レイバークとタカは、依頼人の護衛任務を開始していた。
「目的地はカルタ。到着まで約二時間ですね」
レイバークは依頼内容を確認し、依頼人に視線を向けた。
「まぁ、ただ列車に乗っているだけだからな。護衛なんて必要なかったかもしれん」
依頼人は冗談めかして笑った。
「何も起きないのが一番ですよ」
レイバークも軽く笑い返した。
――1時間後。
バコォォン!!
突然、激しい衝撃が列車を襲った。
「な、なんだ!?」
依頼人が驚いて声を上げる。
ガタン、ガタン……。
大きく揺れていた列車が、やがて動きを止めた。
「列車が止まった……!?」
レイバークは剣の柄に手をかけ、警戒しながら周囲を見渡す。
その直後だった。
「おら! 全員おとなしくしろ!」
鎖を手にした男たちが、車内へとなだれ込んできた。
「なんだ、お前ら!」
レイバークが声を張り上げる。
「我々はゾルペス。闇ギルドの者です」
一番奥に立つ男が、落ち着き払った様子で答えた。
「ゾルペス!? 目的はなんだ!」
レイバークは男たちを睨みつけた。
「あなた方が知る必要はありません。おとなしく列車から降りてください」
男は淡々と告げる。交渉に応じるつもりはないようだった。
「闇ギルドの言うことなんか、聞けるわけないだろ!」
「なら仕方ない。死んでください」
男が冷たく言い放った、その直後だった。
ヒュンッ!!
空気を切り裂き、一本の鎖がレイバークの顔面めがけて襲いかかる。
「なっ!?」
ガキィィン!!
レイバークはとっさに剣を抜き、鎖を受け止めた。
激しい金属音が車内に響き渡る。
「タカ、護衛対象から離れるな!」
レイバークはタカに指示を飛ばし、剣を構え直した。
「分かってる!」
「ほう……攻撃を防ぎましたか」
男が感心したように呟く。
「俺たちを甘く見るなよ!」
レイバークは敵を鋭く睨みつけた。
すると、別の男が不快そうに顔を歪める。
「鬱陶しいデブだな! チェーン・デバイズ!」
男が叫んだ瞬間、レイバークの足元が激しく揺れた。
「なっ!?」
バキバキッ!!
床を突き破るように、無数の鎖が飛び出した。
鎖はレイバークの両腕と両足に一瞬で絡みつく。
「ぐっ……!」
次の瞬間、鎖が四方へと勢いよく伸びた。
左右上下から身体を引っ張られ、レイバークの顔が苦痛に歪む。
「ぐあああっ!!」
「レイバークさん!」
タカが叫ぶ。
「ガキもやっちまいな」
ゾルペスの女が、冷たく命じた。
「あいよ。チェーン・デバイズ!」
男がタカに向かって手をかざす。
「なっ!?」
次の瞬間、タカの足元からも無数の鎖が飛び出した。
ガシャガシャガシャンッ!!
「わぁぁぁー!」
鎖がタカの両腕と両足に絡みつき、あっという間に身動きを封じる。
「くっ……! なんだよ、これ!」
タカは必死にもがいたが、鎖はびくともしなかった。
「弱小ギルドに依頼して、目立たないようにしようとしたのかもしれませんが……逆効果でしたね」
一番奥の男は、拘束された二人を一瞥してから依頼人へと視線を向けた。
「さぁ、一緒に来てもらいますよ」
男は薄い笑みを浮かべ、依頼人に告げる。
「わ、私に何の用だ!?」
依頼人は怯えた様子で後ずさった。
「あなたはカルタの領主」
「我々はカルタで探し物をする。そのための捕虜兼、道案内というわけです」
「さ、探し物……?」
領主の顔がこわばる。
「カルタに着いてから教えてあげますよ」
男はそれ以上説明するつもりはないらしく、話を打ち切った。
「ところで、このデブとガキはどうする?」
鎖を操る男が、一番奥の男に尋ねる。
「道に放り投げときな」
女が興味なさげに答えた。
「あいよ」
鎖を持った男と太った大男が、レイバークとタカの身体を乱暴に持ち上げる。
「なっ……! おい、待て!」
レイバークが抵抗しようとするが、鎖に拘束された身体は思うように動かない。
「や、やめろ! 離せ!」
タカも必死に叫ぶ。
「あばよ、雑魚ども」
男たちは二人を列車の扉へと運ぶと、容赦なく外へ放り投げた。
「うわああああっ!」
バッ!!
