表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/61

第34話 ドラゴン2

 今日も今日とて使用人のお仕事。

 麗らかないい天気の中、私はもう一人の使用人のおばちゃんと二人で洗濯をしていた。

 もちろん外での作業だが、気温が暖かいから手に当たる冷たい水が気持ちいい。


「ココロちゃーん! 私そろそろお夕飯の仕込みをしなきゃいけないから、残りの洗濯は任せてもいいかしら?」

「全然大丈夫ですよ! 行っちゃってください」

「ありがとう~。じゃあ、よろしくね」

「はーい」


 私は笑顔でおばちゃんを見送った。


 さて、私は残った洗濯をやらなければ。

 とはいえ、二人でやっていたからもうほとんど終わっている。すぐに終わるだろう。終わったら私も夕飯づくりを手伝わなければ。


 洗濯物とむきあうためにしゃがみこんだ。その瞬間。


 ドカーーーン!!


 いつだかと同じように、空から黒いドラゴンが降ってきた。

 洗濯物が勢いよくひっくり返る。たらいの水が地面に広がって私の足を濡らした。


 私が驚いて固まっていると、ドラゴンはこちらを見てしゃべりだした。


「や、やっと見つけた……おめーはどこまで逃げてんだ……探すのめちゃくちゃ大変だったじゃねぇかよ……」

「え」


 王宮から逃げ出した、あの時と同じ声。同じドラゴンだ。


 ドラゴンは前足と頭を下げて、かがむような姿勢を取った。

 ?? 急にどうしたんだろう。


「おいお前。なにぼさっとしてんだ。さっさと乗れ」

「え、ドラゴンに、ですか」

「他に何があんだよ」

「な、なんで」


 なんで私がドラゴンに乗らなきゃいけないの!? なんで急にそんな話に!!?

 全く訳が分からない。

 頭に大量に「?」マークを浮かべた私に、ドラゴンはイラついたような声を出した。


「長々とこんなとこにいるわけにいかねーんだよ。いいから早くしろ」

「の、乗ってどうするんです……?」

「さっさとしろっつってんだ!」

「うわっ!?」


 ドラゴンは私の襟首をくわえて放り投げた。投げられた私は少しのあいだ宙を舞い、ドラゴンのごつごつとした背中に落ちる。


「つかまれよ。落ちるぜ」

「えぇっ!!?」


 反射的にドラゴンの首に腕を回す。

 ドラゴンはばさり、と翼を力強く動かした。その衝撃で、周囲の木々がおおきくざわめいて揺れる。

 私は腕に力を込めた。そして全身に大きな衝撃が来たと思ったときには、もうドラゴンは飛び立っていた。


 あっという間に地面が遠ざかる。

 もう町の家々が人形の家のように小さく見えた。


「え、え、飛んでる!!?」

「そりゃ飛ぶだろ」


 私の混乱に、呆れたような声で応えるドラゴン。

 下を見てわかる高さと、周囲を吹き抜ける風の強さに、私の喉がヒュッと音を立てた。回した腕に、さらに力が入る。


 ドラゴンはひたすらまっすぐに飛び続けた。


 っていうか! これ! いつまで続くの!!? そもそもどこに行くの!!??


「あ、あの! 今どこに向かってるんですか!?」

「すぐにわかる!」


 そのまま、辺境の町からはるか彼方に見えていた山まで飛んで来てしまった。さっきまでいた町はもうどこにも見えず、眼下には緑ばかりが広がっている。


「もう着くぞ」


 ドラゴンの声に私が顔を上げると、小さく建物が見えた。だんだんと近づき、その輪郭がはっきりしてくる。

 城のようだ。あちこちが崩れている、大部分が蔦に覆われた城が見えてきた。見たところ、廃墟のようだ。


 ドラゴンは城門の前まで行って着地した。

 私はドラゴンの背に手をのせて、ゆっくりと下りる。

 地面に立つと、平衡感覚がおかしくて、足がふらふらとした。そのままよろけて石でできた門の柱に手をつく。


 そんないろいろと限界な状態の私を放って、ドラゴンはさっさと門をくぐっていった。


「さっさと入れ」

「は、はい」


 私は何とか足を動かしてドラゴンについていく。

 荒れた庭を通り、ドラゴンに促されるまま、鍵のかかっていない玄関から城の中に入った。


 城の中はやはり廃墟と言った様子で、埃と蜘蛛の巣だらけ。たまにがれきやガラスの破片もころがっているような有様だった。


 一体、私は何でこんなところを歩いてるの……


 ちらりとドラゴンを見上げても、ドラゴンはひたすら前をみて歩みを進めるだけだ。

 そうしている間に、どんどん城の奥へと入っていく。

 どこまで行くんだろう、と思っていると、ドラゴンは一つの扉の前でピタリと止まり、座り込んだ。


 え、何。ここからどうしたらいいの。開けたらいいの?


 私はドラゴンと扉を交互に見るが、ドラゴンはうんともすんとも言わない。


 そしてしびれを切らした私がドアノブに手をかけようとしたとき、扉はギィッと音を立ててひとりでに奥へと開いた。


 部屋の中は思いのほか明るかった。

 明かりがついているわけではなく、天井に穴が開いている。壁にもヒビが入っていた。


 扉の正面の壁際に、大きな椅子が置かれている以外は何もない部屋だ。


 天井から差し込む光が逆光になって見づらいが、よく見るとその椅子には男が座っていた。

 いや、少年と言った方が正確かもしれない。背は低そうだ。


 私の隣にいたドラゴンが、さっさと部屋に入り、少年の斜め後ろに座る。

 それを確認して少年は口を開いた。


「よく来たな、転移者」


 少年は不敵な笑みを浮かべ、こちらを見ている。



「俺は魔王ゼクス! お前、魔王の右腕になれ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