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18/32

18 出発前

「おーいバッツー」

 夕方、下校していると後ろからビーンが戸惑ったような顔で走ってきた。


「あ、いなかったから先に帰ったんだけど」

「先生に呼ばれたんだよ。それより聞いたぞバッツ、お前ずっと来週休むんだって?」

「うん」

「どうしたんだよ。病気、じゃないよなあ」

 ビーンはバッツの全身をじろじろ見た。


「ちょっと王都に行こうと思ってさ」

「王都? なにしに」

「それがさ」

「ああバッツ君!」


 道の反対側で片手をあげていたのはダジュだった。横には巨大なリュックを背負ったアースラもいた。

 にこやかにやってくる。


「ちょうどよかった。君の家に行ったところなんだよ。このあたりで薬草屋はひとつしかないと聞いてね。いろいろ貴重な品物を買い込ませてもらったよ」

「お買い上げありがとうございます」

「はは。そうだ、予定は決まったよ。明日、夜明け前に来てもらえるかい?」

「もう帰るんですか? だって……」

「目的は果たした。タッパ君とスーサ君の班は解散するそうだ」

「えっ?」


 バッツは、決意に満ちたタッパたちの表情を思い出していた。


「彼らは英雄教室に呼び出されて、大会に出るのならいますぐ退学届を出すよう迫られたらしいんだ。それでね」

「でも」

「タッパ君本人というより、仲間たちかな。家庭の事情が大きかったみたいだね」

「無理矢理ですか?」

「そうも言えるね」

「平気なんですか」

「平気?」

「そうです。本気だったのは知ってるでしょう?」

「命がけだった」

「だったら」

「だったらなんだい? 大会で敗北感を味わうのがいいかい? 英雄学校で屈辱にまみれたほうがいいかい?」

「やってみなけりゃわからないでしょう」

「君は、まったく退学がこわくないみたいだけどね。普通はそうもいかないんだ」

「僕は退学にはならないですよ」

「なに?」

「一般生徒なので」

「は!?」



 ダジュたちは宿にもどっていた。

「おいおい、出発は明日って言ってたぞ。っていうかどうなってんだ!? なんでバッツがあの人たちと王都に行くんだよ」

「片道おごってくれるって言うからさ」

「えーすげーなあ。おれも行ってみたいよ」

「頼んでみる?」

「嘘だよ。おやじに怒鳴られる。宿屋の仕事しろって」

「そうか」

「でさあバッツ、お前なにしに行くんだ?」

「ブラック・ベアを倒す大会に行くよ」

「ふーん。そういうの、そんなにおもしろいか?」

「ビーンはそういうの好きなんじゃないの?」

「やっぱ、人間同士の熱いぶつかり合いだろ! クマと戦ってんのなんか見て、おもしろいか?」

「やっぱ、そんなにおもしろいとか、思わないよな!」

「なんで嬉しそうなんだよ。あ、そうだ! 宿屋は変なところに泊まるなよ。いいか、王都の宿屋は種類が大きく3つに分けられるんだ……」

 それからしばらくバッツは、ビーンによる宿屋選び講座を受けた。

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