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第43話 料理

 最近、やっと台所の掃除に着手した。ひとまずは鍋一つと炉を一つ開放するのが目標だ。


 仲良くなった一部のドラゴンたちも手伝ってくれるようにはなったが、今のところは室内に入り込んだ蔦を少し燃やしてもらうくらいの作業しか頼んでいない。


 ドラゴンはけっこうおおざっぱだ。

 この間ドラゴンに魔法石を使って水を出してもらったら、部屋が洪水になった。掃除に応用するのは難しいかもしれない。


 そんなことを、私の休憩中にゼクスさんに話していた。


「台所の掃除が思いのほか大変なんですよね。なんとか鍋一つはある程度綺麗にしたんですけど」

「料理なんて、俺が魔法で一瞬でやってやるぜ!」


 ゼクスさんは自信満々に言い切った。


「できるんですか?」

「できるに決まってんだろ!」


 不安しかない。まあ食材はゼクスさん持ちだからいいかな……? 出どころは知らないけど。

 ……食料の出どころ、そういえば知らないな。


「ところで、この城の食料ってどこから調達しているんですか? ゼクスさんも買い物とかには行ってないですよね?」

「ああ。このあたりの領主邸にある食糧庫の見えづらい場所に、小さい移動魔法陣をいくつか置いてる。気づかないでそれに食料を乗っけると、うちの食糧庫にワープすんだ! すげーだろ!」


 ゼクスさんはドヤ顔で言っているが、それは普通に窃盗では。


 だから食料を買いに行った様子もないのに、食糧庫の中がちょくちょく増えていたのか。

 その内容も毎回安定しない。同じものがいくつも増えていたり、全く使い道の分からないスパイスがあったりした理由がようやくわかった。


「気づかれないものなんですかね?」

「領主邸の食糧庫なんてでかいから、ちょっと抜いたくらいじゃ気づかないんじゃね?」


 そういうものか? ゼクスさんは興味もなさそうだけど。

 ……まあいいや。どっちにしろ、食料がないのは困るし。これから国家転覆しようとしてる人に、窃盗をとがめるのも変な話だろう。

 その食料を食べてここで生活している以上、私も共犯者だしね。


 それはさておき。


「……まあいいや。それよりゼクスさん、本当に料理できるんですか? ちなみにキッチンはまだ全く使えないですけど」

「できる! やったことねーけど!」

「そうですか~」


 やったこともないのによくそこまで自信をもって言い切れるなぁ。

 間違いなくできないと思うけど、面白そうだからやってもらおうかな。


「じゃあお願いします」

「まかせとけ!」



 ドカンッ!!!


 城の台所で大きな爆発が起きた。

 こんなことになるだろうと思い、さっさと隣の部屋に避難していた私は無事だった。


 爆発音がやんだので、台所に顔を出してみる。


 床には爆発の残骸と焦げ跡、飛び散った謎の破片、黒焦げの鍋。


「あっはははははは!! すっごいことになりましたね!」

「……」

「あははははは!!!」


 私はお腹を抱えて笑った。


 もう一つ、床には爆発の衝撃で吹っ飛んだ、あちこちが焦げたゼクスさんが膝を抱えた姿勢で転がっていた。

 不貞腐れているらしい。


 ゼクスさんは転がったままこちらを睨みつけてくるが、それすら面白くて私は笑いが止まらない。


「あーおもしろかった!」

「……」


 この世界に来てから、こんなに笑ったのは初めてだ。

 王宮にいたころは、この世界でここまで笑えることがあるなんて思ってもみなかった。

 それもこれも、ゼクスさんのおかげだ。はっきりと言葉で伝える気にはならないけれど、それでも感謝している。


「はぁ、笑った笑った。面白いものを見せてもらったお礼に、キッチンの掃除が終わったら、私が料理を作りますね」

「……」


 私が皮肉交じりに言うと、ゼクスさんは膝を抱えたまま反対側を向いた。本格的に拗ねたようだ。


 さて、片づけをしようか。


「片づけは手伝ってくださいね」

「…………しかたねぇな」


 ゼクスさんはのっそりと立ち上がった。


 盛大に焦げて穴が開いた服に、また笑いがこみ上げてくるががんばって抑えた。

 これ以上拗ねたら手伝ってもらえなくなりそうだ。

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