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異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


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嫌な報告



端末から発せられる電波を頼りに坑道を進むと、遠くの方で明かりが灯っている事を確認する。

だいぶ近づいてきたはずだし、もしかしたらと思って近づくと、端末を地面において、座った状態で静かに寝息を立てるエリスが、、、


いや何寝てんの? さっき襲われたばっかじゃん。見つけた時一瞬死んでのかと思ってビビったからな?



「おい、おいエリス、何寝てんだ起きろ。」



肩を揺らしながら声を掛けるとエリスはゆっくりと目を開く。目は不安そうに揺らぎ、そっと向けられる潤んだ瞳に非常時ながらもドキッとした。



「・・・綾人、か?」


「おう、何寝てんだお前は。」



呆れたようにそう返すと、肩においていた手をそっと握られる。本当に何があったのかわからず困惑していると、彼女は下を見て呟いた。



「・・・よかった、見つけてくれて。」


「・・・お、おう?」



なにそれ? あれ、こいつこんな寂しがるタイプだっけ?


1回似非鬼のときに暗い森を疾走してた気がするんだけどな。



・・・あぁ、あのときは歌奈ちゃんを助けるために必死でそこまで気がまわらなかったのか。



今は守る者も目的もない。ただただ暗闇に残されるというのは酷く精神を削られるものだ、、、。



・・・経験談だからなあ!!!



嫌なことを思い出して怒りながら立ち上がり、エリスに手を伸ばす。エリスはその手を取って立ち上がり、スカートについた埃を払って髪を直した。



「さてこれからどうする? 蛇紋とは連絡取れんのだろう?」


「あぁ、あいつは普通の端末だしな。でもここを改装しようとしてたくらいだし土地勘はあんだろ。ちなみに俺は飛ばされてないし帰り道も分かってはいる。あまり遠くまで飛ばされてなくて助かったよ。」



勿論だが俺は転移とか移動系の異能で飛ばされることはない。なので俺は必然的にその場に残されたわけだが、道標もなしに適当に歩くわけないわな。



「なら一度戻るか?」


「そうだな、また離れ離れにされても厄介だし一度帰ったほうがよさそうだよな。」


「では戻るか。」


「おう。」



俺なら移動はさせられない。イレギュラーな事態が起こってしまったし一度戻って態勢を整えたほうがいいと判断した。



「・・・それで、この手はいつ離してくれるんだ?」



そう言いながらエリスは立ち上がった際に繋いだままの手を軽く持ち上げる。俺は何言ってるかわからず首を傾げる。



「いやいや、手を繋いでないとまたさっきの二の舞になるだろ。俺の能無しは触ってないと効果ないから。」


「わかった!肩車で行こう!!」


「どっちが下でどっちが上だ? 片方を高負荷で動けなくする気かよ?」


「勿論私が下で構わん!」


「絵面的にキツイかな!」



てか今エリス軽くなってるんだし俺が下でも別に平気か。・・・坑道だけどね、頭多分削られるよ?



「嫌だとは思うけど我慢してくれよ。肩抱かれたり、腕組むよりはマシだろ?」


「ひゃぷっ!?」



なんかさっきからこいつ様子おかしいな。

もしかして偽物?、なわけないか、端末持ってたし、俺に変質や幻覚の類は効かないしね。



「ほら行くぞ、早く帰りたいし我慢しろよ。」


「・・・あぁ。」



あ、やっぱ嫌だったの?




