第13話 王子さまは突然に
ものすごく大きい豪華な部屋。そしてやたらと長いテーブル。
その端っこと反対側の端っこに、私と王子様がそれぞれ座った。そしてほかの席は全部空席。
そう。まさかの二人だけでの夕食会です。もちろん、部屋の端に使用人さんや護衛の騎士さんたちはいるけどね。
王子様は挨拶もそこそこに、唐突に話を切り出した。
「僕からの贈り物は気に入ってもらえたかな?」
「えーーーーっと、あ、はい。とても気に入りました。ありがとうございます」
あの大量の贈り物のどれが王子様からの贈り物だったの!? 送り主とか全然確認してなかったんだけど!?
背中に大量の冷や汗が流れた。『どれが王子様からの贈り物か把握してません』なんて言ったら首が飛ぶんじゃないだろうか。
おおおお落ち着け私……確実にドレスか靴か宝石かアクセサリーのどれかだ。もしくは現金。それなら、例えどれだったとしても気に入ったと言っておけば、とりあえず問題ない……よね?……多分。そうだと言ってほしい。
私の内心も知らず、王子様は優雅に微笑んだ。
「それはよかった。あの魔法石はベリオン魔導国の鉱山でしか採れない貴重なものでね。どうしてもあの美しい魔法石を、美しい転移者様に受け取っていただきたかったんだ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
魔法石!? 魔法石って何!?? わからないけど、口ぶりからして多分宝石みたいなものだよね? あの大量の宝石の中のどれかがそうなのかな……。とにかく、王子様からの贈り物が『魔法石』だということはわかった。助かった……これで何とか会話を続けられそうだ。
「ですが、私は魔法石のような高価なものをいただいていい立場じゃありません……ただでさえ、ここにいる間の生活のためにいろいろいただいているのに。本当に申し訳ないです」
部屋が埋まるので贈って来ないでほしい、なんなら引き取ってほしい、なんて正直に言うわけにもいかないのでオブラートに包んで伝えてみる。
「僕が好きでやっていることだから、貴女がそんなことを気にする必要はないのだけど……じゃあ、僕にだけ貴女のスキルを教えてくれないかい? ……貴女のことがもっと知りたいんだ」
そう言って、キラキラエフェクトの幻覚が見える表情で微笑む様子はまさに王子様だった。いや、本当に王子様なんだけど。
ところで、私はこの王子様と初対面だよね? なんだか王子様がやたらと馴れ馴れし……友好的なんだけど。
そしてやっぱりスキルの話になってしまうのか。本当にどうしよう。友好的なのはとてもありがたいんだけど、スキルは無いって言っても誰も信じてくれないんだよね……。どう伝えればみんな信じてくれるんだろう。
それでも、他にいい方法が思いつかなかった私は、再三言った言葉を繰り返して、頭を下げることしかできない。
「……いろんな方から伝わっているとは思うんですが、私は本当に何もスキルがないんです……今までの転移者はみんなスキルをこの国に役立ててきたんですよね。私だけ何もできなくて、本当に申し訳ないと思っています」
「………………今までの転移者のことを、他の者から聞いたのか?」
部屋の空気が突然冷えた気がした。
え、王子様怒った? 何で?
私は焦って言葉をつないだ。
「いえ、そうなのかなと思っただけなのですが——」
「そうか。いや、気にする必要はないよ。転移者は天から遣わされた祝福だ。貴女がここにいるだけで、私たちは幸せなのだから」
話がよくわからなかったが、そういう言い伝えとかがあるんだろうか。なんとなく質問できる雰囲気でもなく、そのまま話は流れてしまった。
その後は私がこの世界に来てからの生活などの他愛のない話をして、何事もなく時間は過ぎていった。
いつのまにか王子様の雰囲気は元に戻っていた。私の気のせいだったのかなぁ。




