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第48話 転移者と魔王と騎士

 ケインさんに簡単に城を案内し終えて、しばらくするとようやくゼクスさんが起きてきた。


「……はよ」

「あ、ゼクスさん。おはようございます」


 魔導書を片手に持ったゼクスさんはまだ眠そうだ。

 まあこの人は午前中はいつもこんな感じなので放っておこう。


 ゼクスさんはソファにドサリと寝転び、開いた魔導書を顔にのせてまた寝てしまった。


「転移……失礼しました、ココロさん。この人は一体何者なんですか?」


 転移者と言いかけただろうケインさんを睨みつければ、すぐに訂正された。


「えーと、この人はゼクスさんです。この城にいるドラゴン全員の飼い主さんです」

「主君と言え……」


 ゼクスさんが半分寝ながら文句を言ってきた。無視しておこう。


「あとは……魔法使いで、魔王だそうです」


 私がそう言うと、ケインさんは眉を寄せて首を傾げた。


「魔王……? なんですかそれは」

「え」


 なんですかそれは、とは?


 ま、まさか……。私はゼクスさんの方を振り返った。

 ゼクスさんはいつの間にか起き上がっていて、私と目が合うと視線を逸らした。


「魔王っていうの、嘘だったんですか!?」

「う、嘘じゃねえよ! 本当……になる予定だ! 魔王に! 国を手に入れたら魔王になるんだ!」

「つまり今は魔王じゃないってことですか!?」

「いいじゃねーか! これから本当になるんだから!!」


 ケインさんは私とゼクスさんの言い合いを呆れた様子で見ていたが、私はそれどころではない。


 初対面の時からドヤ顔で魔王だって言ってたくせに! あれも嘘か! 全くとんでもないペテン師だ。


 ケインさんがひとつ咳払いをした。


「つまり、この城のドラゴンを従えているのは転……ココロさんではないのですか?」

「違いますよ。ドラゴンたちとはけっこう仲良しですけどね」

「仲良し……? ドラゴンと??」


 ケインさんは目を丸くして静かになった。そういう顔をしていると猫みたいだと思う。

 私は気にせず続けた。


「あ、そうだ。ケインさんも掃除手伝ってくれませんか。最近はドラゴンたちにも手伝ってもらってるんですけど、やっぱり細かいところは人力じゃないと厳しくて……」

「ドラゴンに掃除を……?」

「手伝ってくれないと、いつまでたっても食材丸かじり生活から抜け出せません。ケインさんも例外なく食材をかじることになります」

「食材丸かじり…………?」


 ケインさんはただの猫を通り過ぎて宇宙猫になっていた。脳がパンクしたようだ。


「はい。そういう訳なので、これから掃除です」


 さて、時間も惜しい。私はいつまでたっても宇宙猫状態が解除されないケインさんを台所へと引きずって行った。

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