監視
エゼルの奪還に動きだ出すエバーリンクメンバー。
しかし手ごたえを得られずにいた。
そこに現れるオーデル。
はたして彼の目的とは…
――翌日、朝。
「さぁ、行くか」
ラルドは仲間たちを見回した。
「これからは三組に分かれて行動する。敵に見つかるリスクを減らすためにも、なるべく目立つなよ」
仲間たちは静かにうなずいた。
「組分け、俺とライザとマーシャ。マナとノルドマンとパーナ、タカとレイバークとアクタス。この三組で動く」
「了解!」
全員が返事をした。
――エバーリンクのメンバーたちは王都中を駆け回り、エゼルの処刑、神の力を受け継ぐための器に関する情報を探していた。
しかし、何の手がかりも得られないまま、三日が過ぎていた。
「一体どうなってるんだよ!!」
ライザが苛立ちをあらわにして叫ぶ。
「落ち着け。焦っても仕方ねえ」
ラルドがなだめる。
「落ち着けったって、もう三日だぜ! 何の手がかりもないなんて……!」
ライザは悔しそうに拳を握りしめた。
「もしかして、国中を探さないといけないのかな…」
マーシャが不安そうにつぶやく。
「それにアクタスだっていまだ目を覚ましてない…」
レイバークも心配そうにうつむいた。
アクタスが突然ラルドを襲い、そのまま倒れてから三日。
いまだに目を覚ましていなかった。
「なぁ、マスター。この際だから聞くけどよ……アクタスって何者なんだ?」
ノルドマンが真剣な表情でラルドに詰め寄った。
その場にいた全員が、ラルドへと視線を向けた。
「まぁ、そりゃあんなことがあったら気になるよな……」
ラルドは腕を組み、険しい表情を浮かべた。
ふと、魔法局の男が口にした言葉が脳裏をよぎる。
(闇魔法とは、古来より悪魔族のみが使用する魔法です)
「……あいつは、悪魔に育てられたらしい」
「なっ……!?」
その場にいた全員が、驚きに目を見開いた。
「俺も詳しくは知らねえ。あいつと初めて会ったのは、パーナと出会うよりも昔のことだ」
ラルドは当時を思い返すように、ゆっくりと話し始めた。
「あいつは人間の両親のもとに生まれたらしい。だが、子供のころに受けたある依頼で、両親を失ったそうだ」
「そして、その依頼の最中に悪魔と出会った。あいつはそいつに育てられた……そう聞いている」
話を聞いたメンバーたちは、複雑な表情を浮かべた。
「じゃあ、悪魔ではないんだな?」
ノルドマンが確認するように尋ねた。
「……わからねえ」
ラルドは険しい表情で首を横に振った。
しばらく沈黙が流れる。
しかし、ラルドは気持ちを切り替えるように顔を上げた。
「……まぁ、アクタスのことは後だ。今はエゼルを助けることが先だ」
ラルドは仲間たちを見回し、力強く告げた。
「ここが踏ん張りどころだ。絶対に諦めるな」
――翌日
「マナ、大丈夫?」
パーナがマナを心配する。
「え、何が…?」
マナは不思議そうに首をかしげる。
「最近、あんまり眠れてないだろ? 顔色も悪いよ」
「……大丈夫だよ。ちょっと寝不足なだけだから」
そう答えて微笑んだものの、その表情には疲れがにじんでいた。
その時、近くにいた男たちの会話が、マナたちの耳に飛び込んできた。
「おい、聞いたか? この前、カルタの森を崩壊させた奴の処刑が、明日、王宮で行われるらしいぞ」
「ほんとかよ!? そんな奴、なんですぐに処刑しないんだ?」
「どうやら、ゴッドホルダーらしいぞ!」
「マジかよ!? とんでもない奴が処刑されるんだな!」
「え、ゴッドホルダー!?」
その言葉を耳にした瞬間、マナの表情が凍りついた。
「……お兄ちゃん」
マナの脳裏に、エゼルの顔が浮かぶ。
「ノルドマンさん、パーナさん……行こう!」
