第三十一話 仄暗い水の底を彷徨う夢を見ていた。目覚めたら航に顔を覗き込まれていた。魘されてたから覗き込まれていただけ。そう思いたい。
仄暗い水の底を彷徨う夢を見ていた。
沈んでいる、ではなかった。
溺れている、でもない。
彷徨っている。
それが、いちばん近い。
足元は見えない。
けれど、歩いている感覚だけはある。
一歩。
また一歩。
水は冷たくない。
ぬるい。
体温と同じくらいで、皮膚との境目が曖昧になる。
だから余計に気持ち悪い。
どこまでが水で、どこからが自分なのか分からない。
どこまでが夢で、どこからが記憶なのかも分からない。
目の前に、階段があった。
会社の階段。
蛍光灯が白く光っている。
金属の手すり。
滑り止めの黒い線。
俺が踏み外した、あの一段。
ただし、その階段は上へ続いていなかった。
水底へ続いていた。
一段。
一段。
さらに一段。
降りるたびに、水の色が濃くなる。
足首が痛い。
夢の中なのに、ちゃんと痛い。
このあたり、身体の主張が律儀すぎる。
やめてほしい。
俺は階段を降りていた。
降りたくないのに、降りていた。
手には紙があった。
社長用の一枚。
十一月五日に、階段で散らしたはずの紙。
水を吸って重い。
文字がにじんでいる。
十二月刊見本確認メモ。
少年陰陽師。
十三歳。
物の怪。
まだ小さいけれど、守りたいものがある。
その文言が、水の中でほどけていく。
守りたいもの。
その言葉だけが、やけに残った。
何を。
誰を。
どこから。
俺はその紙を胸に抱えた。
濡れた紙はすぐ破れる。
だから、抱えたらいけない。
分かっているのに、離せない。
階段の下には、社長室があった。
社長室のはずなのに、床がない。
机だけが水の中に浮かんでいる。
いや、沈んでいる。
机の上には、見本誌。
緑の背表紙。
仮の帯。
赤ペンの入った紙。
小早川の留守電のメモ。
三浦の削った文言。
佐伯の赤字。
川辺の「完成品ではありません」。
社長の「水底から紙を拾うな。まず浮け」。
全部が、水の中にあった。
俺は近づいた。
拾わなければ。
乾かさなければ。
社長の机に戻さなければ。
月曜で間に合う。
見本誌は逃げない。
そう言われた。
分かっている。
分かっているのに、夢の中の俺は、また紙へ手を伸ばしていた。
その時。
「それは、あなたのものではありません」
声がした。
女の声。
近い。
とても近い。
俺は振り返った。
そこに、篠宮怜子がいた。
いや。
俺だった。
スーツ姿。
まとめた髪。
社長室秘書の顔。
毎朝、鏡で見ている顔。
ただ、その表情だけが違った。
俺が作ったものではない。
昔からこの身体にあった顔。
この世界で働いて、この会社で息をして、航に「さっちゃん」と呼ばれてきた顔。
九月の三日間。
俺がいなかったはずの時間に、会社へ行き、仕事をし、航を「航さん」と呼んだかもしれない人。
彼女は、水の中で俺を見ていた。
責めてはいない。
怒ってもいない。
ただ、静かに見ていた。
それが怖い。
「俺は」
声を出そうとした。
水が口に入る。
苦しくはない。
でも、言葉が泡になる。
「これは、仕事で」
泡。
「社長室の」
泡。
「俺が」
泡。
篠宮怜子は、少しだけ首を傾けた。
「あなたは、どこへ戻るのですか」
どこへ。
社長室へ。
違う。
会社へ。
違う。
月曜の会議へ。
違う。
見本誌へ。
違う。
十二月刊へ。
違う。
航のところへ。
