表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界少女と無能の現代異生活  作者: たんぽぽ3号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/57

侵略種



エリスはこの世界の脅威を知らない。


その怪物たちが身じろぎすれば、国は戦争をやめ、固唾を呑んで息を潜める。


その怪物たちが立ち上がれば、人々は祈り始め、明日を願う。


その怪物たちが歩みを進めれば、世界は絶望し、奇跡に望みをかける。



そんな異次元の怪物たち、それがレベル5



「では一度確認しましょうか。少し待ってくださいね。」



帆哭さんはそう言って棚から一冊のファイルを取り出し、エリスの横に座って彼女の前のパソコンをいじる。



「これが侵略種です。」



そこに映し出された画像には、1体の巨大なイタチのような風貌をした怪物が写っていた。


画質が荒く分かりづらいが、その体躯は黒く、目や口といった体の内部は赤く光っている。


ここに写された画像の侵略種は、()()()な森のような場所で悠然と歩いてるような格好をしていた。



「・・・確かに恐ろしい風貌をしておるが、これが世界を滅ぼしかねない怪物なのか?」



エリスはその画像からいまいちピンと来ないのか険しい顔をしている。確かに恐ろしげな見た目をしているが、それでもこれで世界を滅ぼせる可能性があると言われれば首を傾げてしまうね、、、。



「そうですね、確かに見た目ではそこまで脅威には見えません。むしろ班長のほうが怖く見えるくらいです。」



・・・帆哭さん? すごく失礼なこと言いませんでした今?


でも否定する気もないけどね。



「ただこの森に注目してください。」


「・・・森? ただの暗い森じゃ」


「いいえ、暗くはありません。黒い森です。」



そう言われてエリスは画面を注視する。

すると、わずかに陽の光に照らされている大地と影が端の方に見えた。



「これは、昼間か?」


「はい、侵略種とは個体の生物でなく多くの細菌のようなものが集まった群体生物です。真ん中の獣に見えるのはただの寄せ集めで実際は地面を侵食している黒いのも侵略種です。」



帆哭さんの説明にエリスは目を見開いた。



「そして侵略種は有機物を吸収して無限に増減が可能で、たった1μでも残っていれば復活します。」


「ま、まて、無限に増減ということはまさかその場から動かずに大地を侵食することも可能ということか?」


「ええ、可能でしょうね。今は何故か一つの森に留まっていますが、もしこの大地を食らい尽くそうと思えばいつでも実行は可能なはずです。」



説明しながら帆哭さんの眉間にしわが寄っていく。


それはそうだろう、班長からはそんな化け物が襲ってくるって言われたんだ。どうすればいいのか、止められるのか、不安はどんどんわき出てくる一方だろう。



「侵略種は高度の知能を有しています。そして視点と感覚を共有しているとされ、一つの細菌がまるで斥候のようにこちらの様子をうかがい、常に動きの裏をかいてきます。」


「小さな小さな軍隊を相手にするみたいなものだよね。」



もはや笑うしかないとばかりにケタケタと笑う秋と、顔を青褪めさせていくエリスが対照的だな。



「そんなの、、、どうするんだ、、、?」


「答えで言えば、どうしようもありません。ですのでやるべきことはグリーンパイソンが侵略種と接触する前にとめる。それが失敗したら倒すのは無理でも何とか意識をそらす方法を探すしかありませんね。」