ーーー




地上を目指して二人で仲良く手を繋ぎながら上を目指していると、前方に黒い霧が立ち込めているのが見えた。



「・・・なぁ綾人、あの霧はなんなのだ?」


「それが分かれば苦労しないんだがなぁ。」



ほんとに分かれば苦労しない。


怪物や異能生物なら相手できるが、ガチの幽霊だったら無理だなぁ、信じてないけど。



俺は黒い霧をだるそうに睨みながらエリスに話しかける。



「手を離すなよ? あれはたぶんお前には有害だから。」


「あぁ、もちろんだ。」



意を決して黒い霧に突っ込む。

形は変えず、纏わりつくように身体についてくるが特に身体に侵入してきたり、体調が悪くなったりはしない。


ただどうしても嫌悪感が拭えないので二人とも口を開かずに霧を抜けた。



「・・・ふぅ、身体に悪そうだな。」


「なぁ綾人、あの霧、ユーカに憑いていたのと同じ感覚がするぞ。」



エリスは背後の霧を注意深く観察しながらそう漏らす。

俺はその憑いていたものを認識できていないので同じなのかどうかはわからないが、エリスの感覚を信じるなら、、、



「ん?どういうことなんだ?」



つまり彼女はここに来ていた? それで黒い霧に憑かれた状態で逃げていて偶然俺とぶつかった?


でもそしたら理由は一体何なんだ?

こんな辺鄙な場所にある朽ちた坑道に一体何の用があるってんだ?



「鍵は閉めてあったのではないか?」


「・・・だよなぁ、うーん、この霧は何なんだよ。」



一度、分断される寸前に聞こえた【みづげだ!】と言う声。あれが怪物の声なのかは分からないが、もしそうなら元凶は怪物で断定できるんだけど、、、。



ーーガコッ



「おっ?」

「あっ。」



横にあった木の扉が外れて倒れるとそこから蛇紋が顔を出す。



「・・・仲いいな、お前さんら。」



仲良く手を繋いでる俺たちを見て蛇紋は呆れたようにそう呟く。エリスは慌てて手をブンブン振って離そうとしてるが、俺の説明聞いてなかったのかな?



「特に襲われたりはしなかったのか?」


「ん?まぁ特にはな。つーか、結構奥に飛ばされたんだが何もなかったぞ?」


「それはそうだよ、だってこれの原因はここにはないもの。」



3人で頭を悩ませていると、突然第三者の声が聞こえて飛び上がりそうになる。実際、エリスは距離取ってるしね。


俺は恐る恐る横を向くと、怪しく微笑む須木原さんが立っていた。



・・・え、こっわ、幽霊かな?



「・・・す、須木原殿?」


「え、殿って私男じゃないよ?」



須木原さんは自分を指さしながら「殿って私のこと?」って戸惑っている。そうなんだよね、エリスって目上と言うか知らない人にさんじゃなくて殿ってよくつけるよね。どんな翻訳されてんだろ?



「おおっ!? 超綺麗なお姉さんじゃねぇか!なんつー俺様好みの女性だよ! 是非付き合ってくれ!」


「いーけどまずは口座の共有からかな。」


「やったぜ!借金あるけどいいか!?」


「ふーん、そうなのかなー?」



喜色満面に喜んでいた蛇紋はそう返されると、少しだけ冷や汗をかいている。そして、徐々に腕を下げて目を気まずげに須木原さんから逸らした。



「お、おうぅ、そうだぜぇ。」


「じゃ、取り敢えず共有しよ?そうすれば付き合ってあげる。」


「ま、と、いっ、一旦は止めとくか。」



まさかの蛇紋が負けて引き下がった。

なに、そんなに口座になんかあんの?もしかしてホントはこいつ金あんのか?ぶっ飛ばすぞ。



「それで、須木原さん? 原因はないってどういう事ですか?てかこの現象について知ってんの?」


「んー、調査中かな? ここが関係してるのは確かなんだけど直接の原因はないって事。」


「・・・・・へ? よくわかんない。」


「たまたま居着いてしまったと言うことか?」



エリスがそう指摘すると須木原さんは笑いながら頷いた。


つまりこの謎の霧は洞窟にたまたま定着してしまっただけで別に発生したりはしてないのね。いったい何のために俺達ここにいるんだ?



