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不明の旅路  作者: 緩衝材
第一章【春よ、帰路を求む。】
3/17

お空

「あたしにっ目暗(もくあん)の魔法をかけて!!!」


えっ、無知なのに?!


「本当にお願い!あたし実は、地底人でさ。今みたいに黒い布かけてないと太陽がまぶしくてほとんど何も見えないんだよね。」

「そうなんですね…」

見た目普通の人間だけど、アリアさんは地底人だったんだ…。アリアさんみたいな見た目は人間だけど本当は人間じゃないっていう人もいるのか…。

「す、すみませんけど、ぁの、僕、魔法の出し方?みたいなのを知らなくて…」

「大丈夫大丈夫!魔法っていうのはねぇ、こう、手にぐって力入れてぱってやるの!!」

え、語彙力皆無の人だ。この人。


「本当におねがい!あたし友達もお金も無いの!!

本当にやり方わかんない?!」

「わ、わかんない…です…」

「えぇ〜〜!いけるって!いけるいける!ちょっとやってみてよ!!」

「えぇ…」

どうしよう、出来るはずない…。

でもアリアさんは僕がいないと困るわけだし…

てか駄々っ子だなこの人。


「あの。」


声がする方に春斗とアリアが同時に振り向く。

そこには、青薔薇が生えている片目の人と藤色の髪をもつ可愛らしい顔をした男が立っていた。

2人で暫く見ていると青薔薇の人が、

「道を塞がないでください。それと声が大きいです。」

「あっ、すみません…。」

アリアがまたションボリした。

「それと、どうしたんですか。何にそんな困ってるんですか?」

藤色の男がゆっくりと喋りだした。

「僕たちに出来ることがあれば、力になりますよ。」

「えぇっと、あたしが地底人で太陽の光で眩しすぎて何も見えないから、この人に目暗の魔法をかけてもらおうと思ってたんだけど、この人…あ、ハルトっていうんだけど、ハルトが魔法を出しかたがわからないって言ってて…」


「なーんだ、そんな事か。」

「もしかして、その2人のどちらかは光の魂だったりする?」

「いや、別にそういう訳じゃないけど。魔法の出し方なら教えられるから。」

「ほんと?!あ、あたしはアリア。こっちがハルト!」

「よ、よろしくお願いします…」

急に自己紹介入ったからびっくりした…ドキドキする…。

「よろしく、僕はラン。こっちがソロ。」

「はい、よろしくお願いします。」

「じゃ、ハルトに伝授する。まぁ初心者だと思うから、えーっとアリアさん、」

「アリアでいいよ!」

「じゃあ、アリア。アリアの目に手あてて。」

「しっ、失礼しますっ」

ゆっくりと、手が震えながらアリアの目に手を添えた。


「そしたら、手から黒いモヤを出すのをイメージする。手のひらにその感覚を込めて…感覚を押すっ!」

春斗が手に力を込めたその時、目の前にいたアリアは黒煙のようなものをだしながら真っ黒に染まった。

「うわぁっ?!?!」とアリアが叫び

「あ、やべ。」とランが呟き

「えっ」と春斗が思わず口からでて

「あ〜…」とソロがため息に近いように言った。


「ちょっ、ちょっとちょっと!真っ黒なんだけど?!?!」

春斗の手はもっとわかりやすく震え始め、驚きで声も出ない。

「あー、これは色魔法の方だ。ハルトがアリアの事を黒く染め上げちゃったんだよ。」

「であれば、水魔法で落ちますね。アリアさん、少し濡れますよ。」

そう言うと、ソロは手から大量の水を出し、アリアを頭の上からザパーっと濡らした後、手でまたアリアの黒い水を手で吸収した。

「はーっ…びっくりした…ハルト、魔法下手くそだね…」

「うっ、ごめんなさい…。」

地味にショックだな…下手くそって…。

「まぁまぁ、でも今度は多分大丈夫だよ。

もう1回。今度はモヤじゃなくて目を暗いところに行かせるイメージでやってみ。」

「は、はい…。」

どうしよう、また失敗したら。そしたら今度こそアリアさんに愛想つかされてしまうかもしれない。


期待に、応えられない。


「落ち着け。落ち着いて、イメージしろ。」

春斗は1回だけ深く深呼吸をした。

そして、手をアリアの目に添えて、イメージをして、手に力を込めた。

その時、直接触っていないはずのアリアの目に触っている感じがした。

それと同時に物凄い疲労感が押し寄せ、思わずその場に膝から崩れ落ちた。


「…上手くいったんじゃない?アリア、どう?」

アリアがゆっくりと顔を隠していた黒い布を外した。

アリアは目を見開き、その空色の目で空を見つめた。

「お空だ…空が、見える…」

泣きそうな声だった。


そして、涙を流した。


この場のアリア以外の全員が泣きそうな理由を知らなかった、わからなかった。


しかし、誰も慰めたり泣くのを止めようとはしなかった。


全員それが嬉し泣きだと分かっていたから。

今回出てきた「ラン」は中性です。

身体的にも精神的にも中性になっています。

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