絶望
仲間が死刑を宣告され、ギルドまでもが闇ギルドに指定された。
理不尽な現実を前に、エバーリンクのメンバーたちは何を選ぶのか。
仲間を見捨てるのか。それとも、すべてを敵に回してでも救い出すのか。
彼らの覚悟が、今、試される。
「なんでエゼルが死刑なんだよ!!」
ラルドが激昂し、魔法局の男に詰め寄る。
「理由はお伝えしますので、落ち着いて聞いてください」
しかし、男は一切動じることなく、冷ややかな視線を向ける。
「まず、あなた方のギルドについてです」
「あなた方のギルドは、もともと人気が低い。所属する戦闘員の能力も、他のギルドと比較して決して高いとは言えません」
「そして今回、カルタ領主の護衛任務に失敗した」
「これらの事実を踏まえ、当局は判断しました」
「――あなた方のギルドは、もはや必要ありません」
「だからと言って闇ギルドである必要はないじゃないか!」
レイバークが叫ぶ。
「本来であれば、ギルドは取り潰しです」
「しかし、そこの黒髪の男。彼は闇魔法を使うそうですね」
魔法局の男はアクタスを指さした。
「それがなんだよ」
「闇魔法とは、古来より悪魔族のみが使用する魔法です」
「それをなぜ、使える人間が居るのでしょうか?」
「そんなこと、俺たちが知るかよ!」
ラルドが声を荒らげる。
「その事実だけでも、あなた方が悪魔族とつながっている可能性は考えられます」
「そんな証拠、どこにもないじゃないか!!」
ラルドが男を睨みつける。
すると、男はわずかに口元を緩めた。
「逆に、悪魔族とつながっていないという証拠もありませんよね?」
「……っ!」
ラルドは言葉に詰まった。
「疑わしい点がある以上、あなた方を野放しにするわけにはいきません」
「エバーリンクを闇ギルドに指定する。それが当局の判断です」
「しかし、今回あなた方が闇ギルドを倒したことについては、感謝しなければなりません」
魔法局の男は淡々と続けた。
「その功績を考慮し、本日は大目に見ましょう。ですが、明日からは闇ギルドとして扱います」
「そこは、闇ギルド指定も免除してくれないのか……」
レイバークは肩を落とし、がっくりとうなだれた。
「最後にエゼルの件です。」
魔法局の男は顔色を曇らせた。
「神の力を国王の許可なく所有した者は、例外なく処刑する。これは国の法律で定められています」
「なんだそりゃ!!」
ラルドが再び激昂する。
「神の力は、それほど危険なものなのです。あなた方も、実際に目の当たりにしたでしょう?」
男は大穴に目を向ける。
「目の前にある大穴が、その証拠です」
そして、再びラルドたちへと視線を戻す。
「もし、あの力が暴走したらどうなると思いますか?」
「現に、ゾルペスのボスも神の力に飲まれかけていたそうではありませんか」
男の言葉に、その場に重い沈黙が落ちた。
「でも……制御できる可能性だってあるじゃないですか……」
マナが悲しそうな表情で訴えた。
「お気持ちは分かりますが、例外は許されません」
「そうやって国は守られているのです」
「そんな……」
マナの瞳から涙がこぼれ落ちた。
その場に崩れ落ち、声を押し殺して泣き始める。
魔法局の男は、泣き崩れるマナを一瞥し、淡々と告げた。
「それでは、エゼルはこちらで連れていきます」
「待てよ……!」
ラルドが声を上げる。
しかし、男は足を止めなかった。
「あなた方は明日から、追われる側です」
「これからどう過ごすのか、よくお考えください」
そう言い残すと、魔法局の男はエゼルを連れて去っていった。
「……お兄ちゃん……」
マナの泣き声だけが、その場に響いていた。
「マスター、これからどうするんだ…」
ノルドマンがラルドを見つめる。
「…一度ギルドに帰ろう」
ラルドが落ち込んだ様子で答えた。
――列車に乗り込んだものの、誰一人として口を開こうとはしなかった。
重苦しい沈黙のまま、列車は走り続けた。
そして――。
「おう、帰ったぞー」
ラルドがギルドの扉を開けた、その瞬間。
「このバカタレがぁぁぁ!!」
バゴォッ!!
突然、ラルドが殴り飛ばされた。
「マ、マスター!?」
他のメンバーたちが慌てて駆け寄る
「あんたは何してんだよ!!」
パーナが激昂し、ラルドに詰め寄った。
「な、なんだよ…」
「闇ギルドに指定されたうえに、エゼルまで死刑にされるって……どういうことか、ちゃんと説明してもらうよ!」
――ラルドは、魔法局で告げられたことのすべてをギルドメンバーに話した。
話を聞き終えたメンバーたちは、誰もが言葉を失っていた。
「それで、あんたはノコノコ帰ってきたわけか?」
パーナが鋭い視線をラルドに向ける。
「じゃあ、どうしたらよかったんだよ!」
「明日にはどうせ闇ギルドなんだろ? だったら派手に暴れてやればいい」
パーナが拳に力を入れる。
「そんなのやばすぎんだろ…」
ラルドが困惑した表情を浮かべる。
「なんだマスタービビってんのか?」
ライザがニヤリと笑い、ラルドをからかった。
「お、お前ら本気か…?」
ラルドは信じられないといった様子で、その場にいる全員を見回した。
その場にいた全員が、迷いなく頷いた
「みんな…ありがとう…」
ラルドの目に涙が浮かぶ。
「なんだよ、あんた。泣いてんのか?」
パーナが呆れたように笑い、ラルドをからかった。
「泣いてねぇよ! 俺だってエゼルを助けたかったんだ!」
ラルドは声を張り上げた。
――その時。
「残念だけどそれは無理だよ」
突然、ギルドの入り口付近から聞き慣れない声が響いた。
「……誰だ!?」
ラルドが振り返る。
そこには、見覚えのない人物が立っていた。
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