「・・・じゃ、爆破するか。」


「おいおい、別に勝手住もうとしてただけだしいらねぇけど、爆弾がもったいねえだろ。」



関係ないなら爆破して隠滅しようと思ったのに蛇紋から反対された。


別にいらないならいいじゃーん。


仕方ないので爆弾のスイッチを取り出して蛇紋に返す。まぁ爆弾だってタダじゃないし、それなりに高いからな。



「でもじゃあどうすんの?」


「あー、そうそう、それを対策班にちょうど依頼しようと思っててね? 何か丁度いるし君たちに頼もっかな。」


「あ、こういうのは個人で受けちゃいけないって授業で習った。」


「私と君たちの仲だからokだよ。」



あっれ、俺達と須木原さんの仲ってそんな密接だったか?


てっきり仕事だけの仲かと、、、いや間違ってねぇな、仕事だけの仲だ。



「これの解決方法は簡単でね、異能者を何とかすればいいだけなんだ。」


「はっはー? めんどくせぇじゃねえか。」



よりによって怪物じゃなくて異能者かよ。


正直簡単に武力行使できる怪物と違って異能者のほうが調査とか時間かかるしぶっちゃけめんどい。



「俺様は取り敢えずこの坑道をどうにかしてぇだけなんだが、それならとっとと元凶とやらをなんとかしてくれや。」


「対異能者なら一朝一夕は無理だろ。それに情報も、、、」



そこまでいいかけて俺はピタッと動きをとめる。

俺にはこの異能に関して心当たりはない、でもエリスは黒い霧に憑かれた人物を見たと言っていた。


ぶつかってしまったユーカを思い出して考えを巡らせる、、、。



・・・どっちだ? 被害者か、関係者か、、、それとも元凶なのか、、、。



まだ答えはわからない。

しかし戻った後のやるべき事はきまったな、、、。




ーーー




2週間後、、、



あの後6番街での後処理を終え、俺達は対策班の事務所へと戻っていた。



「・・・あーー、進展ねぇなー。」


「仕方なかろう、リリカも忙しいからな。」



結局あれからユーカや黒い霧に関する情報は集まっていなかった。


リリカにはエリスから色々連絡取ってもらったが、彼女もガッツリユーカに関わったことがあるわけではないようで、満足した情報は得られないでいる。

強引に話を聞きに行ってもいいのだが、彼女が黒い霧とどういう風に関係しているのか分からない以上、下手に怪しまれるのは避けたい。



「ただリリカから『もしかしたらもう少しで話せるタイミング作れるかも!ちょっと待ってて!(゜ο゜人))』と言う一文が来ておったし、それを信じて待ってみてもよかろう。」



エリスはそう言いながら咥えていたストローから口を離して一息つき、俺は自分の肩を揉みながらパソコンをいじる。


戻ってきてからは割と平穏な時間が流れていた。


ちょくちょく異常があって調べに行ってるが5件中3件がただのいざこざと、勘違いだった。残りの2件は怪物だったのだが、レベル1が彷徨いていただけであっさり対処できたしね。


