23 第4枠
ホームルームが終わるとバッツは、席を生徒に囲まれていた。
ただの生徒ではない。大人顔負けの体格をした生徒たちがきびしい表情で見下ろしてくるのだから、たまらない。
「ブラック・ベアを倒す大会があるっていうのはもちろん知ってるよね」
リルラが言う。さっきまでより、ひとつひとつの文字をはっきり発声するような口調だった。
「はあ……」
「英雄学校からは、3枠、出られることになってるんだけど、君のために4枠目ができたんだよね。たったいま」
「へえ……」
「はあ、へえ、って……」
リルラはため息をついた。
「でもね、君が出られるって決まってるわけじゃないの。最低一回は、誰かの挑戦を受けないといけないのね?」
「挑戦?」
「そもそも他の枠も、最初は成績順に3枠が割り当てられて、それを、一日一回は誰かの挑戦を受けるっていう形で、維持されてるわけ。他にももいろいろ細かく決まってるけどまあいいわ。大事なのは、大会まであと3日あるけど、休養日含めると今日が枠確定の最終日ってわけ」
「はあ」
「といっても、もう他の3枠はもうだいたい決まってるの。挑戦したい人はして、実力差は決まってるからね」
「そこに、僕が来たということは」
「そう。みんながラストチャンス、君の枠を狙ってるわけ。で、誰にする? 君が選んでいいんだよ」
リルラは言った。
バッツは、迫ってきた生徒たちを見る。
生徒は20人と言っていただろうか。1チーム3人なら、7チームか。いやアースラとダジュのように2人の場合もあるのか?
そのうち3チーム決まっているなら9人除いて、残りは4チーム、12人ほどが、いまバッツを囲んでいることになる。
「そんなこと言われても……」
「それはそうだよね。じゃあくじ引きかなんかにしようか?」
リルラは、ふっと表情を明るくした。
「おいおいおい」
他の生徒が言う。
「この英雄学校で、くじ引きが公平なんてことがあったか?」
「操作できるじゃねえかよ」
「だから、くじ引きかなんか、って言ったでしょ? バッツ君にわかりやすいように言ってるの。理解できなかった?」
リルラがにらみつける。
「んだと?」
「なあに?」
「おい」
別の生徒が出てきた。
「バッツといったな。お前の能力を全員に言ってやろうか? 言われたくないよな? だったら、おれたちのチームに入れ」
思わぬことを言った。
「おれの名前はシグマだ。お前の能力は、もう知っている。ひとりでその能力、勝てるわけがないことはわかっているだろう? だがおれたちと組むなら話は別だ。どうだ? 仲間に入らないか?」
シグマは言った。
「仲間?」
「そうだ」
「2人チームなんですか?」
「3人チームだ」
「4人でもいいんですか?」
「大会に出る人数を調整すればいいだけだろう? 極端な話、5人でも10人でも組んで、3人選べばいいと思ってる。チーム全員がその場に立っていなければ達成感を得られないなんて、バカだろう」
「ええと……」
バッツは他の生徒を見るが、特に気分を害した様子はない。普段からこんな調子なのだろうか。
それと思った。くじのときと違って、他人の能力を知ることなんてできるわけがない、という意見が出てこない。
「ふん。パワー先生に泣きついて逃げるか?」
「……」
「いいから仲間になれ。それが一番だ」
「わたしが最初に話しかけたんだけど!」
「隣の席だからなんだってんだバカが」
「ああん?」
「おれたちとやろうぜ」
別の生徒が言った。
「訓練室を使うのはいつでも構わないんだ。授業中でもいい。そういうことになっている」
「勝手に入ってくんな!」
「そうだ!」
言い争いが遠く感じる。
僕はなにをしにきたのか、とバッツは考えていた。
よくわからない、とすぐ思った。
こんなにたくさんの生徒に詰め寄られ、さあ、さあと急かされている。
なんだかおかしい。
なにがおかしいんだろうか。
そうだ。人間同士の争いに参加しに来たわけではない。そんなものどうでもいい。
「お前はどうなんだ!」
シグマが言った
「はい?」
「さっさと決めろ! ここでは、決められない人間はいらないんだよ。前に進めないっていうことだからな!」
「うるさいなあ」
バッツが言うと、静かになった。
「あなたたちにとっての、前でしょう?」
「なに?」
「ええと、僕ができるのは、相手の動きをだいたい止めることですかね。だから、一対一ならブラック・ベアも倒せます」
「お前、なにを言っているんだ……?」
シグマがゆっくり言った。
「たしかに英雄学校でやっていく上で、お前の能力はいずれまわりに知られることにはなるだろう。だからこそ、それを有効活用できるのはいまだけなんだ。それをうまく使えば、おれたちでアースラたちの鼻をあかすことだって……」
バッツはシグマを指した。
「あなたたちと戦います。それで満足なんでしょ?」




