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不明の旅路  作者: 緩衝材
第二章【孤注一擲】
17/18

赤黒い三つ編み

投稿が遅くなってしまいすみません!

いつもと変わらないクオリティですが、よろしくお願いします…!

純粋な笑顔で名乗ったスズという少女はどうやら先程のうさぎと知り合いのようだ。


「えっと…スズ、さん?はそのうさぎ達と知り合い…?」


春斗はうさぎに怯えながら聞いた。


「うん!知り合いってゆーか友達!」


春斗はあんな一目見ただけで火の玉を噴射してくるような凶暴なうさぎと友達になれるのだろうか、本当はそんなことないんじゃないか。そんな事を考えながら話を聞いていた。


「そうなの?スズちゃんとそのうさぎさんは仲良しなんだね、どうして仲良しなの?」


春斗がとても気になっていることを代弁するようにアリアがスズに聞いた。


「わたしはね、獣懇意(じゅうこんい)の授護を授かってるからうさぎさん達とかと仲良くなりやすいんだ!」


獣懇意の授護とは、世界に存在するありとあらゆる獣に好かれやすくなる授護である。

獣の言葉を一言一句理解することは不可能だが、そのニュアンスは理解することができる。


そのため、スズはあの凶暴なうさぎ達とも仲良くなれるのだ。


「ところでお兄さんお姉さん達は何してるのー?」


「あたし達は今旅してるんだー、スズちゃんは…」


「そうなの?!旅?!してるの?!」


スズがアリアの言葉を遮ってその話題に食いつき、

彼女の表情は目を輝かせ前のめりな体制に変わった。


「旅…興味あるの?」


「そりゃもちろん!色んなところに行って色んなことを知って…すごーくすごーく羨ましい!はやく大人になりたいなぁ…!」


春斗が聞くとスズは身振り手振りを大きくして、自らの夢を語った。


「そういえば…お兄さんお姉さん達、今日泊まるところはあるの?ないんだったらわたしの村に来て!」


「まだ見つかってないし、いいんじゃない?」


アリアの耳打ちでこの日の泊まる場所はスズの生まれの村で決定した。


スズが案内すると言って先頭を歩き、春斗達はその後ろに続いた。

獣懇意の授護のおかげか、道無き道を歩けば歩くほど周りに獣が増えてゆく。

この獣も、スズがいなければ先程のうさぎと同様に攻撃されていたかもしれないと考えると鳥肌がたつ。


今足元を共に歩いているうさぎ達は先程の火の玉を出してきたうさぎ達である。そのうさぎを見て自分を庇ってくれたイヤモンを思い出した。


イヤモンの掌の傷はどうなってるか気になり、イヤモンの掌を見る。


あれだけの傷を負ったのならば、傷跡ぐらいはあるのではないだろうか。

そんな春斗の考えはすぐに消えた。


イヤモンの掌には何の傷もその跡と残っていなかったのだ。春斗はほっと、安堵のため息を吐いた。

恐らく、ランの回復魔法によって治されたのだろう。


あれだけの傷を短い時間でどうやって治すのかは春斗には検討もつかないが、終わり良ければ全て良し。

そんな気がした。


しばらく歩いていると少し地響きを感じた。

地震…いや、一定のリズムで揺れている。

段々その地響きは大きくなる。


何かが来る。


「ンナァ〜〜〜オォ!!!」


何かの鳴き声が聞こえ、先頭のスズが振り返る。


「あっ!どうちゃん!」


スズがそう言うと木と木の間から半長毛の白い猫のような獣が顔を出した。

春斗は驚愕した。


その獣はおよそ10m〜20mの木と同じくらいの背丈をしているからである。

さらに、その獣の額には銅が突き刺さっている。


そしてその獣はスズに飛びつく。


「うわぁっ!あははっ、くすぐったいよぉっ!」


スズのこの様子からきっとこの獣も知り合い…友達なのだろう。


「あっ、この白猫ちゃんはどうちゃん!銅のねこちゃんだからどうちゃん!」


「ぅええ〜っ?!かわいぃ〜〜!!!」


スズが銅の白猫、どうちゃんを紹介するとアリアが真っ先に反応し毛を触りに行った。


「んふぅ〜〜!もふもふぅ〜!!」


アリアが触っていると、春斗の肩にランの手が置かれた。そして真剣な顔。目は澄んでおり、春斗の傍に居るはずなのに、目的とは違うと思われるどうちゃんをしっかり見つめている。

