第12話 贈り物攻勢
私の部屋の一角に、天井近くまで積まれた大量のプレゼント。キラキラと光る色とりどりの包装紙が目に痛い。
「……どうして、どこから贈り物が? 私はこの世界に知り合いなんていないはずなんですが……」
そう。私はこの世界に来たばかり。プレゼントをくれるような相手なんて、この世界のどこにもいはしないのだ。
「転移者様の魅力を聞きつけた貴族のご令息がたが、競うように贈ってこられたそうですよ。さすがは転移者様でいらっしゃいますね」
ソフィアさんは笑顔で言った。
そんな訳あるか。本当に私の魅力を聞きつけて贈ってきたのなら、伝言ゲームが確実に途中のどこかで大失敗している。それなら、贈ってきた人たちも被害者なのかもしれない。そう、加害者はどこにもいないのだ。強いて言えば伝言ゲームを失敗したやつくらいだ。
「開封を手伝いましょうか?」
現実逃避を始めて黙ってしまった私を見かねてか、ソフィアさんが顔を覗き込んできた。
どうしよう。物に罪はないと受け取って開けてしまうか、あるいは送り返すか……いや、それは流石に失礼か。私みたいな庶民が貴族相手にそんなことをしたら……どうなるのかは知らないけど、何かしらの罪になりそうな気がする。
どうやら選択肢は『受け取る』以外にはなさそうだ。
よくわからない荷物が家に届いたら受け取らずに返送しなさいって習った私には耐えがたい。耐え難いけども、
「……開けましょう。仕方ないので」
「承知しました」
私は近くにあった一番小さな箱を手に取り、恐る恐る開けてみた。箱の中には見たこともないくらい大きな宝石が鎮座していた。
ヒエッ……こんなとんでもない物を贈って来ないでほしい。元の世界なら博物館行きなんじゃないか。
私は急いで箱のふたを閉めて、部屋の隅に戻した。見なかったことにしたい……
そんな私をよそに、ソフィアさんは何やら大きめの箱をパカッと開けていた。中から出てきたのは、これまたきらびやかなドレス一式。
「これは美しいドレスですね。転移者様もお気に召しましたか?」
ソフィアさんが楽しそうにドレスを持ち上げながら、こちらを振り返る。
そんなのどこに着て行けと。
「アッソウデスネ。ソフィアさん、欲しければ差し上げますよ……」
「まさかっ! 転移者様への贈り物に手を付けるなど、とんでもないことでございます!」
「そうですか……」
割と本当にいらないから、ソフィアさんがもらってくれたら助かるんだけどな……。まあ無理を言うのもよくないだろう。
ソフィアさんが応援を呼んでくれたのか、他のメイドさんたちも数人駆けつけてくれた。みんなで片っ端から箱を開けていく。
それでもプレゼントの山はまだまだあるので、もう開き直って私も景気よくパカパカと開けていった。その中身はどれも高そうなドレス、高そうな宝石、高そうなアクセサリー……。結論。どれも高そう。というか、私にはそれ以上のことがわからない。その辺の女子高生に目利き力を求めないでほしい。
贈られても使い道ないんだけどな。必要な物は全部王宮で用意してくれてるし、別に外にも出ないから……そうだ!!
「このプレゼント、換金して私の生活費に充ててもらうことってできませんか!?」
「…………贈り物を換金するのは……」
「………………そうですよね」
そりゃそうだよね……残念。
何か、この無駄な贈り物の使い道はないものか……そんなことを考えていると、今日が初対面のメイドさんが唐突に話しかけてきた。
「ところで転移者様」
「はいなんでしょう」
「転移者様は、どのようなスキルをお持ちなんですか?」
またこれか。
メイドさんのキラキラとした表情を見るに悪気はなさそうだけど、正直げんなりした。貴族の人だけじゃなくて、使用人さんたちもそういう感じなのか……
「あー、すみません。私はスキルとか本当に何にもないんです」
「そうおっしゃらず——」
そんな会話をしていると、部屋の外からコンコンとノックの音が聞こえた。
ソフィアさんがサッと立ち上がり、行ってしまう。正直私が対応しに行きたかった。このメイドさんから解放してくれ~。
そんな心の声が届くはずもなく。扉からはちょっと距離があるから聞こえないけど、プレゼント開封の手伝いに来てくれたメイドさんを呼びにきたとかかな?
メイドさんとの終わらない押し問答に疲れ切ったころ、ソフィアさんがこちらに戻って来た。
「転移者様。王子殿下が転移者様を本日の夕食にご招待したいそうです」
なんて???????




