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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第7章 愛情の板挟み

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第1話 マズイこと?

 倒れちゃったセバスチャンをその場に残し、一人で城に戻るワケにも行かず……。

 結局私は、王子が迎えに来てくれるのを、やきもきしながら、待たなければいけなくなった。


 再びやって来た王子は、地面でのびてるセバスチャンを見て、


「これはどうしたことだ……? 病人だか怪我人だか知らないが、手当が必要な者が、増えてしまったというわけか?」


 呆れ顔でつぶやき、ため息をついた。



 どうやら王子は、セバスチャンが倒れてる理由を、すぐに『肥満ゆえの体力不足』と察したらしい。

 しばらく休ませれば問題ないと判断し、セバスチャンをそのままにして、先に私を、城まで送り届けてくれることになった。




 城に到着し、王子に馬から降ろしてもらうと、私は一直線に城内へ駆け込もうとし、後ろから王子に呼び止められた。


「リア! カイルなら、私が利用させてもらっている部屋に運んだよ。看病や、その他の手配はアンナに頼んでおいたから、そう慌てずとも大丈夫だ」


 王子はそう言ってくれて、


「そうですか!……よかったぁ……」


 ひとまず安心して、ホッと胸を撫で下ろす。


「――さて。私はまたひとっ走りして、セバスを迎えに行ってやらねばな。……まったく、あのご老体にも困ったものだ」


 腕組みして苦笑しつつも、王子の言葉には、どこか温かみが感じられた。


「……すみません。うちの爺やが、ご迷惑お掛けしまして……」


 怒ってるワケじゃないとわかってはいたけど、迷惑掛けてるのは確かだから、一応謝っておく。


「いやいや。どう致しまして。……それより、君はこれから……彼のところへ行くつもりかい?」

「え?……あ、はい。アンナさんがいてくれれば問題ないでしょうけど、やっぱり心配だし。様子だけでも見て来ようかなって思ってます」


「……まあ、だろうね。君のことだから、このまま放っておくわけはないだろうと、予想はしていたが……」


 王子は複雑な表情でため息をつくと、どこか遠くに視線を移した。


「……へ? なんですか? 私がカイルさんの様子見に行くと、何かマズイことでも?」

「まずいよ。まずいに決まっているだろう?」


「はぁ……?」


 困惑顔で告げる王子に、私は首をかしげた。



 マズイって……何がマズイんだろ?

 寝込んでる人の様子が気になるのは、当たり前のことだと思うけど……。



 きょとんとする私の頭にそっと手を置くと、王子は噛んで含めるように、


「今は気を失っているとしても、いつ目覚めるかわからないだろう? アンナだって、席を外すこともあるだろうし……。そんな部屋の中で、君と彼とが二人きりになるなんて、考えただけでも胸が騒ぐよ。正直に言えば……彼のところには行かないで欲しい。つまりは、そういうことだ」


 などと、少し顔を赤らめながら告げるのだった。



 ……え……。二人きり、って……。


 『胸が騒ぐ』――?

 カイルさんのところには行かないでくれって、それはつまり……。



「え……えっ!?……いやっ、だってそんな! カイルさんは桜さんの護衛だった人で――っ! そりゃ、今は私の護衛をしてくれてますけど……でもそれだって、桜さんがいなくなっちゃったからで、だから――っ」



 王子が心配してるようなことには、絶対なりませんってば!



「本当に? 彼をただの護衛としか思っていない? 君も彼も――お互いに意識していないと、ハッキリそう言い切れるかい?」

「――っ!……そ、それは……」


 真摯(しんし)な眼差しで訊ねられ、思わず口ごもる。



 ただの護衛……。

 カイルさんは私の……ただの護衛?



 ……わからない。

 わからないよ、そんなの。


 だってまだ、カイルさんのことよく知らないし……。意識するもしないも、そんなの……。



 ――だって、そんな風に言われちゃったら――!



「もうっ! どーしてそんなこと訊くんですかっ!? 王子がいきなり変なこと言い出すからっ! 意識なんてしてないのに……してなかったのにっ! そんな訊き方されたら、なんかもう――妙に気になって来ちゃうじゃないですかっ!」


「……やはり、気になるのか……」

「だからっ! 王子がそんなこと訊かなければ、気になんかしなかっ――?」


 強い力で引き寄せられ、一瞬にして、私は王子の腕の中に収まっていた。


「ちょっ、また――! い、いー加減にしてくださいっ!――離してっ! 離してってばっ!」

「離さない。……君が私のことだけを見てくれるまで、絶対に離さない」


「な――っ!……何をまた、バカなこと――」

「バカなことを言っているのはわかっている!……わかってはいるが……どうしようもないんだ」


「……王子……?」


 少しも余裕の感じられない王子の態度に、私は困惑した。



 昨日まで余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)としてて、憎たらしいくらいだったのに……。

 私をからかっては、クスクス笑って。何かと子供扱いされて、悔しくて堪らなかったのに。


 今の王子からは、そんなの少しも感じられなくて……。



「君のことになると、気持ちの抑制(よくせい)が利かない。……見苦しいとわかっていても、やめろと、どんなに心が叫んでも、(はや)る心をどうすることも出来ない。君を前にすると、王子としての立場や体裁(ていさい)など、どうでもいいとさえ思ってしまう。……こんなことは初めてだ……」


「王……子……」


 耳元で響く切なげな声が、私の抵抗力を奪った。

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