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不明の旅路  作者: 緩衝材
第一章【春よ、帰路を求む。】
2/17

無知

自分の身体が上手く動かない、ぶつかる!


ドンッ


そこには────金髪の女性が一人だけいた。


「痛った…」

尻もちをついて思わず本音が口から零れる。

女性が喋り始めた。

「ごっごめんなさい!あの、あたし、急いでて!!

えっと、大丈夫ですか?!怪我とか!」

急に大きな声が脳まで響き始めた。

その勢いに圧倒されて声が上手く出ない。

「ぁっ、ぇっと、その、、大丈夫、です」

「ん?!?!なんて言った?!声ちっちゃくて聞こえない!!もっかい言って!!!」

「ぁ、ぇっと、大丈夫!…です」

なんとか「大丈夫」の一部分だけ声を大きくして伝えられた。ただでさえ声が通りにくいのに、大変だ。


「ほんと?良かった!ごめんね、ぶつかっちゃって。

立てる?」

スッと慣れた手つきで自分の前に手を差し伸べてくる。

そういえばずっと座り込んでいた。この人はもう立ってるのに。


ろくに人と話してこなかったから少し空気感が苦しいな…。そんな事をかんがえながら手を取った。

「ぁ、ありがとぅござぃます…。」

「うんっ!てか、なんであんな道の真ん中で座ってたの?お腹痛い?」


「…」

心臓がヒュッと痛くなった。


────答えられない。


「ねぇ、どうしたの?やっぱりお腹痛い?」


こわい。


「もしかして迷子だったり?場所わからない?」


コク…

「あ、そうだったんだ!実はあたしもなんだよねー」


小さく頷くのが精一杯だった。

“わからないこと”がものすごく怖い。


「あたし役所を探してて、登録しなきゃいけないの。」

役所、役所なら何かこの街についてわかるかも…!