二人の身体が、走行中の列車から勢いよく投げ出された。
――その後。
「くっ……くそ。タカ、大丈夫か?」
レイバークは痛む身体を起こし、タカの様子を確かめた。
「な、何とか……。レイバークさんは?」
「体中痛いけど、動ける」
レイバークは顔をしかめながらも、ゆっくりと立ち上がった。
「それならよかった……。ところで、これからどうしよう……」
タカが不安そうに呟く。
「とにかく、ギルドに連絡だ。何が起きたのか、みんなに知らせないと」
レイバークがそう言った、そのときだった。
ガシャン……。
身体を縛りつけていた鎖が、音を立てて地面に落ちた。
「……鎖が解けた?」
どうやら、魔法の効果範囲から外れたことで、拘束が解除されたらしい。
二人はすぐさま連絡鳥を使い、ギルドへ襲撃の事実を知らせた。
――エバーリンク。
「マスター、大変!」
マーシャが慌てた様子で駆け込んできた。
「どうした、マーシャ?」
「タカ君とレイバーク君から連絡鳥が来たんだけど、ゾルペスの襲撃にあったって!!」
「なんだと!? なんであいつらがゾルペスに襲われるんだ!?」
ラルドは驚きに目を見開いた。
「どうする、マスター?」
「とにかく行くぞ! エゼル、マナ、ノルドマン、俺についてこい! ライザとセイフォンはギルドで待機だ!」
ラルドは即座に指示を飛ばした。
「了解!」
エゼルたちは急いで出発し、レイバークとタカに合流するため、カルタへと向かった。
――その頃、カルタでは。
「ここがカルタか。街から少し離れただけで、ただの森じゃねぇかよ」
鎖を持った男は周囲を見回し、不満げに呟いた。
「本当に、こんなところにあるのかい?」
女が男に尋ねる。
「あぁ、恐らくな。さぁ、領主様の出番だ」
「わ、私に何をさせるつもりだ!?」
領主は戸惑いながら、ゾルペスの一団を見回した。
「このカルタには、一度足を踏み入れると帰ってこられないと言われている場所があるだろう。そこへ案内しろ」
「そ、そんな場所は知らない!」
「とぼける気か? 家族がどうなってもいいのか?」
「な、なんて卑怯な……!」
領主は悔しそうに唇を噛みしめた。
「闇ギルドなもんでな。それで、どこにある?」
男は悪びれる様子もなく問いかける。
「…………ついてきてくれ」
領主は観念したように呟くと、森の奥へと歩き始めた。
――ゾルペスの一団は、領主の後を追って森の奥へと進んでいく。
しばらく進むと、領主が足を止めた。
「ここだ」
「なんだ? ここだけ開けた場所になってるが……でけぇ滝があるだけじゃねぇか」
鎖を持った男は滝を見上げ、苛立たしげに舌打ちした。
「あの滝をくぐると、その先に階段がある。だが、そこから先は帰ってきた者がいない。だから、その先に何があるのかは分からない」
領主は滝を見つめながら説明した。
「なるほど。では、領主さん。あなたが先に入ってください。我々は後ろからついていきます」
「な、なんだと!?」
「家族がどうなってもいいのですか?」
領主は押し黙った。
「……わかった。その前に、お前たちの目的を教えてくれ」
「いいでしょう」
ゾルペスの男は、不気味な笑みを浮かべた。
「我々の目的は――」
「神の力を手に入れることです」
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