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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第4章 ルドウィン国の王子

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第6話 白状します!

「……え?」



 『目の前にいるのがリアだったら』――?

 『残念ながら、今は不在のようだし』――?


 ……って、まさかこの人……?



「この国では、王を()ぐ者は男であれ女であれ、ある程度は剣術を身につけていなければいけない決まりなんだが……リアは剣術どころか、機敏(きびん)に動くことすら出来なくてね。いつも一人で泣いていたよ」


 王子はそこまで言うと、私を鋭い目つきで見つめ、更に続けた。


「それに比べて、先ほどの君の俊敏(しゅんびん)な身のこなし。……実に見事だった。あそこにいたのが君でなければ、アルフレドは確実に踏みつけてしまっていただろう」



 う――。


 な~んだ。怪しまれるどころか、最初っから別人ってバレてたのね……。



 でも、どーしよう?

 ここで(いさぎよ)く、『偽物です』――って、白状しちゃった方がいいのかな?

 それとも、セバスチャン達が戻って来るのを待って……相談して決めた方がいいのかな?


 ……うぅ~ん……。


 みんなが来るまで時間稼ぐ――なんてこと、私に出来るんだろうか?

 この王子、思ったより手強(てごわ)そうだしなぁ……やっぱ無理かなぁ……。



「どうしたんだい? 急に黙り込んでしまったね。次の戦略を試してみてもいいんだよ? 言い返したり、しらばっくれたり、ごまかしたり――散々悪あがきしたあげく、最後には泣き落とし……とかね。何かしら用意してあるんだろう?」


「な…っ! 誰が泣き落としなんか! するワケないでしょ、そんなことっ!」

「そう?――それは残念。見てみたかったのに、君の泣き落とし」



 ……ニコニコ……いや、ニヤニヤ? ニマニマ?……ヘラヘラかな?

 ――って、どの擬態語がふさわしいかなんてことは、この際どーでもいーんだってば!


 とにかく、ハッキリとは形容しがたい笑みを浮かべながら、王子は私をからかってるんだか挑発してるんだか、よくわからないような発言をした。


 お言葉どおり、何か言い返して、最後の悪あがきをしてやろうかとも思ったんだけど……。



 ……ダメだ。

 この王子には、絶対勝てない。



 本能だか直感だかでそう悟った私は、早々に白旗を揚げることにした。



「あーもう! わかった! わかりましたっ! 白状すればいいんでしょ?」


 私はテーブルをバシバシ叩いてから、王子を睨んで言い放った。


「あなたが疑ってるとーり、私はリナリア姫じゃありません! ただの一般人で、平民で……おまけに、この世界の人間でもない、ごく普通の高校一年生! 名前は神木桜!……どう? これで満足っ!?」



 ……私、なんでこんなにムカムカしてるんだろ?


 王子の態度が気に入らないから?

 嘘があっけなくバレて、悔しいから?


 ……それもあるけど……。


 これでもう、ここにはいられなくなるかも知れない……ってことが、嫌なんだと思う。

 嫌ってゆーか、怖いのかな……。



 せっかく、セバスチャンとも、アンナさんやエレンさんとも……カイルさんとも知り合えたのに。

 私が偽者だって国王様に知れたら……きっともう、ここにはいられなくなる。この見知らぬ世界で……ひとりぼっちになっちゃう。


 それがとても……怖いんだ。



 ……うわ、ヤバイ。

 いろいろ考えてたら、なんだか悲しくなって来ちゃった。



 私は慌てて立ち上がると、スタスタと窓辺に歩み寄った。



 ……べつに、窓の外が見たかったワケじゃない。涙がこぼれそうになっちゃったから、一時、避難しに来ただけだ。


 だって……泣き顔なんて、絶対誰にも見せたくない!



「突然立ち上がって……どうしたんだい? 窓の外に、何か気になるものでもあるのかな?」



 ――って、いつの間にか王子の気配が真後ろにっ?

 その上、かなり接近してるっぽいんですけどっ?



