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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第3章 ザックス王国ー森の城ー

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第14話 優しくなんか……

「サクラ様? いかがなされました?」

「あ、ううん。ごめんね。ちょっと、ボーっとしちゃって」


「もしや、お加減が優れないのですかな? ご無理はいけませんぞ?」

「大丈夫だってば。心配性だなぁ、セバスチャンは」


 私はあははと笑って、話の先を(うなが)した。


「そんなことより、姫様の記憶って、もう戻ってるの? それとも、まだ……?」


「まだ……なのではないでしょうか。ご記憶が戻られていないからこそ、他人行儀になってしまわれ、陛下を避けるようになってしまわれたのではなかろうかと――」


「避けるように?……そっか。姫様の方から、距離置いちゃったんだ?」

「いえ、それが……。先に距離を置かれましたのは、陛下からだったような気がいたします」


「国王様から!?……なんで? どうしてそんな、突き放すようなことを?」

「どう接すればよろしいのか、わからなかったのではないでしょうか? あれほどご活発で、よくお笑いになるお子様だった姫様が……正反対のご性格になってしまわれたのですから」


「だからって、それは姫様のせいじゃないじゃない! 記憶を失っちゃったからなんでしょ?……姫様、急にそんなことになっちゃって……きっと、心細かったと思う。わからないことだらけで、不安だったと思うよ? そんな時に、いくら性格変わっちゃったからって、父親が娘を遠ざけるなんて――!」



 ……酷いよ。姫様、可哀想だよ。


 私は……私のお父さんは、そんなことしなかった。

 私が記憶失ったって知っても、いつも優しく接してくれた。『大丈夫。そのうち思い出すよ』って……笑い掛けてくれたよ?


 それが父親ってもんなんだって、ずっと信じてたのに……。



 なんだか無性に胸が痛んだ。

 私がお父さん――ううん、お母さんからも受けてたたくさんの愛情を、姫様は、ずっと受けられずに育ったんだって思ったら……堪らなかったんだ。



「じゃあ、姫様は……ずっと寂しかったのかな? セバスチャンや、アンナさんやエレンさんや、カイルさん……たくさんの人達に囲まれてても……それでもやっぱり、孤独を感じてたのかな?」


「……それは姫様にしか、おわかりにならないことですが……恐らく、お寂しかったでしょうな……」


 セバスチャンはしょんぼりして……アンナさん達も、悲しげな顔でうつむいてしまった。


「でも……でも国王様は、姫様のこと、大事には思ってるんだよね? ただ、急に変わっちゃったから、戸惑ってるだけで……愛情がないワケじゃないんでしょう?」


 訊ねながら、私は初めて会った時の、国王様の優しい眼差しと、温かい手を思い出していた。



 国王様、目に涙浮かべてた。

 姫様のこと、きっとずっと心配して……眠ってなんかいられなかったはず。


 国王様の姫様に対する気持ちは、絶対、十年前と変わってなんかいないよ。

 ……でなきゃ、あんな顔出来るワケない。



「サクラ様は、お優しいですな。お会いになったこともない姫様のために、胸を痛めていらっしゃる……」

「――え?」


 セバスチャンの言葉に、私は複雑な気持ちになった。



 優しい……?


 ……違う。そんなんじゃない。

 そんなのとは違うんだよ、セバスチャン。


 この気持ちは……何て言うんだろう?

 優しさとか、思いやりとか……そーゆーんじゃなくて。


 どっちかってゆーと、後ろめたさとか罪悪感とか……申し訳ない、って気持ち。……そんな感じなんだ。



「私は……優しくなんかないよ。むしろ……」


 思わずつぶやいてしまって、ハッとした。

 慌てて周囲を見回すと、セバスチャン達はきょとんとして、こっちを見てる。


「あ――、えっと……。そ、そー言えば、カイルさん、まだ旅支度終わらないのかな?――ま、まあ、旅に出るとなったら、いろいろ必要だろうし、時間掛かって当たり前か」


 あはははは……と、笑ってごまかしてた、その時。

 ドアがノックされ、廊下から、カイルさんの声がした。


「支度を整えて参りました。失礼してもよろしいですか?」

「うむ、入れ」


 セバスチャンが応じると、ドアが開き、カイルさんが入って来た。


 カイルさんの荷物は、思ったより少なかった。

 何泊かすることになるかもしれないんだから、それなりに大きなバッグとかに、荷物をギュウギュウに詰め込んで来るんだろうなって、思ってたんだけど……。



「カイルさん……荷物って、それだけ?」

「は?……はい。そうですが」



 肩に担いだ麻袋(ってゆーんだっけ? すごく丈夫そうな袋)に、何が入ってるんだろ?

 あれに入るものだけで、何日も旅が続けられるのかな?


 ……それとも、数日と掛からずに、姫様を見つけられるってゆー、自信があるの?



「あの……サクラ様……?」


 私がカイルさんの荷物を、じーっと凝視してるもんだから、彼は困ったような顔で首をかしげた。


「あ……。ごっ、ごめんなさい。つい――。え……っと、カイルさんは、その……姫様がどの辺りにいるか、とか……見当はついてるの?」


「……いいえ。ただ、サクラ様がおっしゃったように、姫様は王子に――ギルフォード様に会いに行ったと考える方が、自然に思えます。ですから、まずはルドウィンに向かおうかと――」


「……そっか。そう……だよね……」


 返事をしながらも、私は、このまま彼をルドウィンに向かわせていいものかどうか、迷い始めていた。



 確かに、さっきまでは――姫様の小さい頃の話を聞くまでは、ルドウィンに向かったんだろうって思ってた。


 でも、今は……たぶん、違うんじゃないかと思ってる。



 姫様は、ルドウィンにはいない。姫様は、王子に会いに行ったんじゃない。

 姫様は……姫様はきっと……。



 今の私には、確信があった。

 けど……確信はあっても、確証はなかった。


 だからやっぱり……()()()()は、みんなにはまだ言えない。

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