20 王都
「ついたよ」
馬車が止まった。
バッツが降りていって、揺れているような感覚を修正するように、地面をたしかめるように足踏みした。それから深呼吸。
まだ二日目の夕方だった。
トイレや馬、御者の交代で馬車から降りたことはあった。しかしほとんど馬車は止まることなく、猛烈な速さで走り続けた。途中、一般的な街道から外れて、一般的な使用はできないのではないかと思われる道を走っていることもあった。
食事はすこしずつとった。一気に食べると吐いてしまいそうだったからだ。パンや肉、野菜など一般的なものだった。主にパンにはさんで食べた。ダジュとアースラはなんでもないように食事をとっていたが。
バッツは立ちはだかる王都の壁を見上げる。
信じられないほど高い。20、いや30メートルあるだろうか。高すぎてよくわからない。
入口に門番が立っていて、壁の厚みも見える。そちらも、10メートルとはいわないが、相当の厚みがあるのではないか。
「車酔いはどうだい?」
ダジュとアースラが降りてきた。
「壁、すごいですね」
「ああ、過去にすごく大きな争いがあったんだ。特殊な魔道具も使われている壁でね。もし隕石で中の人間がすべて吹き飛んだとしても、壁は未来永劫残っているだろう、なんて言われてるくらいさ。さ、ぼくらはこのまま行こう。荷物は宿舎にお願いします」
御者は、馬車を門の中へ進めていった。今度はゆっくりとした歩みだった。
「彼はぼくらのお客さんです」
ダジュが門番に言うと、笑いながら、さっさと通れというようにジェスチャーした。
レンガ造りの通路を通る。馬車がすれ違うことすらできる幅で、高さも3メートルほどある。
入口のところに、上から降りてくる門と、通路を抜けたところにも開閉式の分厚い門が準備してあった。
門を抜けると真っ直ぐな通りと、その左右には建物がならんでいて人が歩いている。
人の数は多いが、人通りや、商店の数などはバッツが驚くほどではなかった。
むしろ素朴な印象すらある。
「身分証とか、見せないんですか?」
「この制服が身分証だよ」
ダジュは白い服の胸元に手をやった。到着間際になって着替えていたものだ。
「魔力の身分証とでもいうかな。それを感知しているんだ」
バッツは自分の制服を見た。
「それも特殊な糸を使ってるんじゃないかな。英雄教室だってそうだろう」
「一般生徒もですか?」
「そうだ、そうだったね!」
ダジュがパン、と手を叩いたので、通行人がすこし振り返った。
「いやあまったく驚きだよ、どういうことなのかまったくわからない」
「あ、そうだ。忘れてたんですけど、英雄学校の見学ってお金はかからないんですよね?」
「それはそうさ」
「それと、アルバイトってありますか? 滞在費の節約ができるならそうしたんですけど」
もっと人で大賑わいしているのかと思ったから簡単に考えていたが、もしかすると短期バイトをすぐ見つけるのは難しいのかもしれないと思い始めていた。
「あとやすい宿とか。見分け方は聞いてきたんですが」
バッツはビーンメモを取り出しながら、ダジュの表情に気づいた。
「すいません。よくわからないのに、来たいとだけ思ってしまって。無計画で」
「気にしなくていいよ」
ダジュは微笑んだ。
「それが大切なんだ。ぼくはそう思ってる。理由なんてあとづけだよ。それ、を見逃さないことが重要なんだ。まあ、ぼくも受け売りなんだけどね」
ダジュがおかしそうに笑う。
「宿はあるよ。いいところがね」