そう思った瞬間、水の向こうで何かが揺れた。
駅前だった。
休日の駅前。
映画館の時間表を持った航が立っている。
俺はいない。
航は俺を探している。
次の景色。
病院の廊下。
航が走ってくる。
俺は救急外来のベッドの上。
また、航は俺を探している。
次の景色。
部屋。
布団。
水。
薬。
棚の上のメモ帳。
航が俺の呼吸を見ている。
俺は眠っている。
また、航は俺を探している。
水が重くなる。
足が沈む。
紙がまとわりつく。
社長室の紙。
読者共有メモ。
探索導線メモ。
初動七日表。
休日出勤の言い訳。
階段禁止の貼り紙。
全部が、濡れた紙魚みたいに足へ絡んでくる。
篠宮怜子が言った。
「本は、逃げません」
知っている。
「見本も、逃げません」
知っている。
「会議も、あなたがいなくても進みます」
知っている。
「でも」
彼女は、俺の胸に手を当てた。
冷たくない。
温かくもない。
紙の温度。
「身体は、沈みます」
その瞬間、水底の階段が崩れた。
俺は落ちた。
階段からではない。
水の中へ。
もっと深いところへ。
暗い。
暗い。
暗い。
どこが上か分からない。
どこへ戻ればいいか分からない。
俺は手を伸ばした。
紙ではなく。
手すりでもなく。
誰かの声へ。
「さっちゃん」
水の向こうから、航の声がした。
「さっちゃん」
遠い。
でも、聞こえる。
「さっちゃん、起きて」
水面が揺れた。
篠宮怜子が、俺から手を離した。
まるで、行きなさい、とでも言うように。
俺は上へ浮いた。
浮いた、というより、引き上げられた。
声に。
手に。
水面へ。
空気へ。
光へ。
*
目覚めたら、航に顔を覗き込まれていた。
近い。
かなり近い。
視界いっぱいに航の顔があった。
心臓に悪い。
いや、心臓が動いている証拠なので良いことなのかもしれない。
しかし近い。
「……航」
声がかすれた。
航の顔が、はっきり緩んだ。
「起きた」
「近いです」
「ごめん」
航は少しだけ身を引いた。
でも、完全には離れなかった。
目が、俺の顔から外れない。
「魘されてた」
「そうですか」
「呼吸が変だった。水の中にいるみたいな」
当たりすぎである。
夢を見られていたのかと思った。
そんなわけはない。
魘されてたから覗き込まれていただけ。
そう思いたい。
救急搬送の翌々日。
頭部打撲。
微熱。
足首固定。
呼吸が乱れていた。
だから航が覗き込んでいた。
そう。
それだけ。
それだけのはず。
「熱、測る」
「はい」
体温計。
三十七度一分。
微熱。
微妙な数字。
しかし航の眉間には十分な数字だった。
「今日は昨日より完全休養」
「完全休養に段階が」
「ある」
あるらしい。
俺は布団の中で観念した。
「夢、覚えてる?」
航が聞いた。
俺は黙った。
覚えている。
覚えすぎている。
水底。
階段。
紙。
見本誌。
篠宮怜子。
身体は沈みます。
言えば、ただの夢ではなくなる気がした。
言わなければ、ただの悪夢で済む気がした。
だが、済ませていいのか。
済ませたい。
済ませたいが、済ませられない。
「覚えています」
俺は言った。
航は頷いた。
「言える?」
「仕事の話になります」
「仕事の話にしないで言って」
「難しいですね」
「練習」
最近、航はよくそれを言う。
練習。
生活は練習。
休むのも練習。
助けを求めるのも練習。
自分が誰なのか分からないことを、誰かに伝えるのも。
