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小悪党、未来の嫁を拾う。  作者: かがみスイッチ
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竜の尾

フードを深く被り商会を出た俺は、活気のある夕方の街を人並みを縫うように歩いていた、向かう先は貧民街と風俗街の辺り、今の時間ならこの街をまとめる裏側の組織も活動している時間だろう、普通なら怯えるようなヤクザな仕事をする者、その者達と会うのが、今日の俺の目的なのだ。


しばらく歩いて歓楽街に着いた、やはりこう言った場所の雰囲気はどの街も変わらない、客として見るならば喧騒と光の絶えない夜の街、しかし裏では金欲と性欲に突き動かされた者たちが、ツノを突き合わせて争っている、自分の縄張りを荒らされぬよう腕の立つ者達を集めている、そんな街を俺は立ち止まって観察した後、ある一本の路地に入った。


「…おい、入るな…ここから先に店は無い、帰んな。」


背の低いネズミのような男が話しかけて来た。


「そうですか…私はここをまとめる方と取引をしたいのですが、今はいらっしゃいますか?」


「……余所者には俺が領主様の部下にでも見えるか?」


「いえ、見えませんね、でも別の方の部下でしょう?私はその方に会いたいだけなんです。」


男は俺を睨みつける、ここからは言葉を選び違えば武器が出てくるだろう。


「…この先がどういった場所かは分かってるんだろうな…俺の上司がなんなのかもだ…一般人が簡単に入っていい所じゃないんだ。」


「ええ、存じております、ただ私もどうしても会わなければいけないのです。」


男は数瞬考え込み渋々と言った様子で言った


「…とりあえず、お前の用件を言え、それを聞いて判断する。」


「ありがとうございます……ここ最近この街に悪知恵使いのネズミが首都から来たでしょう?、私の目的はただ一つです、そのネズミどもを全て駆除する事、その為に協力していただきたい。」


暗に奴らを殺すと俺が言い切ったら、男は目を見開き、俺のつま先から頭の先まで二回見回した。


「これは貴方達にも利益がある事です、詳しい内容は貴方の上司の前で話しますので通していただけませんか?」


「…分かった、ただ怪しい動きをした時点で無事に返す事はできん、それでいいなら着いてこい。」


「感謝します。」


男は俺と三歩分の距離を保って路地を進んで行った、しばらく歩くとなんの変哲もない木の扉の前に止まり、名前と符号を伝えると扉を開けて入っていった。


男に次いで中に入ると、普通の木の扉とは打って変わり部屋は石造りで窓のひとつもない、圧迫感のある様相をしていた、この部屋には俺を連れてきた男とは別の、用心棒と思われる者が二人、俺を睨んでいた。


「おいコイツは客だ、睨むな……着いてこい、二階だ。」


どうやら俺を連れてきた男は、組織の中でも多少上の立場にいるらしい、また俺は着いていって階段を登ると、今度は鉄でできた扉があった。


「待ってろ、伝えてくる。」


「かしこまりました。」


五分程経つと扉が開かれ入室が許可された。


「僕に取引があるらしいね、ゼンが連れてきたって事は何かあるんだろう?」


「お会いできることを感謝いたします、私の名はトート、私は貴方達と取引する為に参りました。」


「…へぇ、僕を見て驚きも舐めもしないか…トートだっけ、君、相当有能でしょ、今までその振る舞いを出来た奴は全員頭がキレたからな、取引ってのも楽しみだよ…さて、俺の名前はザイン、この街の裏を取り仕切ってる、竜の尾って組織の頭領をしている。」


ザインは驚いたように俺にそう言った、しかし内心俺は驚いてはいた、彼は相当若く俺より年下に見える、顔つきも街で見かけたなら、ただの軟派な女タラシに見えただろう、しかしここは人の多さが首都に次ぐほどの港町、そんな都市の裏側を支配する者達の、頭領の部屋なのだ、油断は無かった。