「な――っ、なんにもありません! だからさっさと離れてくださいっ! 今すぐにっ!」

「……酷いな。さすがに、そこまで強く拒絶されるとは思わなかった。……でも、そう言われると……逆に近付きたくなってしまうな」


 そう言うと、王子は突然、後ろから抱き締めて来た。


「――っ!」



 私はめちゃめちゃ驚いて、首の下辺りで交差してる腕を、必死に両手で引き離そうとしたんだけど……。



「ちょ…っ! 何するんですかっ? 私は離れてって言ったんですっ!」

「フフッ。……だから、そう言われるとますます……こうしたくなってしまうんだ」


 抱き締めている腕に、力が加わる。


「な――っ!……なんなんですかいったい!? 私は、リナリア姫じゃないんですよっ?」

「うん。それはさっき聞いたよ。……それに、リアにはこんなことしないし、したいと思ったこともない」


「――え? それって、どーゆー……?」



 からかって、抱き締めたりはしない――って意味だよね?


 だって……少なくとも、ちょっと前までは婚約者だったんでしょ? 好きって気持ちがあったから、婚約してたんでしょ?


 ……そりゃ、何の拘束力もない……ただの口約束みたいなものだって、セバスチャンは言ってたけど……。


 それなら尚更、好きじゃなかったら婚約なんて……最初っから、しなければいいってだけの話じゃない?


 王子は……その話が出た時、いったいどういうつもりでOKしたの?



「リアは私にとって、妹のような存在だからね。いつも、心細そうに縮こまっていた彼女を、守ってあげなければと思っていた」



 ……妹?


 守ってあげたい――じゃなくて、守ってあげなければ……なの?

 妹のような人と……結婚する気でいたの?


 ……わからない。

 王子の気持ちが……全っ然、理解出来ない!



「それって何? その気持ちって……もしかして同情? それとも義務感?……そんな……そんな中途半端な優しさで、結婚決めるってどーゆーことよっ!?」


 相手は身分の高い人だってわかってたけど、思わず、非難めいたことを口走っていた。



 だって……姫様の気持ち考えたら、堪らなかったんだもん……。



「中途半端な優しさ、か……。確かに、君の言う通りだ。……いつかは、妹以上に思える日が来るかも知れないと――自分に言い聞かせるように、リアに接して来た。だが、結局私は――」


「……結局、妹以上には思えなかった。だから、婚約破棄を……?」


「ああ、そうだ。このことは、頃合いを見計らって、直接自分から伝えるつもりだった。しかし……父は父で、気を利かせたつもりだったんだろう。私が結婚をためらっていることを、クロヴィス王へ伝えてしまった。私はそれを聞き、急ぎザックスまで馬を走らせた――という訳だ」


 王子は淡々と、これまでのいきさつを告げた。……本当に、淡々と。

 それで私はカッとして、しつこく首元に居座り続けてる王子の腕に、思いっきり噛みついてやった。


「――ッ!」


 一瞬、腕が離れた隙に、私は王子に向き直り、両手で力いっぱい突き飛ばした。


「姫様は本気で! ホントに、あなたのことが好きだったのに!……私は会ったことないけど……でも、みんなの話聞かせてもらったから、わかる。姫様は、ずっと孤独で、寂しくて……。でも、あなたに恋をしてから、その孤独が、少し()えたんじゃないかな? あなたを一生懸命想うことで、心の空っぽの部分を、埋めてくことが出来たんじゃないかな?……なのに、そんな姫様に……あなただけを心の()り所にしてた姫様に、いきなり妹としか思えないとか婚約破棄とかって、酷過ぎるよ! 期待持たせるだけ持たせといて、やっぱりダメでした――なんて、そんなのあんまり、勝手過ぎるじゃない!」



 堪えたかったけど、ダメだった。

 涙が勝手に……次から次へと溢れて来て、止まらなかった。


 ……屈辱(くつじょく)だ。

 今まで一度だって、人前で泣いたことなんてなかったのに……。

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