「水の底を、歩いていました」
「うん」
「会社の階段がありました」
「うん」
「社長室の紙が沈んでいました」
「もう仕事」
「すみません」
「続けて」
「見本誌も沈んでいて」
「うん」
「拾おうとしました」
航の顔が少し硬くなる。
「それから」
俺は息を吸った。
「篠宮怜子がいました」
航は、驚いた顔をした。
けれど、完全な驚きではなかった。
九月の三日間を、航は知っている。
俺が知らない俺。
航を「航さん」と呼んだ誰か。
この身体を、俺より前から知っているかもしれない誰か。
「昔の、さっちゃん?」
「分かりません」
「うん」
「俺かもしれません」
「うん」
「私かもしれません」
その言葉だけ、やけに自然に出た。
航は手を伸ばしかけて、止めた。
「触っていい?」
いつもの確認。
俺はすぐ頷いた。
「はい」
航が手を握った。
温かい。
夢の水とは違う。
紙の温度とも違う。
生活の温度。
「その人は、何て?」
「本は逃げません、と」
「うん」
「見本も逃げません、と」
「うん」
「会議も、私がいなくても進みます、と」
「うん」
「でも、身体は沈みます、と」
航はしばらく黙った。
手だけが、少し強くなる。
「怖かった?」
「怖かったです」
すぐに答えた。
だが、それだけでは足りない。
「でも、責められてはいませんでした」
「うん」
「それが余計に怖かった」
「そっか」
航は否定しなかった。
夢だよ、とも言わなかった。
疲れてるだけだよ、とも言わなかった。
言ってほしかった気もする。
言われなくてよかった気もする。
「さっちゃん」
「はい」
「その人は、身体のことを言いに来たのかもね」
「身体」
「うん。仕事じゃなくて。紙じゃなくて。身体」
俺は黙った。
「その身体、さっちゃんより前からその人のものだったんだよね。たぶん」
「はい」
「なら、さっちゃんが沈めるなって言いたくなるの、分かる気がする」
刺さった。
深く。
俺は、この身体を使っている。
借りているのか、乗っ取っているのか、戻っているのか、混ざっているのかは分からない。
だが、この身体は、俺だけの都合で動く道具ではない。
篠宮怜子の生活がある。
仕事がある。
航との時間がある。
小早川に叱られてきた癖がある。
倒れやすい履歴も。
無理をする癖も。
俺が知らない疲労も。
たぶん、俺が知らない傷も。
「航」
「うん」
「怖くありませんか」
「何が?」
「私が、私ではないかもしれないこと」
言ってしまった。
部屋の空気が少し止まる。
航の手が、一瞬だけ強くなった。
目を逸らすかと思った。
逸らさなかった。
「怖いよ」
航は言った。
正直だった。
「怖い」
「はい」
「九月の時も怖かった。今も怖い。昨日みたいに病院で探すのも怖い。夢の話も怖い」
「はい」
「でも」
航は、俺の手を握ったまま続けた。
「怖いからって、見ないふりしたいわけじゃない」
胸が痛んだ。
「今ここにいるさっちゃんを、怖いから遠ざけたいとは思ってない」
「はい」
「それで十分かは分からないけど」
「はい」
「今の俺に言えるのは、それくらい」
十分だ。
そう言いたかった。
言えなかった。
十分かどうかなんて、俺にも分からない。
でも、その言葉で、少し浮いた。
水底から。
「だから」
航は言った。
「分からない時ほど、勝手に沈まないで」
「沈む」
「紙の中でも、水の底でも、病院でも」
「はい」
「俺に、探す場所くらいは教えて」
