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第70話 殴りこみ

「罪深き転移者とその手勢め! 貴様らはこの王宮に一歩たりとも足を踏み入れさせん!」

「誰がこいつの手勢だ! 俺は魔王ゼクスだ!」


 そんなどうでもいい言い争いをしている間に、騎士たちはもっと増えていく……かと思いきや、せいぜい十人も集まったところで増えなくなってしまった。


「……思ったより少ないんですね?」

「……少ないですね。あの山城にほとんどの兵力を回してしまったのでしょう。無論、今ここに集まっているのが全員ではないでしょうが、王族の警備から離れられる者はほぼ今ここにいるかと」


 武器を構えてこちらを威嚇していた騎士の一人が、ハッとしたようにこちらを見た。


「……ケイン? ケインではないか! 転移者に殺されたのではなかったのか!?」

「ケインの後ろにいるのが転移者……! おのれ、高潔な騎士を洗脳して操るなど、許せん!! 騎士の誇りをなんだと思っているのか!!」


「またこれか」

「さっきもやったぞこの流れ」

「え? やったんですか?」


 呆れ顔の二人。私が知らないところで何をやっていたんだろう。


「転移者め! もはやその命一つでは償いきれんぞ! 国王陛下がその命を賭して転移者の居場所を突き止めたケイン卿の功績を称え、英雄として像まで建てたというのに! このような形で泥を塗るなど!」


「マジか」

「面白そうだ。あとで見に行こうぜ」

「いいですね。ぜひ見たいです」


 というか、ケインさんがいつ私の居場所を伝えたんだろうか。

 そして像は気になる。どこにあるんだろう。


「おいやめろ。いやそれより、俺は一体いつココロさんの居場所を伝えたんだ……?」


 ケインさん自身にも心当たりがないらしい。そんなことある?

 私は首をかしげてケインさんを見たが、ケインさんも同じように首をかしげていた。


「それはさておき、お前ら全員邪魔だ。さっさとそこどけ」


 返答を待たず、ゼクスさんが手を振った。

 凄まじい衝撃波が走り、騎士たちが文字通り吹き飛ぶ。ついでに王宮の壁には巨大な穴が開いた。


「じゃー入るか」

「むやみに王宮を壊すなと言っているだろうが!!!」

「お邪魔しまーす」


 ドラゴンたちは空で待機させ、私たちは堂々と王宮内へ侵入した。

 王都中がパニックになるだろうけど、今は構っていられない。


「とりあえず……魔法陣があった場所を探さないとですよね」

「そうだな。うろうろしてる間に爆破しちまったらまずいしな」


 それは勘弁してほしいので、急いで探すことにしよう。


「礼拝堂にあるって話でしたよね。礼拝堂ってどこにあるんですか?」

「どこにあるんだ?」


 私とゼクスさんがケインさんを見る。


「……お前がさっき壊した刻限の細塔の真下だ」

「はぁ!? 先に言えよ! 魔法陣の残滓が消し飛んでたらどうすんだ!」

「どこの誰が塔を壊して進むと思うんだ!!」

「しかもあの塔、壊れるの二回目ですよね……。魔法陣の残滓、まだ無事かな……」


 そんな話をしながら廊下を進む。

 当然、あちこちから騎士や魔導師が現れるのだが、それ以上に、


「ケイン卿! 目を覚ましてください!」

「くそっ、転移者め……あの誇り高いケイン卿になんて真似を!!」


 「洗脳された悲劇の騎士」という設定は、すでに王宮中に浸透したようだ。凄まじい早さ。

私は冷ややかな目で隣の「英雄」を見た。


「ケインさん、慕われてるんですね」

「……本当にすみません」


 ケインさんは眉間を押さえてうなだれる。


 まあ、出会った頃は彼も他の騎士たちと似たような反応をしていたのだから、皮肉のひとつも言いたくなる。


 さて、ここから礼拝堂はどうやって行くのかな。


 間違いなくこの王宮の間取りなど何ひとつ知らないゼクスさんが、なぜか先頭を堂々と歩いていく。王国の中枢をずかずかと踏み荒らしながら、私たちは礼拝堂を目指した。

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