28 予選
予選当日。
タッパ、スーサ、そしてバッツは馬車に乗って、王都の森へと向かっていた。
馬車は荷馬車に近いものだ。
すぐに到着すると、バッツたちだけでなく、薄い板を持った御者も馬車から降りた。
「はい、どうも、今日はみなさんの審査委員をつとめます。ではさっそく始めましょうか。審査内容についてはさっきお話した通りです。きちんとブラック・ベアを倒す力があるのか、それを見せていただきます。では参りましょうか」
テキパキと話をするので、タッパが慌てて声をかけて、足を止めさせていた。
この人の言う通り、予選といってもそれほど力を見せなければならないものでもないらしい。
あくまで、ブラック・ベアを倒すこともできないのに参加したがる人、のような参加者を切り捨てるための日だというのだ。
「ではいいですか?」
審査員が言い、三人は森に入った。
「まず、タッパさん、スーサさんの二人ですね」
「はい。お願いします」
タッパは言った。
当然のごとく、バッツはタッパチームに入るのは断った。勝利を目指すという目的は一切なく、森に来たかっただけだからだ。
スーサが前、タッパが後ろでひとつの槍を持った。前後だが、スーサが左、タッパが右と左右に立っている。
そうして森を進む。審査員のうしろを、バッツもついていく。
すぐにブラック・ベアが現れた。
槍の前方をやや引き上げ、先端をブラック・ベアの喉に向ける。
腰を曲げて低く構えた。
走りだす。
ブラック・ベアは前足を振り上げる。
かまわず突っ込んでいき、前足が振り下ろされるのと同時にスーサが手を離して回避、タッパだけが直進して喉を突いた。
深々と、地面からえぐりあげるように突き刺さった。
タッパは手を離して槍から離れた。
ブラック・ベアが動きを止め、がくん、と膝が落ちる。
そのまま倒れ、体が霧のように消えていった。
「ほほう、なるほどなるほど、おもしろい」
審査員が板になにか書き込んでいる。
「いまのはどうなったんですか?」
バッツは言った。
「試行錯誤するうち、ブラック・ベアは、脳の後部を狙うと一撃死を狙えると気づいたんだ」
タッパが槍を拾った。
「後部?」
「人間でいえば、顎から斜め上に向かって脳の後ろ側を貫くと、命を奪える。まあ、命なんてものがあるとするならば、だが」
「へえ。あ、でも、外したら?」
「そんなのなんだって一緒だろうが。外さないようにするんだよ」
スーサは言った。
「やり方は本人たちの自由です。問題ないですね」
審査員は言った。
「じゃあ?」
「はい、合格です」
「よっしゃ!」
二人は拳を握った。
「こんなに、あっさり……!」
タッパがつぶやく。
「あっさりでもないと思いますけど」
バッツから見れば、一か八かにしか見えない。
しかしその道の人からすれば、違うのだろう。
ふと気づいた。
「あれって、なんですか」
二日前には見られなかったものがある。
杭だ。主に木の近くに、突き立てられているものがある。バッツの身長ほどの高さがあって、四角い柱だ。太さは太ももくらい。
目の高さくらいの位置に、魔法石のような、青白く光るものが埋められている。
「あれは中継用の魔道具ですね」
「中継?」
「ここでの様子を会場で映し出すのに使います」
「はあ」
言っていることがなにもわからなすぎて、バッツはそれ以上なにも質問をする気にならなかった。
タッパがなにか審査員に質問をしていたときだった。
10メートルくらい離れたところにブラック・ベアが現れた。
会話のじゃまになったらまずいと、バッツは早足で向かい、近づいてからブラック・ベアの動きを止めた。
持ってきていた剣がうっかり、ケースに入ったままだったので手こずったものの、なんとか仕留めて爪を回収した。
振り返ると、三人がこちらを見ていた。
「あ、ちょっとブラック・ベアが出てきたんで」
バッツは爪を見せた。
「えっ……、ああ、倒した、倒してましたね。ええ。え、いま、どうやって……? え、これ」
審査員は、見せられた爪と、よくわからない手際で倒されたブラック・ベアの光景に、手が止まっていた。
「じゃあ、僕はちょっとてきとうにうろついてますので……」
「ちょ、ちょっと待って!