探す場所。
また、その言葉だった。
駅で見つからない。
病院で探す。
夢の底で探す。
俺はいつも、航に探させている。
「分かりました」
「うん」
「怖い夢を見たら言います」
「うん」
「篠宮怜子が出てきたら」
「うん」
「仕事の資料にせず、まず航に言います」
「そこ、わざわざ言う?」
「重要です」
「重要だけど」
航が少し笑った。
その笑いで、水が少し引いた気がした。
*
小早川から電話が来たのは、朝食の雑炊を食べている途中だった。
航が出る。
「はい、桐生です。……はい。微熱です。三十七度一分。食べています。……魘されていました。今は落ち着いています。……代わります」
報告が詳細すぎる。
俺は受話器を受け取った。
「はい、篠宮です」
『寝ていてください』
「寝たまま食べるのは難しいです」
『座っているなら可です』
「ありがとうございます」
『夢の話は航さんから概要だけ聞きました』
航が目を逸らした。
共有済みだった。
「社長室へ夢まで」
『体調情報です』
「はい」
『社長から伝言です』
「はい」
『水底から紙を拾うな。まず浮け』
社長。
的確すぎる。
そして遠慮がない。
『それから、身体からの苦情として受け取れ、とのことです』
「苦情」
『はい。かなり強めの苦情です』
「労務的ですね」
『労務です』
断言された。
『怜子さん』
「はい」
『夢の内容を分析しないでください』
「はい」
『少なくとも今日は』
「はい」
『書かないでください』
「……はい」
『今、間がありましたね』
「ありません」
『ありました』
電話なのに見抜かれる。
秘書課、恐ろしい。
『水を飲んで、薬を飲んで、寝てください』
「はい」
『階段は禁止継続です』
「はい」
『夢の中でも』
「そこまで」
『夢の中でもです』
「はい」
電話が切れた。
航がこちらを見る。
「夢の中でも階段禁止」
「はい」
「いいね」
「いいのですか」
「いい」
航は真顔だった。
どうやら夢の中でも禁止らしい。
*
昼前、航は仕事へ行く準備を始めた。
俺の枕元には、水。
薬。
体温計。
携帯。
固定電話の子機。
メモ帳は、昨日より少し近い机の端。
ただし、ペンは航の鞄の中。
信用が戻ったのか戻っていないのか、判断に迷う配置だった。
「夕方、電話する」
「はい」
「夢を見たら、起きた時にメール」
「はい」
「熱が上がったら固定」
「はい」
「水」
「飲みます」
「薬」
「飲みます」
「階段」
「使いません」
「夢の中でも?」
「使いません」
「よし」
完全に幼児確認である。
だが、不思議と昨日ほど恥ずかしくなかった。
確認されることは、探す場所を残すことなのだと、少し分かったからかもしれない。
「航」
「うん」
「行ってらっしゃい」
航が止まった。
ほんの一瞬。
それから、少しだけ笑った。
「行ってきます」
自然だった。
怖いくらい自然だった。
扉が閉まる。
部屋に静けさが戻る。
俺は布団へ戻った。
眠るのは少し怖かった。
また水底を彷徨うかもしれない。
篠宮怜子に会うかもしれない。
身体は沈みます、と言われるかもしれない。
でも、航の声もあった。
水の向こうから聞こえる声。
俺を探す場所を知っていたいと言った声。
なら、少しだけ眠れる。
たぶん。
*
夕方。
目が覚めると、美咲からメールが来ていた。
わた兄から聞いた。水の底こっわ!
でもサ、お兄が水面担当なら大丈夫じゃない?
