第40話 生活改善
自分の部屋はもうあらかた片付いたので、最近は別の部屋や廊下の掃除に着手していた。
ひとまずは台所やお風呂など、いち早く使いたい範囲だけでもなんとかきれいにしていきたいところだ。
そこで私は思いついた。
「ゼクスさん。魔法石って私が使わせてもらっても大丈夫ですか?」
「別にそれはいーけど。何に使うんだよ?」
そう。ここには魔法石があるのだ。魔法石さえあれば、魔法使いでなくても魔法が使えるって王宮騎士のケインさんが言っていた……気がする。たしか。
ゼクスさんは大量に魔法石を持っているし、簡単に作れるとも言っていた。
ならばぜひ、掃除に利用させてもらおうではないか!
「お城の掃除に使えないかと思いまして……」
「ふーん? 別にいいぜ。ほい」
「うわっ」
ゼクスさんはローブの裏からゴソゴソと黄色い魔法石を取り出したかと思うと、そのままポイっと放り投げてきた。
私は慌てて両手で魔法石を受け止める。
危ないなぁ。そこまで高価ではないとはいえ、ガラスでできているんだから床に落としたら割れてしまうだろう。
「ここでちょっと使ってみろ。城をぶっ壊されたらたまんねぇからな。練習だ」
この前城を壊したのはゼクスさんじゃん、なんてツッコむ気も起きなかった。
自分自身で魔法を使えるという事実に、私のテンションは最高潮になっていたからだ。
ふおおおお! これで私も魔法使いだ!!!
*
結論。
魔法、使えない。
「へったくそ。ドラゴンに魔法石を使わせた方がまだマシだぜ」
私がゼクスさんに言われた通りに魔法石に力を込めても、魔法石は全く反応しなかった。ただのガラス玉のようだ。
私は地面に両手をついた。
まさか、魔法がこんなに難しいなんて……ゼクスさんは魔王で魔法使いだから例外としても、ケインさんだって簡単そうにやってたじゃん……。
「お前、才能ないな~。魔法使いじゃなくても、ここまで下手なやつは珍しいぞ」
「…………」
そこまで言わなくても……っていうか、ドラゴンに魔法石を使わせる?
「ドラゴンも魔法石を使えるんですか?」
「少しはできる。ドラゴンの首につけてある通信用の魔法石だって、ドラゴン自身で使ってるしな」
「へぇ……じゃあ、ドラゴンに掃除を手伝ってもらえば解決ってことですかね?」
私が深く考えずに言った言葉に、ゼクスさんは固まった。
「……魔物の頂点に立つドラゴンを掃除に使おうなんて、そんなこと考えるのは世界中探してもお前くらいだぜ。多分嫌がってやりたがらねぇだろうけどな」
ドン引き、とでも言いたげな顔だ。
失礼な。別に嫌がっているドラゴンに無理やり掃除をさせたりしない。ただ、有志で手伝ってくれる子を募集しようと思っただけなのに。
でも、それが無理ならば仕方ない。
「じゃあ無理かー……」
一旦は諦めるしかないらしい。ドラゴンたちと仲良くなれたら頼んでみようかな。
「掃除だけじゃなくて、料理とかでも便利だと思ったんだけどな。そろそろ食材丸かじり生活を卒業したい……」
「何贅沢なこと言ってんだ。だいたいのモンはそのまま食えるだろ」
「文明的な生活がしたい……」
私は遠い目になった。
そう。なんと今、台所が使えないため食材丸かじり生活だ。そして、ゼクスさんがそのことに全く不満を持っていないため、何も解消される見込みがない。
ゼクスさんはここに住み始めてから、ずっとその生活をしていたからもう慣れたとのことだ。私はこの短期間ですでに嫌になっているのに。
でも、私が台所と食器と調理道具の掃除を終えない限りはずっとこのままだ。先が思いやられる。
「細けぇこと気にすんなよ。テキトーにやろうぜ」
ゼクスさんはからからと笑った。
……やっぱり何とかして、ドラゴンたちに手伝ってもらえるように頼んだ方がいいかもしれない。