しかしどこかその表情は楽しげである。


「僕は犬より猫派だ。それと、デカイもふもふってのはとてつもなくロマンがある。」


その一言だけを春斗に伝えてまた歩き出した。

そしてランはベッドに飛び込むようにどうちゃんの体に顔を埋めた。


すーっと、ランの顔あたりから音が聞こえる。

所謂猫吸いである。

ランにとっては今までの人生に無かった至福の時間なのだろう。

しかも、先程ランが言っていたように“デカイもふもふにはロマンがある”ということにも一致するので、きっとランは喜んでいるはずだ。


ランに気を取られていてあまり気づいていなかったが、春斗の周りには自分一人しかいなかった。

春斗以外の全員があの僅かな時間でどうちゃんに惹かれていったのだった。


春斗も全く興味がない訳では無い。先程のランとは少し違うが、今まで生きてきた春斗の人生に猫は居なかった。よく比較されるであろう犬ですらも居なかった。


皆が表情筋を緩ませ、気も緩ませている中、春斗はただ一人少し怖々とどうちゃんに近づき、目の前で立ち止まった。

しばらく立ち止まっているが、それは僅かな時間である。その僅かな時間は心做しか長く感じてしまう。


触ってみたい。触ってもいいのだろうか?毛の太さは?実際の色は?感触は?匂いは?音は?春斗の中の好奇心が目の前に立ったことによりさらに引き立てられる。


「触ってもいーよー?」


そんな疑問点ばかりの春斗の頭の中にスズの声が響いた。春斗にとっては急な出来事だった為少し目を開き、肩が少しだけ跳ねた。


「ぁ、ありがとう…」


春斗はそれだけをぽつりと独り言のように呟いたあと、白く毛並みが概ね整えられた体に手を伸ばした。


春斗は初めて猫に触れた。

細く、透明感のある少し黄ばんだ白。外で生活しているからだろうか。室内飼いなら黄ばんだりはしないのだろうか。匂いは少し獣臭い。でもそこまでは臭くない。猫の習性、グルーミングのおかげなのかもしれない。


初めて猫に触れたとあったが、これが最初となると後の所謂普通の猫では少し物足りなくなってしまいまそうだ。


全員がどうちゃんとある程度触れ合ったあと、どうちゃんから離れた。

そしてまた再び、春斗達とスズは歩き始めた。

しかし何を思ったのかどうちゃんも着いてきている。


スズには分かるかもしれないが、春斗達にはなぜ着いてきたのかわからない。

スズに懐いているから着いてきたのか、春斗達に懐いたのか、我が子を守る母親気取りで着いてきたのか。

いずれにせよ、春斗達にはわかるはずがない。


どうちゃんの表情は何を考えているのかわからない。

春斗からすればそれは恐怖の対象である。

平穏を望む。相手を怒らせたり悲しませたりはしたくない。しかし、愛猫家はそれがいいと言う。春斗にはわからないが、この機会により全くわからない訳でもなくなった。

しかし、猫だから許せるものだろう。人間だとすると恐怖を感じてしまう。


しばらく歩いていると頭上の空は橙色に染まっている。太陽は暖色で輝いている。


ところがその時間はあっという間に過ぎてしまう。

日は沈み、朝には太陽が出ていた東方面からは月が顔を出す。

月明かりで自分の手もとなら見えるがそれ以外は一寸先も見えない。

そのためソロが提案した。


「こんなに暗いし、目の前もよく見えないから今晩はここで留まろう。また朝になったら歩き始めよう。」


もちろんこの案に反対する者はいない。

よってここで留まることが決定した。

これから先、このような事が通常になるだろう。


スズのおかげで旅に出て初めての夜はどうちゃんの体を布団代わりにして寝ることになった。

スズが言うにはどうちゃんにとってはこんなの大した重さじゃないらしい。

なので少しの申し訳なさでどうちゃんに寄りかかった。


寄りかかると非常に温かい。天然の湯たんぽだ。

その温かさは安堵感をもたらす。そのおかげかすぐに眠りについた。



─────────────────────────



突如としてそれはやってきた。

金気臭さが鼻に刺さる。

一筋の槍が鼻腔のありとあらゆる場所に刺さる様だ。

その臭いに痛さに思わず目が開く。


目に染みるものは無いものの、鼻腔の痛みは消えない。寧ろ増える一方だ。


瞳孔は開いたまま。なので暗闇でも月明かり一つで比較的よく見えるが、それでも遠くは見えない。


春斗は異世界で一年過ごして習得した手から光を出し、あたりを照らす。

春斗は未だに魔法が苦手だから光はそこまで強くはない。だからこそ周りに迷惑をかけずに探すことが出来た。


そしてその臭いの源を見つけた。



────あぁやめておいた方が絶対に良かった。



白い毛の一部は赤黒く染まり、細く柔らかいはずの毛は幾つかの束になって固まる。

光を目に照らすとこちらを見る瞳孔は瞬時に針のように細くなった。


その口元はさらに赤黒い。最早漆黒である。

それだけではない。


そこには────





半眼の少女の幼い顔。あっという間に見慣れた淡白な黄緑の三つ編みは補色の赤で染まってしまい、見慣れなくなる。

その少女、スズの息は絶えて頭から銅が生えている猫の牙に胴が貫かれてぶら下がっていた。


読んでくださりありがとうございます!


色々お伝えしなければならないことがあるので下にまとめました。よろしくお願いします!



【X(旧Twitter)アカウントの開設のお知らせ】

私、緩衝材のアカウントを開設することが出来ました!

色々呟いたり、ここでは見れない情報を発信したりしますので良ければフォロー・拡散よろしくお願いします!

@kannsyouzaii


【現在の13話〜15話の間について】

現在、14話・終わる日常の始まりが投稿されています。

15話の展開が早すぎて少し混乱してしまうと考えたので

間埋めをしたいと思っています。

ものすごく私事なのですが、気が向き次第になります。

優先順位としては最新話の方ですので、ご理解の程よろしくお願いします!


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