「ぇっと、そうなんですね。僕も、その、役所に…」

「行くの?!?!」

表情は見えないけど声のトーンから、嬉しそうなのが伝わる。

「じゃあっ、一緒に行こっ!!」

こうして、展開はやっと進んだ。




暫くこの街を歩いてみて分かったこと。

それは、何も無いところから水や火、土、風などが生まれていることと、植物の成長を早めたりしている人がいたり、人の傷を医療器具を何も使わずして完治させていること。


何も無いところから急に水とかが出てきたりするのはあまり理解が出来ない。

さらにもっとよく分からないのが、

人間に見えても人間じゃなくなったり、鳥の羽が生えている人間がいたりと、人型といえど人間とは明らかに違う生物が沢山いることだ。


こんなの、今まで見たことない。所謂ここは異世界のような所なのだろうか。

けどアニメとか漫画とか見たことないから詳しくない。かなり絶望的な状況だと考えられる…。

詳しい人だったらこの環境に順応出来るのかな…。

「あっ!」

急に大きな声を出してきた。

「名前!言ってなかった!あたしは、アリア!よろしくね!君の名前は?」

「ぇっと、春斗…です。」

「ハルト?素敵な名前だね!」

自分からしたらそうは思えないけど、周りからしたらそうなのだろう。

「あっ、地図あった!!来て来て!」

また大きな声が脳に響いた。


「やっと見つけられた〜、ハルトも役所探して!」

「ぁ、はい…」

地図をひと通り見ると、恐らく自分がいた世界では誰も読めない字が沢山書かれていた。

でもこのアリアという女性はすらすら読めている。

ここの公用語なのかもしれない。

「あった!ハルトあったよ!ここからすぐ近くだし早く行こう!」

この人は本当になんでも早く行きたがるなぁ。




「は〜…やっと着いた…早く戸籍の登録済ませなきゃ!そういえば、ハルトは役所に何しに来たの?ハルトも戸籍の登録?」

「え?…戸籍?」

「うん、あたし訳あって戸籍がないから登録しなきゃいけないの。ハルトも戸籍なかったら登録しなきゃいけないよ。」

「ぇーっと…僕も、です。」

自分の戸籍は確かにこの世界には無いだろうから作っておいた方が得な様な気がする。


アリアさんが役所の人に話しかけた。

頭に角が生えてるから人とは言えないかもしれないけど…。

「あの、すみません、自分の戸籍の登録をしたくて、」

「かしこまりました。魂診(こんしん)は済んでいますか?」

「あたしは済んでるけど…ハルトは?」

「え?」

なんだ、なんだそれは。知らない言葉が出てきた。取り敢えずわからないはずだからわからないって言っておこう。

「わ…、わからなぃ…です。」

「では、お連れの方だけ魂診の方へ来てください。

そちらは資料を渡しますので記入してお待ちください。」

「わかりました。ハルト、待合室で待ってるね!」

「はい…」

何が何だかわからないけど、役所だからしっかりしてるはず…。と思いたい…。


どうやら魂診?をする場所に着いたらしい。

「魂診する人が居ますので、終わったら何の魂か覚えておいてください。そのあとお連れ様と同じところに戻り、記入してください。」

そう言われ、部屋に案内された。


ガチャ


「魂診をするお方ですかぁ?」

ゆっくりと魅惑たっぷりに話しかける美しい女性が一人いた。

「今回魂診を担当させていただく、エルフのソニアと申しますぅ。よろしくお願いしまぁす♡」

ソニアさんはにこっと微笑んだ。

「よ、よろしくお願いします…」

エルフ…エルフって聞いたことはあるけどどんなものかわからないなぁ。ただ耳は結構尖ってる…?


「では、早速ここにすわってくださぁい。楽にしてくださいねぇ」

「は…はぃ…」

病院みたいだなぁと思っていると

「頭の方、失礼しますぅ」

ぐっと、指の腹で少し強く押された。

痛くは無いが脳を直接触られている不思議な感じがする。


数秒後、ソニアさんは僕の頭から手を離した。

「わかりました、貴方は“光の魂”ですねぇ。このあと記入しなければいけないので、しっかり覚えといてくださぁい」

「は、はい…わかりました。ぁの…」

「はい、どうなさいましたかぁ?」

「ぁ、えっと…魂、って言うのがよくわからなくて…説明して欲しい…です。」

「わかりましたぁ、分かりやすく説明しますねぇ。

まず、魂には初魔法種の水、草、光、土、風の5種類があります。魂の種類によって使える魔法が限られるんです。

水であれば、水と氷と火の魔法が。

草だったら、草と毒の魔法。

光だったら、光と陰と色の魔法。

土だったら、土と岩石の魔法。

最後に風は、風と音の魔法、となっています。

魔法にはこのように沢山種類がありまぁす、

また、回復魔法というのがありますが、これは草の魂を持つ人にしか使えないんですぅ。理由はぁ…

これ以上話すと長くなってしまうので、調べるなりなんなりしてくださぁい。

そして魂は魔法の貯蔵庫みたいなものなので、それが大きければ沢山魔法が使えますよぉ」

「そ、そうなんですね…」魂は奥が深そうだな…


「と・り・あ・え・ず!貴方は光の魂、しっかり記入してくださぁい!」

「わ、わかりました」

こうして僕は自分の魂が光だとわかった。

けれどこの世界は分からないことだらけだ…。

そしたら、待合室の方に行かなきゃ。


「あ〜、そうだぁ。貴方、自分の授護(じゅご)と授攻(じゅこう)ってわかってるぅ?」

「ぇっ、あっ、えーっと…」

「その様子だと魂に続いて何も分かってなさそうねぇ、うふふ♡私が教えてあげるぅ」

「ぁ、ありがとうございます」

また知らない言葉が出てきた…

「授護っていうのはぁ、簡単に言えば神から授かった自分だけのお護りのことでぇ、

授攻は神から授かった攻撃するためのサポートや能力のことぉ。授護に関しては大抵の人が持っていて、授攻は大体半分ぐらいの人が1つ持ってるのよぉ。わかったぁ?」

「は、はい、ありがとうございます。」

「私じゃあ、その授護と授攻を持っていてどんなのを持ってるかどうかもわからないから、後で診てもらうといいわぁ。役所内にあるからぁ。」

「わ、わかりました」

「じゃあ、ばいばぁい♡」

ガチャ

…やっと部屋から出れた。あの人喋り方がゆっくりだから凄く時間かかったな…。


「あっ、ハルト!魂診どうだった?」

「ぇっと…光の魂でした」

「えっ!!本当?!?!じゃっ、じゃあ!光の魔法使えるってことだよね?!」

「ぁっ、はっ、はい」

凄く食いつきがいいな、もしかしてアリアさんも光の魂なのかな。

「だったら、ハルトに頼みたい事があるの!!」

「た、頼みたい…こと?」

頼みたいことってなんだろう。そんな躍起にもなって。

「あの、すみません、役所内ではもう少しお静かにお願いします。」

「あっ、すみません…」

注意を受けたことでアリアは少しションボリした。

そして、記入が終わり、2人の戸籍は正式に作られた。


字の読み書きが出来ないから凄く苦労したな…。

「てか、ハルトって時の読み書き出来ないんだね。なんか…なんだろう、その…無知!!!」

言い過ぎな気がするが事実だから何とも言えない気がする。

「で、無知なハルトっお願い!!あたしに、

目暗(もくあん)の魔法をかけて!!!」


えっ、無知なのに?!


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