第15話 夜の散歩
月が高く上る前にベッドに潜り、私は静かに天蓋を眺めていた。
今更ながら、本当に今更な話だが、私は気づいてしまった。いや、本当はずっと気づいていたけれど、気づかないふりができていた、の方が正しいのかもしれない。
ルークさんだけじゃない。他の人もみんな同じだ。
彼のように表立って分かりやすく敵意を向けてくることはないけれど、ふとした瞬間、冷たさのようなものを感じる。そんなことは、これまでに結構な回数あった。
部屋でプレゼントの整理をしているとき、メイドさんたちに混ざって掃除をしているとき、何ならただ廊下を歩いているときでさえも。ああ、そういえば王子様もそうだったな。
気づいてしまったら、急に何だか落ち着かなくて眠れない。
……気晴らしに、ちょっと廊下でも歩いてこようかな。少し動けば寝られるかもしれないし。
ベッドから降りて部屋の扉を開くと、すぐに護衛騎士と目が合った。ロックスさんとケインさんだ。今日の夜番にルークさんはいないらしい。……よかった。良くないことだと思いつつも、少しほっとして息をつく。
「すみません、ちょっと眠れなくて。その辺を歩くだけでいいんですけど……」
「もちろん構いませんよ。行きましょう」
ロックスさんがそう言って笑ってくれた。
ありがたいけど、本当のところはこの二人も私のことをどう思っているのかは分からない。だから本当はあんまり彼らの仕事を増やすような行動はしたくないんだけど、このくらいは許してほしい。
夜中ということもあって廊下には誰もいない。壁に備え付けられた魔法の照明だけがぼんやりと青白く、廊下と私たちを照らしている。
ふらふらと行先も考えずに歩いていたら、こんな時間なのにざわざわと人の声が聞こえる場所に出た。声の方向を見ると、一つの部屋だけは煌々と明かりがついているようで、扉の隙間から光が漏れ出していた。
こんな時間に何をやっているんだろう。
別にそこまで気になるわけでもないが、なんとなく暇つぶしがてら聞いてみようか、と私が口を開きかけたとき、
「ここは使用人たちのエリアですね。まだ仕事をしているようです。そろそろ戻りましょうか」
斜め後ろにいたはずのケインさんが私の視界を遮るように立ちふさがり、有無を言わせない声色で言った。
……どうやら私はこの先に行ってはいけないらしい。
そんな彼の意図には少しも気づかなかったふりをして、私は「そうですね」と聞き分けのいい子を装い、口角をひき上げた。




