18 出発前
「おーいバッツー」
夕方、下校していると後ろからビーンが戸惑ったような顔で走ってきた。
「あ、いなかったから先に帰ったんだけど」
「先生に呼ばれたんだよ。それより聞いたぞバッツ、お前ずっと来週休むんだって?」
「うん」
「どうしたんだよ。病気、じゃないよなあ」
ビーンはバッツの全身をじろじろ見た。
「ちょっと王都に行こうと思ってさ」
「王都? なにしに」
「それがさ」
「ああバッツ君!」
道の反対側で片手をあげていたのはダジュだった。横には巨大なリュックを背負ったアースラもいた。
にこやかにやってくる。
「ちょうどよかった。君の家に行ったところなんだよ。このあたりで薬草屋はひとつしかないと聞いてね。いろいろ貴重な品物を買い込ませてもらったよ」
「お買い上げありがとうございます」
「はは。そうだ、予定は決まったよ。明日、夜明け前に来てもらえるかい?」
「もう帰るんですか? だって……」
「目的は果たした。タッパ君とスーサ君の班は解散するそうだ」
「えっ?」
バッツは、決意に満ちたタッパたちの表情を思い出していた。
「彼らは英雄教室に呼び出されて、大会に出るのならいますぐ退学届を出すよう迫られたらしいんだ。それでね」
「でも」
「タッパ君本人というより、仲間たちかな。家庭の事情が大きかったみたいだね」
「無理矢理ですか?」
「そうも言えるね」
「平気なんですか」
「平気?」
「そうです。本気だったのは知ってるでしょう?」
「命がけだった」
「だったら」
「だったらなんだい? 大会で敗北感を味わうのがいいかい? 英雄学校で屈辱にまみれたほうがいいかい?」
「やってみなけりゃわからないでしょう」
「君は、まったく退学がこわくないみたいだけどね。普通はそうもいかないんだ」
「僕は退学にはならないですよ」
「なに?」
「一般生徒なので」
「は!?」
ダジュたちは宿にもどっていた。
「おいおい、出発は明日って言ってたぞ。っていうかどうなってんだ!? なんでバッツがあの人たちと王都に行くんだよ」
「片道おごってくれるって言うからさ」
「えーすげーなあ。おれも行ってみたいよ」
「頼んでみる?」
「嘘だよ。おやじに怒鳴られる。宿屋の仕事しろって」
「そうか」
「でさあバッツ、お前なにしに行くんだ?」
「ブラック・ベアを倒す大会に行くよ」
「ふーん。そういうの、そんなにおもしろいか?」
「ビーンはそういうの好きなんじゃないの?」
「やっぱ、人間同士の熱いぶつかり合いだろ! クマと戦ってんのなんか見て、おもしろいか?」
「やっぱ、そんなにおもしろいとか、思わないよな!」
「なんで嬉しそうなんだよ。あ、そうだ! 宿屋は変なところに泊まるなよ。いいか、王都の宿屋は種類が大きく3つに分けられるんだ……」
それからしばらくバッツは、ビーンによる宿屋選び講座を受けた。




