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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第4章 ルドウィン国の王子

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第5話 王子と二人きり?

 私達が城に戻ると、城中あちらこちらで大パニックになったらしい。



 ……まあ、無理ないよね。明日来ると思ってた王子が、いきなり現れちゃったんだから。

 しかも王子ときたら、歩けるって散々言ってるにもかかわらず、半ば強引に、私をお姫様抱っこしたりしてて……。


 ……うぅっ、恥ずかしい……。

 どーしてこの人はこう――めっちゃ恥ずかしいことを、いとも平然と出来ちゃうんだろう?


 ……王子様だから?

 王子様って、みんなこんな感じなの?


 だとしたら私は……王子様ってゆー人種とは、一生お付き合いなんかしたくない!……かも……。



「サクラ様!――じゃなかった、姫様! いかがなさいました!? もしや、お怪我を――?」


 アンナさんもエレンさんも、私に夕食を運んで来てくれたところだったらしく、部屋の前で私の姿を見つけると、慌てて駆け寄って来た。


「ううん。怪我って言っても、かすり傷なの。しかも腕!……歩けるからいいって言ったんだけど、王子が……」

「王子?……あ! 貴方様は――」


 私を抱き抱えてるのが王子とは、夢にも思ってなかったらしい。アンナさんもエレンさんも、そうと知った途端、サササササッと後ろに下がり、深々と頭を下げた。


「もっ、申し訳ございませんっ! ギルフォード様がいらっしゃることにも気付かず、とんだご無礼を――!」



 ……うわ。二人とも、手が震えてる……。

 やっぱりこの人、ホントに王子様なんだなぁ……。



「こちらこそ、突然の来訪で驚かせてしまって、申し訳なかったね。無礼は私の方なのだから、君達が謝る必要はないよ。さあ、顔を上げて」


 王子が告げると、二人はこっそりと顔を見合わせ、恐る恐る顔を上げた。


「どうやら、リアは食事の時間のようだね。今頃、私の分も用意しようと、料理人達は慌てているのだろうが……。私は軽いもので構わないからと、伝えてもらえるかな? 急に来てしまったこちらが悪いのだから、過剰なもてなしは必要ないとね」


「は、はいっ! かしこまりました!」


 二人はぺこりとお辞儀をすると、大慌てで去って行った。



「……さて。ここはリアの部屋のようだし、もう大丈夫かな?」


 二人を見送ると、王子は私に顔を向け、にこりと微笑んだ。


「だから、最初から大丈夫だって言ってます! さっさとおろしてください!」


 ムッとして言い返すと、王子はくすくす笑い、ようやくその腕から解放してくれた。



 ……さて、これからどーしよう?


 セバスチャンは、あっちこっちの動揺を静めるためと、これからのことを指図するために、城中を飛び回ってるし……。

 アンナさん達は、王子の分の夕食を用意するために、戻って行っちゃったし……。


 ……うぅ~ん……。

 いつまでもこんなとこで突っ立ってるのも、変だってのはわかってるけど……。


 部屋の中で、王子と二人きりってゆーのもなぁ……なんか気まずいしなぁ……。



「リア? 何を一人でそわそわしているんだい?」

「な――っ! べつに、そわそわなんてしてませんっ!」


「……そう? ならいいけれど」


 くすっと笑った後、王子は腕組みして壁にもたれ掛かった。



 な――っ、何なのよこの人!?

 さっきから、まるでからかってるみたいに……。


 馬に乗ってる時は、あんなに真剣な顔して謝ってたくせに……。



「それで? 私はいつまで、ここでこうしていればいいのかな?――私を部屋に入れることを、ためらうのもわかるが……。長い間、馬を飛ばして来たのでね。疲れているんだ。出来れば、部屋で休ませてもらえるとありがたいんだが――」



 ……う。


 そこまで言われちゃうと……入れないワケにも行かなくなって来ちゃうじゃない……。



「……ごめんなさい、気が利かなくて。……じゃあ、どうぞ……」


 私はドアを開けると、王子に部屋に入るよう促した。


「ありがとう。レディの部屋に入るのは、少し気が引けるが……。まだ、来客用の部屋の支度が済んでいない、ということだから……仕方ないよね?」


 王子はそう言って満足げに笑うと、部屋の中に入った。



 ……なんだろう。

 なんだかわからないけど、妙な違和感……。


 王子って、最初からこんな感じの人だったっけ……?



「どうしたんだい、リア? ドアを開けたまま、ボーっと立っていたりして?」

「べっ、べつに、ボーっとなんかしてません!」


「ふぅん……? ならば早くドアを閉めて、ここへ来て座ったらどうだい?」

「…………」


 私は無言でドアを閉め、少し警戒しながら、椅子を引いて待っている、王子の側まで歩を進めると、怖々(こわごわ)腰を下ろした。

 それを確認した後、王子も向かい側の椅子に腰掛け、両手をテーブルの上で組んで、私を真正面から見据える。


「な……なんですか? 私の顔に、何かついてます?」

「……いいや。ただ――今日のリアは、いつもと何か違うな……とね」


「――っ!」



 なっ、なんか私……いきなり疑われてるっ?



「何か違うって……ど、どこがですか?」

「――どこが? どこが違うって……それは、君自身が、一番理解していることではないのかい?」


「わっ、……私が? いったい、どーゆーことですか? 意味がわかりません」

「おや、そうかい? そんなはずはないと思うが……」


 私から一切視線を外すことなく、王子は意味ありげに微笑んでいる。

 私は内心ヒヤヒヤしながらも、何とか平静を装った。


「あなたが何を言いたいのか、私には全くわかりません。……そ、それよりあなたは、ここに、何をしに来たんでしたっけ? 私に話したいことがある――という風に、国王様からは聞いてるんですけど?」


「……ああ、そうだよ。どうしても、直接会って、話がしたかったんだ」

「なら、ワケのわからないことをグダグダ言ってないで、さっさと本題に入ったらどうです? 他の人に聞かれたくない話だとしたら、今が絶好のチャンスですよ?」



 婚約破棄の言い訳なんて、ホントは聞くのも鬱陶しいけど……。


 でも、姫様を追い詰めた原因が、その話の中にあるのなら……私は、ちゃんと聞かなくちゃいけない。


 だって、今は私が――リナリア姫なんだから。



 覚悟を決め、まっすぐ見返す私に向かい、王子は薄く笑いながら告げた。


「そうだね。私の目の前にいるのがリアだったら、もちろん、話していただろうが……。残念ながら、今は不在のようだしね。話すのはやめておくよ」

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