27 予定
「あ、どうも」
タッパとともに宿に向かうと、部屋にはスーサがいた。
ベッドが2つと小さなテーブルがひとつ、椅子がひとつという簡素な部屋だった。
だが荷物を置くスペースはしっかりある。やたら長いあれは槍だろうか。
「バッツだっけ? まあ入れよ」
スーサは言った。
「はい」
ドアを閉め、案内された椅子に座った。二人はそれぞれベッドに座る。
「お前、英雄学校に行ったんじゃないのかよ」
「ああ、なんか、ええと……。気に入らなかったので出てきました」
スーサが目を丸くする。
「気に入らないってお前……」
「あ、せっかく来たので大会には出ておこうかと思って」
そこまで聞いて、耐えきれないというようにタッパが吹き出した。
「ふっ。このスケール感は、おれたちには出せないな」
バッツには、その笑顔が妙に晴れやかに感じられた。
「あ、知ってます? ここの森って昼間もふつうに、というか出やすいんですよ、ブラック・ベア。もう行きました?」
「いや」
「ちょっとどんな感じなのか詳しく知りたくないですか? これから行きます? あ、いや、あんまりうろうろできないんだった」
バッツはひとりでしゃべる。
「うろうろできないとは?」
「英雄学校から勝手に出てきたんで、このへんをうろついてたら、怒られるかも」
「怒られるって……」
「3日後に始まるんでしたよね。この宿にいれば平気ですかね」
「そういうことなら、とりあえずその服は着替えろ」
「あっ」
バッツは自分の服を見た。
「お金はあります。ちょっと買ってきてもらえません?」
バッツは言いながら、一度は言ってみたいセリフだったのだと達成感を持っていた。
「かまわないが、大会は2日後だ」
「え?」
バッツは彼らの会話の記憶をたどる。
「予選、本戦、決勝と3日にわかれて行われるが、英雄学校の生徒は本戦からなんだろう」
「ああ、そういう」
「おれたちは到着したばかりなんだ。まだ森へは行ってない」
「そういえば、ずいぶん速いですね」
バッツは気づいた。最後に会ってから、あまり日が経っていない。
「お前と同じ馬車だろうよ」
スーサが得意げに言った。
「君の話を聞いて、ちょっと森の様子を見ておきたくなったな……」
タッパが言う。
「じゃあ行きましょう!」
「いや。予選前に行くことはできないはずだ」
「でも僕は行ってきましたよ?」
「英雄学校の生徒は別なんだろう」
「優遇かよ」
「というより、普段から行けるのだから、あまり制限をかける意味もないんだろう」
タッパはため息をついた。
「どちらにしても、あの馬車のあとだ。今日は休む。明日最終調整をして、予選に挑む」
「はい」
「あと、最後にきいておきたいんだが」
「はい?」
「バッツ君。おれたちのチームに入る気はないか?」
タッパは言った。