マナは震える体をこらえ、顔を上げた。
「待て。まずは全員に情報を共有して、どう動くか判断しよう」
ノルドマンがマナを引き止める。
「そんな時間ないよ!!」
マナは焦りを抑えきれず、声を荒らげた。
「落ち着きな、マナ!」
パーナがマナの肩に手を置く。
「今から向かったところで、エゼルがどこにいるのかも分からないだろ? それに、ほかのみんなも何か情報をつかんでいるかもしれない」
「でも……!」
マナは唇を噛みしめた。
「……分かった」
「よし。まずはみんなと合流しよう。話はそれからだ」
ノルドマンの言葉に、三人は急いで仲間たちとの合流を目指した。
――仲間たちとの合流後。
「その情報は間違いないのか……?」
ラルドはマナたちの報告を聞き、険しい表情で尋ねた。
「確証はない。だが、本当である可能性は高い」
ノルドマンが答える。
「明日か……」
ラルドは腕を組み、しばらく考え込んだ。
そして、顔を上げる。
「よし。今夜、王宮に忍び込む。エゼルを助けるぞ」
全員がうなずく。
「アクタスさんはどうするの?」
タカが不安そうに尋ねた。
その場にいた全員の視線が、眠り続けるアクタスへと向けられた。
「アクタスは俺が担いでいく」
ラルドは迷うことなく答えた。
「作戦開始までは、各自しっかり休んでおけ。今夜は王宮に忍び込むんだ。万全の状態で臨むぞ」
「分かった」
仲間たちはそれぞれうなずき、休息を取るために動き始めた。
――夜
エバーリンクのメンバーは、エゼル救出作戦を結構した。
「よし、行くぞ」
ラルドの掛け声と共に全員が王宮目指して走り出した。
やがて、一行は王宮の裏口へとたどり着いた。
「見張りがいるな……」
ノルドマンが物陰から様子をうかがう。
「気絶させられるかセイフォン?」
「任せろ!」
セイフォンは見張りの隙を突いて気絶させた。
見張りが倒れたのを確認すると、エバーリンクのメンバーたちは王宮内へと侵入した。
しかし、奥へ進もうとしたそのとき――。
「やぁ、待ってたよ」
目の前にオーデルが姿を現した。
直後、背後から兵士たちが現れ、一行の退路を塞いだ。
「しまった……! 囲まれたか……!」
ラルドは険しい表情で周囲を見回した。
だが、オーデルは戦う様子もなく、穏やかな口調で告げた。
「エゼル君を助けに来たんだろ? ついてきな」
「どういう風の吹きまわしだ?」
ライザが警戒を解かずに問いかける。
「大丈夫。エゼル君のところに連れていくだけだ」
「そんなの信じられるわけ…」
「行こう」
ライザの言葉を遮るようにマナが言った。
「マナ!?」
しかし、マナは何も答えず、オーデルの後を追って歩き出した。
他のメンバーもマナについて歩く。
しばらく歩くと、オーデルが扉の前で立ち止まる
「この先に居る」
オーデルが扉を開けると奥にエゼルが居た。
「お兄ちゃん…!?」
マナは目を見開き、今にも泣き出しそうな表情で駆け寄ろうとした。
しかし、入口に居た兵士に止められてしまう。
「君たちはここまでだ」
「君たちには、ここからエゼル君の処刑を見届けてもらう」
オーデルは淡々と告げた。
「なっ…!?」
ラルドたちの表情が一変した。
オーデルは動揺する一同を見回し、静かに続けた。
「この数日、君たちが王都中を駆け回っていたことに、王国側が気づいていないとでも思ったのかい?」
「君たちがどこでなにをしていようと、いつでも捕まえることができたのさ」
一瞬、場の空気が張り詰めた。
「君たちにエゼル君の処刑を見届けさせ、そのまま全員を処分する……これが王国側の作戦だ」
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