さっちゃんはまず浮いて。
あ、階段禁止だよ? 美咲
水面担当。
航にまた妙な役職が増えた。
紙の帝国からの奪還担当。
ケーキ没収担当。
階段監視担当。
そして水面担当。
年下彼氏の職務範囲が広すぎる。
俺は返信した。
水面担当という役職は初耳です。
まず浮くよう努めます。
階段は禁止継続です。怜子
すぐ返る。
かたい。
でもよし。
浮いたら水飲んで寝て。みさき
水底の夢を見た人間に、水を飲んで寝ろと言う。
美咲が平仮名なのも含め、構図が少しおかしいしちょっとだけ、無防備。
だが、飲んだ。
偉い。
かなり偉い。
*
夜。
航が来た。
玄関の音で、俺は目を開けた。
「ただいま」
航が言った。
少しだけ、当たり前みたいに。
俺は布団の中から返した。
「おかえりなさい」
その言葉が、部屋にすんなり落ちた。
落ちすぎて、少し怖い。
航も、一瞬だけ黙った。
それから靴を脱いだ。
「熱は?」
「三十六度八分」
「下がった」
「はい」
「夢は?」
「昼は、沈みませんでした」
「そっか」
航は安心したように息を吐いた。
夕食は煮込みうどんだった。
粥、うどん、雑炊、またうどん。
炭水化物による社会復帰訓練である。
食後、航は鞄からペンを出した。
机の上のメモ帳をこちらへ寄せる。
「一行だけ」
「よろしいのですか」
「夢のこと。自分のこと。仕事の分析禁止」
「難しいですね」
「練習」
俺はペンを受け取った。
水底。
篠宮怜子。
身体は沈む。
航の声。
水面担当。
階段禁止。
書きたいことは多い。
でも、一行だけ。
俺は書いた。
水の底で紙を拾うより先に、呼ばれた声へ浮かなければならない。
航が覗く。
「一行?」
「一行です」
「仕事の分析?」
「ぎりぎり自分のことです」
「合格」
合格らしい。
俺はペンを置いた。
ちゃんと置いた。
航はそれを確認して、メモ帳を閉じた。
今日は、棚には戻さなかった。
机の端に置いたままだ。
「信用が少し戻りましたか」
「少し」
「少し」
「救急車一回分だから、回復も少しずつ」
「はい」
納得せざるを得ない。
*
寝る前。
航は今日も泊まることになった。
ソファに毛布。
俺は布団。
ただ、昨夜と少し違った。
航が「手、握る?」と聞く前に、俺は少しだけ手を出していた。
自分でも驚いた。
航も驚いた顔をした。
出したものは仕方ない。
「お願いします」
俺は言った。
航は静かに手を握った。
温かい。
水の夢が、少し遠くなる。
「航」
「うん」
「今朝、顔が近かったのは」
「うん」
「魘されていたからですよね」
聞いてしまった。
聞かなくてもよかったのかもしれない。
でも、聞いてしまった。
航は少しだけ黙った。
「最初は、そう」
最初は。
その言い方は、非常によろしくない。
「最初は?」
「呼吸が変で、熱もあるかと思って、起こそうか迷って覗き込んだ」
「はい」
「そのあと、起きるまで見てた」
「なぜ」
「怖かったから」
まっすぐだった。
「それだけですか」
口が勝手に動いた。
航の手が少し止まる。
俺も止まる。
何を聞いている。
微熱明け。
頭部打撲後。
足首固定。
強制休養中。
聞くことではない。
航は困ったように笑った。
「それだけ、って言ったら嘘かも」
心臓が変な動きをした。
「でも、さっちゃんが魘されてる時に、何かしようとしたわけじゃない」
「はい」
「ただ、起きた時に俺がいるって分かったら、少し安心するかなと思った」
その答えは、優しくて、危険だった。
魘されてたから覗き込まれていただけ。
そう思いたい。
そう思いたかった。
でも、それだけではなかったとしても。
今は、それでいいのかもしれない。
「安心しました」
俺は言った。
「少し」
「そっか」
「はい」
「じゃあ、寝て」
「はい」
「水底に行ったら?」
「まず浮きます」
「紙は?」
「拾いません」
「階段は?」
「使いません」
「夢の中でも?」
「使いません」
「よし」
航は笑った。
俺も少しだけ笑った。
目を閉じる。
仄暗い水の底は、まだ怖い。
篠宮怜子も、まだ怖い。
俺が誰なのか分からないことも、怖い。
だが、今夜は手がある。
声がある。
水面担当がいる。
かなり変な役職だ。
しかし、悪くない。
仄暗い水の底を彷徨う夢を見ていた。
目覚めたら、航に顔を覗き込まれていた。
魘されてたから覗き込まれていただけ。
そう思いたい。
でも、それだけではなかったとしても。
今夜は、怖くなかった。
少なくとも、ひとりで彷徨うよりは。