「身に余るご評価感じいたしますザイン様、しかし私はただの旅人でございます、あまり期待されますと旅の荷物の重さも合わさって、私は潰れてしまうやもしれません。」


「アッハッハッハ!!いい返しだね、人が興味を持ってしまう素晴らしい冗談だよ、益々君に興味が湧いた、そんなただの旅人さんが持ってきた取引は何かな?」


「では話させていただきます、今回私がお願いしたいのはネズミ駆除の手伝いです、詳しく言うなら奴らの目的を探っていただきたい。」


「…なるほど、首都から来てデカイ顔してるアイツらか……残念だけど僕達は動かないかな、と言うより動く必要が無いだね、現状僕達に不利益は無い、

デカイ顔してるだけの奴らなら敵じゃ無いって事だね。」


「確かに現状のままでしたらそうでしょう、しかし奴らが逆転の一手を持っていたとしたら?」


そこまで言うとザインは腕を組み考え始めた、少ししてその体勢のまま口を開いた。


「……だとしたら危険だね、確かに彼らがこの街に来た理由もまだ分かっていない、もしそんな手があるならば、この街の裏社会は割れてしまうだろう、そこが君の取引の要かい?」


「ええ、その通りでございます、奴らの目的はここの領主を暗殺する事です。」


「暗殺…随分と物騒だね、だが奴らがバレずに出来るとは思えないな。」


「奴らだけなら出来ないでしょう……私には旅の連れがいます、その連れは人並外れた剣の達人です、軍隊すら赤子の手を捻るように蹴散らせる、そんな強さを持っています、奴らはそこに目をつけた、連れを脅したのです、私の命を人質に。」


「…なるほど、奴らの目的は君の連れを使って、領主を暗殺する事だというのは、信じられはしないけど理解はした、でもそれが僕達と関係あるとは思えないのだが…なぜ君はここに来た?」


「…私の予想では奴らの依頼主は、この街の次の領主だと思っております、もし本当にそうだった場合、奴らは未来の領主に貸しを作った形になります。」


「…領主が返す物は、この街の裏社会の地位だということだね…」


「その通りでございます。」


目の前に座るザインは苦虫を噛み潰したような表情をして考え込んでいた。


「……でもそれは君の勝手な予想だろう?」


「ええ、その通り、今の話は私の稚拙な予想に過ぎません、ですので私は竜の尾に調べていただきたいのです、奴らの依頼主を。」


「なるほど……もしその話を僕が受けたとしてその後はどうするのか聞いても?」


「依頼主を使い、奴ら全員を街から出して人目のつかない所で潰します。」


「どうやっ…ああ、君の連れか…なるほど僕達に損は無いね…もし断ったらどうするのかな?」


この質問は想定してなかった、なぜならもし断られるならこんな質問されずに断られると思っていたからだ。


断られた場合の次の策か…今すぐに思いつくのは一つしかない。


「…そうですね、連れに頭を下げて自分の力が使えなかった事を謝り、領主か奴らを殺してもらいます。」


「ハハハ、そうか謝るのか、その後尻を拭いてもらうと、それは良い旅の連れだね。……分かった、今回の取引を竜の尾は受けよう、情報が見つかり次第君達に教えるよ。」


「本当ですか、ありがとうございます、私は暫くアラウィ商会の方に居るのでそちらに…」


「まあ、待ってくれ、その前にこちらからも条件がある、君の連れに会わせてくれ、人並外れた剣の腕ってのを見れないならこの話は無しだ。」


「かしこまりました、近日中に彼女を連れて参ります、ザイン様には相手を用意していただきたい。」


「分かっ…女の子なのか?」


「ええ、私よりも三つ下の少女です、しかし態度と立ち振る舞いと剣の腕はなんというか…とても少女とは思えない物を持っております。」


「アッハッハッハ!態度と立ち振る舞いもか、君の尻拭いをできるほどの人物というのも気になる、明日以降ならいつでも来てくれ、楽しみにしておくよ。」


「では、近いうちにまたここに来ます。」


「うん、待ってるよ、ゼン!彼を送ってくれ。」


俺はゼンと呼ばれる俺をここまで連れてきた男に、帰りもまた着いていった、路地から出る時にゼンが口を開いた。


「…お前さん、上手くいって良かったな。」


「…ええ、そうですねザイン様が話を聞いてくださる方でよかったです。」


「ああ、俺もギリギリで助かった。」


「え?……ッ!!」


取引が無事終わり帰る最中、俺はゼンにナイフで刺された。





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