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第14話 魔法石

 今日も今日とてプレゼントの開封。

 ソフィアさんを筆頭に、他のメイドさんたちとも協力して開封作業をしているが、開けても開けてもすぐに次が届いて、一向に無くなる気配を見せない。


 終わりの見えない開封作業にしびれを切らしたのか、メイドさんが私の部屋の前にいたロックスさんとケインさんまで引っ張ってきた。私の護衛という名目で暇をしていた彼らは、特に渋ることもなく手伝ってくれた。


 そんな中、ソフィアさんがふと思いついたように言った。


「転移者様。転移者様が元々いらっしゃった世界でも、このような贈り物はよくされていたのでしょうか?」

「そんなわけないじゃないですか……こんなにいろんな人にあれこれもらうのなんて人生で初めてですよ……それもこんなに高価なものばっかり」


 私はたった今開封した箱の中にある大きな宝石を見て眉をひそめた。

 だが、その宝石を見たケインさんが驚いた声をあげた。


「それは魔法石ですよ! さすが転移者様。ずいぶんすごいものを贈ってくる方もいるんですねぇ」


 また魔法石か。


「あの、昨日王子殿下にも魔法石を贈ったって言われたんですけど、魔法石って何なんですか?」

「あれ、ご存じありませんでしたか。魔法石は魔力が込められた宝石ですよ。単純でしょう? 要するに、これがあれば魔導師でなくてもだれでも魔法が使えるんです。まあ、宝石に込められた魔力が切れるまでの使いきりですけどね」

「へぇ……便利なものなんですね」

「うーん、どちらかというと便利というよりは、権威付けの意味合いの方が大きいですね。なにせ普通の宝石よりもずっと高価ですから、貴族でもおいそれと買えるものではないんですよ」


 そんなにすごいものだったのか。とんでもないものを断りもなく贈ってこないでほしい。

 そんなものが今私の手のひらにのっている現実から目を背けたくて話をそらす。


「そ、そうなんですね。そういえば魔法って、どういうことができるんでしょう」

「ああ、たしか転移者様の世界に魔法はないんですよね。そうですね、例えば——ロックス!」

「なんだ?」


 ケインさんが声をかけると、開封済の箱を片っ端からつぶす作業をしていたロックスさんがこちらを振り向いた。

 そしてケインさんはいつの間にか手に取っていた魔法石をロックスさんに向ける。


 すると魔法石から大きな風がゴウッと吹き出し、ロックスさんが整理して積み上げていた空箱を部屋の四方に吹き飛ばした。

 風はすぐに収まり、飛んだ空箱はパタパタと床に落ちた。


「……ケイン」


 ロックスさんが低い声を出すが、ケインさんは気にした様子はない。


「……とまあ、魔法はこんな感じです。これ以外にも、わりといろんなことができますよ。他には……魔法石に話しかけると、遠くにいる他の魔法石や魔術師と話ができる、みたいなのとか——」

「ああ、電話みたいな感じですかね」

「デンワ? ってなんです?」


 ケインさんが首を傾げた。

 あ、この世界に電話はないのか。まあ世界観的になさそうではあるよね。


「えーっと、魔法石を通じて話せるのと同じようなことができる機械です。遠くにいる人が持っている電話と話ができるんですよ」


 私も構造とかよくわかってないから、雑な説明になってしまった。これで伝わるんだろうか。

 心配になっていると、ソフィアさんが真剣な顔でこちらを見ていた。


「……転移者様もその機械をお持ちなのですか?」

「え、はい。持ってますけど、この世界では同じものを他に持っている人がいないので、話はできないですね」

「世界を超えて話をすることはできないのですね」

「それは流石に無理ですよ。電波が……ええと、繋がるための条件みたいなものが満たせないので」

「そうですか。転移者様のスキルで動かすことはできないのですか?」


 部屋が急に静かになった気がした。部屋のあちこちから視線を感じる。


「……私は何のスキルもないので、そんなことはできないですよ」


 いつものようにそう答えて、愛想笑いを浮かべた。ソフィアさんは「そうですか」とだけ言って、まだ開けていない手元の箱に視線を戻した。

 そしてみんな静かにそれぞれの作業を再開し、部屋はすぐに元の音を取り戻した。

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