「な、なら、こんなにのんびりしている場合じゃないではないか!」



エリスが慌てたように立ち上がるが、ほかのみんなは逆に落ち着いている。



「エリス、いくら俺たちが闇雲に動いても相手は深くで動いてる。見つけるのは困難だ。」


「でも止まっていたら何も得られないではないか。」


「えぇ、ですので対策局には専門の班が存在しています。収集班は情報収集の専門家で、彼らは広い網を常に張っています。」



彼らから依頼される仕事は比較的情報が揃いきっているので準備と対策がしやすく危険度も予測しやすい。


それでも予想外が起きるのが現実だけどね、それに精度も情報を集めた人によってまちまちだしグリーンパイソンが動いてることに気づいてもなかったぽいしね。



「ちなみに俺は須木原さんの情報を一番信用してない。」


「え、班長だろ?」


「あの人情報が集まりすぎて裏の裏の裏ばっかり考えてるんだよな。どれを守って捨てるのか、選ぶことが多すぎて簡単に情報を教えてくれないし、」


「綾人はどちらかと言うといじられてる感がつよいけどね。」



秋にそう笑いながら言われると腹立つが、若干そんな気もするので嫌な顔をしながらコーヒーを飲む。



「なら、待つしかないということか。」



エリスは何処か納得していなさそうだが、特に見つける手段も思いつかないようで、大人しく席に座り直した。


でも彼女の言ってることが間違ってるってことは一切ない。


確かに動かなければ情報は得られないという言葉通り、動けばそれなりの情報は手にはいるはずだ。


ならなぜ動かないのか、理由は至極単純でほかの事件は待っててくれないからだ。



「では秋くんは引き続き今の仕事を継続してください。そしてラクラットさんと名木田くんは沙耶香の仕事に本腰を入れてくださいね。」


「・・・いや、本腰を入れろって言われてもまだ直ぐには動けそうにないんすけど。」


「いえ、もうそろそろですよ。」



何がそろそろなのかわからず、俺とエリスは首を傾げる。すると、エリスのパソコンに何やらメッセージが届いたようなので、確認してもらうと、、、



「リリカから『この前番組で一緒になって、今度時間作れそう! でも対策局だって知られたくはないんだっけ?』と来ているな。」


「・・・タイミング良すぎるな。そうだ、って返しといてくれ。」



エリスが言われたとおりに返事を返して待つと、すぐに返信は返ってきた。



「『わかった! でもさすがに2人を同時に紹介するのは難しいからまずは友達を紹介したいってことでエリスちゃんだけこれる?』だそうだ。」


「あー、まぁ確かにいきなり二人も紹介されたら変に勘ぐられそうだもんな。リリカとユーカの間に影を落としたくないし、それが最善か。」



椅子の背もたれに体重を預けながら伸びをする。


リリカとユーカの関係性は知らないが、いきなり知らない男女を紹介されれば疑いが芽生えるだろう。


変な商法とかと思われるかもしれないし、まずは友達を紹介したいって言われてエリスを連れて行くくらいがちょうどいいか。



「・・・うまくやれる自信が全くないのだが。」


「別に最初は変に勘ぐらなくていい、マジで仲良くなろうと思うくらいの気軽さでいいから頼むよ。」



俺がそう言うと、エリスは不安そうな顔をしながらも「わかった。」と頷いてくれた。


よっしゃ!この間俺はゆっくりと休んで、、、!



「ではその間に名木田くんはこの仕事をお願いしますね。」




・・・知ってた。





ーーー




前に一度遊んだ時に待ち合わせた駅で再び集まることになった。


目印に謎のウネウネした銀時計を指定されたがこれは一体何なんだ? すごい見た目で若干気持ち悪いのだが、、、これが流行りなのか?


相変わらず殺到する視線を気にしないようにしながら端末をいじってリリカを待つ。

最近は暑くなってきたので今日はシャツに薄い上着を羽織り、ショートパンツを履いただけの簡単なスタイル。


息交う人々とあまり変わらない格好をしているはずなのに視線がすごくて鬱陶しいな。


すると、誰かが近づいてきた気配がしたので顔を上げた。



「やっほー。」


「・・・遅くないか?」



そこには爽やかな笑顔で手を振りながらこちらに歩いてくるリリカがいた。


この前のように帽子とマスクで変装しているが、シャツとジーンズといったシンプルながらもオシャレに着こなした彼女も視線を多く集めている。



「ごめんてー、電車が遅延しててさー、一応余裕もって出たつもりなんだよ?」



そう笑いながら手を合わせて謝るリリカの背に隠れた人影に気づき、軽く覗き込むと、その人物は少しビクッとしたあとゆっくり出てきた。



「ね、ねぇ、ここ人多すぎない?」



リリカと同じように帽子をかぶってはいるが、特にマスクはしてない少女は怯えたように辺りをキョロキョロしている。



「だって駅前だしね。別にそんな怯えなくても誰も取って食べたりしないよ? ・・・たぶん。」


「最後に不安になる言葉が聞こえた!」


「あっは! 冗談だって、ま、取って食べちゃいたいのは本当だけどねぇ?」



リリカはそう言って笑みを浮かべながら少女の頭を抱える。少女は慣れているのか嫌そうではあるが、あきらめたように暗い顔でその抱擁を受けていた。


その何処か諦めた様子に同情の視線を向けていたら、ギラリと目を光らせたリリカと目が合う。



「もっちろん、エリスちゃんもとびきりかわいいから安心してね!」


「一応褒め言葉として受け取っておくが、鬱陶しいから抱きつくな。」



今度はこちらに標的を決めて飛び込んできたリリカを片手で押さえる。流石に身長差はあってもこっちは鍛えてるからな。



「うぇーん、エリスちゃんが冷たい。」


「いいから行くぞ。さすがに視線が鬱陶しい。」



変に目立つ場所で騒いでしまったので周りの視線が殺到している。少女はさらに帽子を深くかぶってバレない様にしているが、リリカは特に気にしないで胸を張って「じゃあ行こっか?」と私たちを扇動して歩き出した。


その際横に並んだ少女を見る。


彼女も丁度こちらを見ていたのか、目が合うとすぐに逸らされてしまった。

幼さの残るその見たことのある顔は間違いなくユーカだったが、テレビで見る彼女はここまでオドオドしておらず、キリッとしていた印象だったのだが、、、?


