第18話「大混乱」
ついに始まる、チャンピオンをかけた最終戦。
あの時の、永野のレース人生をかけた時とはまた違う緊張感が襲いかかる。
「ふーっ…大丈夫…大丈夫。」
すでにマシンに乗り込み、2位のグリッドから1コーナーを眺め、スタートしてすぐに永野の前に出ることをイメージしていた。
そして、1番のグリッドに止まっている永野のマシン。
「…頼むぞ。」
マシンのノーズコーンを触りながら今日の勝利を祈る。
スタート5分前。
マシンに乗っていなかったドライバーたちが乗り込む。
『よし、松下。まずは、第一にクルマを壊さずに走り切ること。いいな?』
「…了解。」
『いいな、永野、マシンだけは壊すなよ。松下は…まぁ、頑張れ。』
「…」返答はしない。うなずくだけ。
極限まで集中力を高める。
スタート3分前。
エンジン始動担当のスタッフ以外はみんなピットに戻っていく。
そして、メカニックたちがエンジン始動させる。
全車のエンジンに火が入る。
スタート1分前。
全スタッフが戻っていく。
完全に1人になった。
松下からは嫌でも永野の姿が見えていた。
「大丈夫。大丈夫。1コーナーで先行すればいいだけさ。」
フォーメーションラップが終わり、ホームストレートに再び、マシンが集結する。
レッドシグナルが一つずつ灯っていく。
瞬きを止め、シグナルに集中する。
5つすべてのレッドシグナルが灯った時、ふと、時が止まる。
シグナルが消える。
全車一斉にスタート。
チャンピオンを狙う2位スタートの松下はスタートダッシュに成功。
一方、永野はチャンピオンをかけたスタートに気負ってしまった。
2台の後ろでは大混乱。
エンジンストールした1台のマシンにさらに後続のマシンが激突。
それを避けようとしたマシンたちがさらに接触し、合計5台が絡む多重クラッシュに発展した。
『後続で多重クラッシュ発生!セーフティーカーが出動になる!』
「了解」
このクラッシュでDAMSの2台、PREMAの1台がリタイアとなった。
また、Invicta Racingの2台も接触に巻き込まれ、マシンの一部を破損。その修復のため、順位を大きく下げることになった。
・Invicta Racing、DAMS、PREMAの3チームのポイントランキングを上回ること
一番最初に出されたこの条件は実質達成されたといえる。
多重クラッシュの処理のため、赤旗中断の後、レースは再開。
レースは終盤戦へ。