そんなわけで珍しく落ち着いた事務所で報告書を書いていると、首筋にとてつもない寒気が走り、すぐに机の下に隠れる。



そんな俺の様子にエリスは困惑し、帆哭さんは頷いてドアに向かって歩いていく。



「・・・おかえりなさい。」



帆哭さんが開けたドアの向こうには不機嫌そうな顔をした班長がコーヒーを飲みながら歩いてきていた。

班長は帆哭さんに上着を渡して自分の席である窓側の机と向かう。



「・・・・・悪い、コーヒーもらえるか?」


「飲んでいたのでは?」


「馬鹿苦いのを頼む。」



有無を言わせない雰囲気に帆哭さんはため息をつきながらコーヒーサーバーへ向かう。


俺は目をつけられないように全力で忙しいアピールをして事務所の空気と化す。



「よほど疲れておるようだが、何かあったのか、、、ですか?」



そんな敬語は存在しねぇ。


エリスの質問に対して班長は一度事務所内を見渡す。

すると急ぐような足音が聞こえて、事務所内に秋が飛び込んできた。



「10秒遅刻だ。」


「勘弁してくださいよ! むしろ車で30分かかるところを30秒で戻ってきただけ許してください!」


「・・・あ?」


「すみませんでした!」



あまりに理不尽な怒りに晒されている同僚を憐れみながら励ますように視線を送る。



「・・・とてつもなくいい笑顔だな。」



エリスの言葉を無視していると、班長の前にコーヒーが置かれ、ようやく全員が席に着いた。

わざわざ仕事中の秋も呼び出されたって事は間違いなく嫌な報告だろうなー。



「単刀直入に言うぞ、連中が動かそうとしてるのがわかった。レベル5侵略種だ。」



ウチの班長はコーヒーを啜りながらとんでもない爆弾を投下する。普段から飄々としている秋すら目を見開き、同じように帆哭さんも驚きに目を見張っていた。


エリスだけは首を傾げているけどね。



「・・・可能、なのですか?」



帆哭さんがか細く、否定してほしい願い込めて聞いたが、班長は疲れたように頷く。



「成功率は7割ってところだろうな。」


「は? 高すぎだろ。」



誰も倒せない、どうあがいても勝てない化け物をここまで誘導できる可能性が7割もあるなんて悪いニュースがすぎる。



「・・・取り敢えず侵略種が留まってる一番近くのボルドット国には告げ口してはおいた。今は慌てふためいて軍事力を掻き集めてるだろうな、その内極東にも支援要請が来るだろ。」


「でも狙いはここなんすよね? なら一番準備するのはここじゃないっすか?」


「いや、奴らの目的はこの国じゃない。超常災害を起こすことだ。」



言われて思い出す。

確かにカリアは去るときに3ヶ月後超常災害を起こすと言っていただけでこの国を狙うとは言ってなかった。・・・まぁ、起きちまえば国なんて関係なく終わるんだけどさ。



「・・・聞くだけで最悪の展開ですね。つまり私達が相手するのはグリーンパイソンと侵略種という組み合わせですか。」


「対するは対策局、勝ち目はほぼないね。」



頭を痛そうに押さえながら帆哭さんは首を振り、秋は笑うしかないとばかりに疲れた笑みを浮かべている。



「・・・各国と協力すればよいのではないか?」



エリスがおずおずと手を挙げてそう提案したが、班長はゆっくりと首を振った。



「それは無理だ、侵略種が動くとなればそれぞれの国はそれぞれで防備を固めるだろう。ちょっとの戦力くらいはよこすかもしれないが、まぁ微々たるものだろうな。」


「だが世界が終われば国は関係ないではないか。それこそ守るためでは?」


「全部が全部、裏もなく一致団結みんなで食い止めよう!って綺麗事でまとめられるほど、国ってのは一枚岩じゃない。特に遠い国とかはな、それは分かってるだろ?」



俺が淡々とそう言うと、エリスは何処か納得できるのか「うーん、」と唸っている。


『もし』を考えられなければ食い物にされるだけだ。

軍を派遣して国の自衛は?多くの兵を失ったあと国を維持できるのか?そもそも自国には来ないのではないか?何とかほかの国が食い止めてくれるのでは?


いろんな『もしも』を考えれば簡単に協力しますなんて言ってこないだろうね。



ま、だからこそ各国に対策局が存在してるんだけどさ。  


対策局だけは国境を気にせず災害に対して協力できる、と言うかそういう組織だしね。



「やっぱ戦力がたりませんよね。」


「取り敢えずこれからかき集められるだけ集めてくる。幸いまだカリアが提示した期限にはゆとりがある、その間にできることをしておくぞ。」



班長はそれだけ言って、話を終わりとばかりにコーヒーを煽って外に出た。

本当に報告だけだったんだな、と残された俺たちは顔を見合わせた。



「・・・・・ところで侵略種ってなんだ?」



その何とも言えない空気の中、エリスの戸惑ったような呟きが静かに響くのであった。



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