まぁまだしっかり話したわけでもないしここからか。




ーーー




案内されたのはやっけに高いビルの屋上にあるカフェテラス。屋上なのに青い木と、色鮮やかな花々が外観を損なわないように配置され、店主のセンスがうかがえる。


どうやら会員制のカフェのようで一般のお客は利用できないらしい。どうやって会員になったのか知らんが、あまり人がいなくて開放感のあるここは素直に素晴らしいな。



「じゃ、自己紹介しよっか。私はリリカだよー。」


「適当だな、エリス・ル・ラクラットだ。初めまして。」


「わ、私は冬霧 夕歌 俳優業をさせてもらっててそこでは『ユーカ』っ名乗ってる。」


「うむ、知っているぞ、以前見させて貰った映画での演技は素晴らしかった。」


「ーー! ほんと!?う、うれしい、、、!」



ユーカは顔を赤くしながら嬉しそうにモジモジしている。


何とか初めの印象は悪くなさそうかな?


そう少し安心していると、ユーカはまだ少し赤い顔でチラチラこちらを覗き込むように見てくる。

さすがに居心地が悪く、説明を求めてリリカに視線を送った。



「あ、実は前に遊びに行った時の写真をユーカに見せたらユーカが『すっごい可愛い!私もあってみたい!』って言っててさー。」


「わぁーっ!なんで言うの!?」


「だって露骨にチラチラ見すぎだからだよー。」



ユーカはいじられて顔を真っ赤にし、リリカはその様子を面白がるようにケラケラ笑っている。


そこでふと気になる点があったので素直に聞いてみた。



「2人は前から知り合いなのか? すごい仲よさげに見えるのだが。」



すると2人は顔を見合わせる。



「初めて会ったのは2週間前くらいだよね?」


「そうだね、会ったときから距離感近くてドキドキした。」



・・・2週間前。となると、2人が会ったのは私がリリカに連絡を取ったあとか。


リリカに連絡したときは会ったことないと言っていたし、わざわざ会って友達になってくれたのか、、、。


うん、私には絶対にできない所業だな。



「ドキドキってなぁに?」


「い、いやそれは、、、だ、だって急に綺麗でスタイル抜群の陽キャが私に会いたいって来たら緊張、、、する!」


「あっはー、嬉しいなあ。」



確かに初手から距離感の詰め方が近しいし、さすがのコミュ力だと思う。

私も同じ状況になったら逃げ出しそうだしな。


実際よーくリリカを観察してみると、胸はデカくて腰は細い、まさに女子の理想の体型をしている。

ジロジロ見ていたらリリカはわざとらしく体を隠してイヤンとニヤニヤ笑った。



「・・・駄肉。」


「今結構ひどいこと言ったね!?」



少しカチンと来たので悪口を言うだけ言ってカフェオレを飲む。


カランと小気味のいい氷の音と爽やかな風が気持ちいいな。



「でも、えーと、ら、ラクラットさん?はすっごい綺麗な肌してるね。本当に人形みたい。」


「エリスでいい、、、。むぅ、昔からよくそう言われるが、生まれ持ったものだしあまりピンと来んな。」



よくそう褒められたが人形みたいと言われて喜べばいいのかよくわからない。そんな令嬢のように淑やかでもないし、何ともな。


すると、何か勘違いをしたのかユーカはあたふたする。



「あ、ご、ごめんね、嫌な言い方だった?」 


「む?そんな事ないぞ、褒められてるのは素直に嬉しいからな。」



そう言ってニコリと返すと、ユーカは飲んでいたフレッシュジュースを「ぐっ」と詰まらせそうになる。



「・・・やっぱエリスちゃんは凶器だよね。」


「隠し持ってはいるな。」



事実としてな?


それ以外は持っとらんぞ。


その隠し持ってると言う言葉にユーカがほんの僅かに動揺したのが見て取れた。ほんの僅か、本当に些細な変化だったがその変化を記憶しておく。


さすがにこの状況で追求するのも変だし、空気を悪くしたくない。取り敢えずは気にしないでおこう。



「てゆーかやっぱりユーカって面食いだよね?」


「あー、否定はしないかも。やっぱ綺麗な人を見ると見惚れるし、テンション上がる。」


「これで肌に気を使ってないっていうんだから嫉妬するよねぇ。」


「え、使ってないの!?」


「む?3食よく食べてよく寝てるぞ。」


「それ普通の人間だから。」


「いいなぁ、うらやましい。」



楽しそうき和気あいあいと、和やかな女子会は続く。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