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第66話 勘違いと不死鳥

 門が開いた瞬間、私を乗せたクロが力強く地面を蹴った。


「うわっ!?」


 凄まじい風圧と共に、視界が一気に跳ね上がる。

 ぐんぐんと離れていく地面。クロは王国軍の攻撃が届かないであろう高度まで、一気に舞い上がった。


 眼下には蟻の群れのようにうごめく軍勢が広がっている。


「……すごい数。二人とも、大丈夫かな……」



 一方、地上——王国軍側。


「城からドラゴンが飛び出したぞ! 迎撃しろ!」

「ダメです、高度が高すぎます! 大砲も魔法も届きません!」

「おい! 今度は城門から人間が出てきたぞ! あれが転移者か!?」


 兵士の声に慌てて望遠鏡を覗き込んだ騎士団長が、目を見開く。


「いや、違う……男……? 黒いローブの男など、報告にはなかったぞ。一体何者だ……? それに、その後ろにいるのは……っ!!」

「あ、あれは! ケイン卿だ!」

「ケイン卿!! 転移者の手にかかったという話だったが、生きていたのか! よくぞご無事で!!」


 その時、先頭を歩くゼクスが軽く指先を振った。

 それだけで、最前線の兵士たちが木の葉のようにまとめて吹き飛ぶ。


 ケインは何もせず、ただその後ろを無言でついていく。


「ケイン卿!? やはり転移者に操られているのか!」

「ああ、なんということだ! あの高潔な騎士までも、転移者の卑劣な術にかかってしまうなんて……!」


 ついていってるだけのケインが、なぜかものすごく憐れまれている。

 当のケインはすでに説明を諦めており、遠い目で虚空を見つめていた。


「言いてぇことはいろいろあるけどよ。そもそも何でこいつらは、ココロがこの城にいることを知ってんだ? お前バラしてねーよな?」

「バラす隙なんてなかっただろうが。どうやったのかは知らないが、嗅ぎつけられたんだろう」

「まあそれしかねぇか」


 余裕の表情でサクサクと歩みを進める二人。

 対照的に、王国軍の騎士団長は額に冷や汗を浮かべていた。


「な、なんなのだあの魔導師は……! それに、元凶たる転移者は一体どこに隠れている!? あの『不死鳥の降臨(フェニックス・ライズ)』を再び放たれたら、軍が全滅してしまう……! 一刻も早く仕留めねばならぬというのに!」


 必死に軍を指揮しながら、苛立って独り言ちる騎士団長。


(あの火の鳥、そんな中二病みたいな名前があったのか……ゼクスが好きそうだ)


 ケインが内心で呆れた、その時。

 ゼクスの目が、カッと見開かれた。


「『不死鳥の降臨(フェニックス・ライズ)』……だと……?」

「? 何か心当たりがあるのか?」


 ケインが真剣な表情で振り返る。

 すると、ゼクスは悔しそうに拳を握りしめ、ワナワナと震え出した。


「花火から火の鳥を出すだけの魔法にそんなかっけー名前があったなんて……っ!! 俺が考えたことにできねーかな……!」

「お前がつけた名前じゃないのか。お前並みのネーミングセンスのやつが王宮にもいたんだな」


 呆れ果てるケインの言葉も、今のゼクスには届かない。


「『永劫の劫火エターナル・プロミネンス』……いや、『不死鳥天駆フェニックス・ドライブ』の方が響きがいいか? 不死鳥(フェニックス)は絶対入れたいよな……」

「おいバカ魔導師。くそダサい名前を考えるのは後にしろ。さっさと軍を追い払うんだろ」

「そうだった!!」

「はぁ……」


 ハッと我に返ったゼクスが、そのまま範囲攻撃魔法を展開する。

 凄まじい衝撃波が走り、周囲の兵士たちが一斉に宙を舞った。騎士団長もどこかへ吹き飛んだようだ。


 しかし、向かってくる王国軍の数は一向に減らない。

 倒しても倒しても、後ろから新しい兵士が湧き出し、後方からは絶え間なく魔法攻撃の雨が降ってくる。


「くそっ、キリがねぇ! どんだけ連れてきてんだよ!」

「この規模……ほぼ王国の全勢力だろうな。ここで確実に転移者を仕留める気なんだろう」

「これ全部相手にしてたら、さすがの俺も魔力がもたねぇぞ!」

「今更気づいたのか……」

「いったん撤退する!」

「はいはい」


 二人は背を向け、城門に向かって全力で駆け出す。

 その道中、ゼクスは懐から魔法石を取り出して怒鳴った。


「おいクロ! 下りてこい! 撤退だ! 他のドラゴンもだ! 総員、城に撤退!」

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― 新着の感想 ―
一気に読んで最新話に追いついてしまいましたので、一言お伝えしたくて書き込みます。 当初の話を聞いてもらえないもどかしい状況から好転してきたので、ここからどうなるのか続きが楽しみです。
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