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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第4章 ルドウィン国の王子

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第9話 消えた傷痕

 何者って……。

 さっき自己紹介はしたはず、だよね?


 ……もう忘れちゃったのかな?



「えっと、だから……神木桜ですけど?」

「違う! そうではなくて!――そういうことを言っているんじゃないんだ。君は――!」


「……はい?」



 何なに? どーゆーこと?

 王子が、何をそんなに驚いてるのか……さっぱりわからないんだけど?



「君は……この王室の血筋の人……なのか?」

「――え?」


「リアの姉とか妹とか……従姉妹とか。親せき筋――リアと多少なりとも、血縁のある人なのかい?」

「えっ?……いえっ、まさかっ! 全然違います!」


「……では、もしや……私の方の?」


 王子はそうつぶやくと、神妙な顔をして黙り込んでしまった。



 ……え~……っと……。

 腕、そろそろ離してもらえないかな~……。



 体勢は辛いし、王子の様子はおかしいし。

 いい加減しんどくなって来て、私は大きなため息をついた。


「――あ。すまない。うっかりしていた」


 ため息にハッとしたようで、王子はようやく私の腕を解放してくれた。


「驚かせてしまったね。――だが、私も相当驚かされたよ。君のその……傷の治りの早さには」

「……へ? 傷の治りの……早さ?」


 擦り傷を確認するため、腕を上げてじっと見つめる。


「……あれ?」



 ――ない。

 擦り傷があるはずのところに……傷が……ない。



「え? あれっ?……あれれっ?」


 私は焦って、腕のあちこちを確認しまくった。



 ……ない!

 ないないっ!

 マジでどこにもないっ!!


 ――え、なんで?

 あるはずの擦り傷が、綺麗さっぱり消えてるっ?



「あの……。私、確かにさっき……ここ、擦りむきましたよね?」

「ああ、間違いなく。私もこの目で確かめたからね。錯覚(さっかく)であるはずがない」


「です、よね……。でも、あの……どーしてだか、消えちゃってるんです……けど」

「そのようだね。確認したばかりだから、疑う余地もないだろう」


「……えっと……。でも、治ったにしても……早過ぎます、よね……?」

「ああ。普通の人間なら、あり得ないことだ」


「……です……よね……」



 ……え?

 じゃあ、何? 私が普通じゃない――ってこと?



 ……でも……でも、変だよ。


 だって私、こんなこと初めてだもん。

 今までだって、何度も何度も、擦り傷切り傷こしらえて来たけど……傷口がどこにあったかわからなくなるほど、治りが早かったことなんて、一度もなかったよ?


 そう……そうだよ!

 おかしいのは私じゃない!


 私じゃないとすると……。



 私はゆっくりと顔を上げ、王子をじっと見つめた。


「ん? どうかした?……何か言いたそうだね」

「そりゃ……だって、おかしいですから……」



 私の体に問題がないとすれば。

 考えられる原因は、王子しかいない。


 王子が……王子が私の腕の傷を舐めたりしなければ……。

 もしかしたら、こんなことにはなってなかったんじゃ……?



「おかしい……か。そうだね。確かにおかしい。多少なりとも、血の繋がりのある者同士でしか、あり得ないはずなのに」



 え?

 ……血の繋がり?


 ……何、それ?

 どーゆーこと……?



「君がリアだったなら、これほど驚くこともなかったろうが……。君はリアではない。そうだね?」

「え?――あ、はいっ。もちろん」


「うん……。まあ、仕方ない。こうなったら、本当のことを話そう」


 王子はそう言うと、少し困ったように笑った。


「ルドウィンの初代国王は、ザックスの初代国王の実弟だったんだが……この話は聞いている?」

「へっ?……い、いえ……。初耳です」



 ……なんだなんだ?

 唐突に、歴史のお勉強?



「まあ、だろうね。数百年も昔の話だ。二国間の王族に血の繋がりがあると言っても、今となっては、かなり薄まってしまっている。さほど気にすることでもない」

「……はあ……」


「ただ……初代国王には、普通の人間とは違う――何か、特別な力があったようなんだ」

「特別な力?……え……っと……。それって、つまり――」


「具体的にどんな能力だったのかは、よくわからないんだけれどね。伝わっている話では、人の心が読めたとか、大きな石を見つめるだけで動かせたとか、触れることなく物質を破壊することが出来たとか……そんな感じだったかな。まるで神の力だろう?」



 ……要するに、超能力……を持ってたってことか、初代の国王様は。



「その能力って、どっちにも――お兄さんにも弟さんにも、そなわってたんですか?」

「ああ、そう聞いている。だから……ね。ルドウィン王室とザックス王室には、代々――その手の力を持った者が、生まれることがあるんだよ」


「へえ~……。すごいんですねぇ、王室の人達って……って、えっ!? じゃあ、まさか……王子にも力が?」

「まあ……私の能力は大したものではないが、一応ね。傷を治癒(ちゆ)する力が、少々……」


「傷を治癒する!?……はぁ~……なるほど。だから、私の傷も治っちゃったワケですね?」


 私が納得したようにうなずくと、王子は複雑な顔をして、静かに首を横に振った。


「いや。それが――そう簡単に納得出来るものでもないんだ。何しろ、私の治癒能力は、血族間でしか威力を発揮しないものなのだからね」

「けつ、ぞく、かん?……ってゆーと、その……」


「血が繋がっている者。――その上、ルドウィンかザックス、初代国王どちらかの血を引く者。……とにかく、ほんの僅かでも、初代両者の血を引いている者でなければ、この力は効かないはずなんだよ」



 ……初代の国王様、どちらかの血を……引いてる者でなければ、効かない……?


 え……えぇええッ!?



 そんな……。

 じゃ、じゃあ、私も……王室の血を引いてるってこと!?

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