表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
67/79

第67話 竜の息吹

 そのころ、上空で戦況をハラハラしながら見守っていた私とクロ。

 突如、クロの首にかけられた通信用の魔法石から、ゼクスさんの怒鳴り声が響いた。


『おいクロ! 下りてこい! 撤退だ!』

「え、撤退!? でも、この戦闘の中に下りられるものなの……?」


 思わず独り言が漏れたが、クロは冷静だった。

 私の方を振り返り、力強くこくりと頷いてみせる。いけるらしい。


 クロはいつも冷静だなぁ。安心する。


「……そっか。じゃあまかせるよ。よろしくね」


 私が覚悟を決めてその背にしがみついた瞬間、視界が真っ逆さまになった。

 凄まじい重力と共に急降下を開始するクロ。風圧で目が開けられず、私は必死にその背を掴んだ。


 地上では、王国軍の兵士たちが色めき立っている。


「黒いドラゴンが降りてきたぞ! 総攻撃だ!」

「……待て! あのドラゴンの背に、誰か乗っていないか……?」

「本当だ! 女だ! あれが転移者じゃないのか!!?」

「今だ! 今こそ王国を救うのだ! 転移者を仕留めろォ!!」


 まずい。完全にロックオンされた。

 そう思った瞬間、クロは突然降下をやめた。


 無数の兵士がこちらに突っ込んでくるのが見える。


「クロ、危ない——っ!」


 私の悲鳴をかき消すように、クロが大きく口を開いた。

 空気を一瞬で焼き尽くすほどの蒼い炎が放たれる。


「うわあああ! ドラゴンブレスだ!!」

「焼け死ぬぞ! 下がれ、下がれ!!」


 さっきまでの威勢はどこへやら。

 広範囲にばらまかれる炎に、王国軍は蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。


「……おお、誰もいなくなった」


 その隙を逃さず、クロは城門を目指して弾丸のように滑り込んだ。

 ようやく懐かしい庭の土を踏む。


「おせーぞお前ら! 何やってたんだよ!」


 待ち構えていたゼクスさんが指を弾くと、巨大な城門が勢いよく閉ざされた。

 どうやら私たちが最後だったらしい。庭には、外で戦っていたドラゴンたちも全員集合していた。


「……数人、入り込んだな」


 ケインさんが鋭い視線を向けた先には、勢い余って城内まで突っ込んできた数人の兵士がいた。

 だが、彼らは自分たちの置かれた状況を察し、ガタガタと震えている。


「放り出すか」


 ゼクスさんは彼らと目を合わせることすらしない。

 ゴミでも払うようにひょいと手を振ると、兵士たちの体はふわりと宙に浮き、そのまま城壁の外へと放り投げられた。


「ぎゃあああっ!?」

「ぐえっ……」


 門の外から情けないうめき声が聞こえてくる。

 ひとまずの安全を確認して、ケインさんがゼクスさんに向き直った。


「で、閉じこもったはいいが、ここからどうするんだ?」

「このまま放っておいても、諦め帰ってくれるとは思えませんし……」

「……」


 私とケインさんの言葉に、、ゼクスさんは顎に手を当てて考え込み始めた。

 沈黙が流れる。


 やがて、彼は何かが吹っ切れたように、いつもの不敵な笑顔で顔を上げた。


「……よし、決めた」

「何をです?」


 私が聞き返すと、ゼクスさんは楽しそうに口角を吊り上げ、高らかに空を指差した。


「この城にもそろそろ飽きてきたところだ! ココロ! ケイン! 今から王宮に引っ越すぜ!!」


「「はぁぁぁぁぁ!!???」」


 私とケインさんの絶叫が、包囲された城内に虚しく響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