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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第3章 ザックス王国ー森の城ー

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第15話 お見送りさせてください!

 胸の内の疑惑は、とりあえず押し込めることにして。

 私はカイルさんに視線を向けて訊ねた。


「ねえ、カイルさん。もう出掛けるんだよね?」

「あ、はい。……セバス様。本当に後の手続きなどは、全てお任せしてしまってよろしいのですか?」


「うむ。案ずるでない。おまえは、姫様をご無事でお連れすることだけ、考えていればよいのだ」

「はい! それでは、直ちに出立いたします!」


「あっ。待って、カイルさん!」


 きびすを返し、躊躇(ちゅうちょ)なく出て行こうとするカイルさんの腕を、両手でつかんで引き留める。


「サクラ様……?」

「えっと、あの……。わっ、私、城の外まで送る!」


「……は?」


 カイルさんは、ぽかんとした顔で私を見つめた。


「そこまで! ホントにそこまででいいの! 見送らせて? 私、見送りたいの!」

「……見送る……って、あの……」


 腕を離そうとしない私に、カイルさんは、困惑するように顔を赤らめ、セバスチャンに視線を送って、助けを求めた。


「さ、サクラ様……見送るとおっしゃられましても、既に日も暮れておりますし……。城外――特に夜間は、危のうございます」

「ちょっとだけ! ホントにちょこっと、そこまででいいの! お願いだから見送らせてっ?」


「しかしですな、そこまで、とは……いったい、どの辺りまでのことをおっしゃっておるのです?」

「そっ、それは――」



 ちょっとそこまでと言っても、門の手前までとかじゃ意味がない。どうしても、カイルさんがルドウィンに発つ前に……確かめたいことがあるんだから。



「桜――ううん、神様の辺りまで! あそこからカイルさんを見送りたいの!」

「……神様の……? 何故でございます?」


「なっ、何故って……」



 ……うぅ、理由まで聞かれるとは思わなかった。



「何故って、それは……」

「……それは?」


「……な……なんとなく……」

「……はぁ?」



 ……ま、まずい。みんながきょとんとしてる……。



「だから、あの……。私、神様からこの世界に放り出されたじゃない? だから、えっと……あそこに、落し物しちゃったんじゃないかと思うの!」

「落し物……ですか?」


「うん、そう! あそこで大切な物、落としちゃったみたいなの。だからどーしても、今日中に捜し出したいの!」



 たった今、思いついた嘘だけど。

 ……信じてもらえるかな?



「それは一大事ではございませんか! どうしてもっと早くに、おっしゃってくださらなかったのです?」



 ……わ。思いっきり信じてくれたみたい。

 ホント単じゅ――いや、優しいんだから、セバスチャンってば。



「ごめんなさい。姫様のことが第一だと思って……」

「ピャッ!?……さ、サクラ様……!」



 ……ありゃりゃ? セバスチャンの目がうるうるしてる……。



「申し訳ございません! サクラ様にはまったく関係のないことに、長々とお付き合いいただいた上に、そのようなお心遣いまで……! 誠に、何とお詫びとお礼を申せばよろしいやら……」


 セバスチャンはしきりに感激し、『大至急、陛下にお許しをいただいて参ります』と、部屋を出て行ってしまった。



 ……あぅ。

 ごめんね、セバスチャン。

 また嘘ついちゃった……。



「……あ、そーだ。ごめんねカイルさん。すぐに出発したいでしょうに、時間遅らせちゃって――」

「いえ。どちらにしろ、陛下のお許しをいただかなければ、出られませんので」


 そう言って笑ったカイルさんは、少し悲しげに見えた。


 飛び出して行きたい気持ちを、必死に抑えてるんだろうな……。

 姫様のこと、心配で心配で堪らないんだよね、きっと。


 ……でもね、姫様はたぶん……大丈夫だから。

 姫様は、私の考えが見当違いでなければ、絶対――……。



「あの、姫――いえ、サクラ様」


 ふいに、今までずっと黙って、側で控えていてくれたアンナさんが口を開いた。


「え?――何、アンナさん?」

「はい。あの……私とエレンは、この後の仕事がございますので、失礼させていただきたく……」


「あ、そっか! そうだよね。二人とも、お仕事あるよね。……ごめんなさい。長いこと付き合ってもらっちゃって……」


「いえ、そんな――! サクラ様に、そのようなことおっしゃっていただく理由はございません。私どもは学がないものでございますから、サクラ様のおっしゃったことの半分も、未だ理解出来てはおりませんが……。いろいろと大変なことが、あなた様に起きたのだということだけはわかります。……サクラ様」


 そう言うと、アンナさんは私の手を取り、両手で優しく包み込んだ。


「私どもにお手伝い出来ることなど、ほとんどないのかも知れませんが……。姫様にこんなにもよく似ていらっしゃるサクラ様を、お助けしたいという気持ちは、セバス様にだって負けてはおりません。何かございましたら、ご遠慮なく呼びつけてやってくださいませ」


「……アンナさん……」



 この人達を見てると、何となくホッとするのは……どーしてなんだろ?


 姫様は……お父さんとは上手く行ってなかったかも知れないけど、でも……周りには、こんなにも優しい人達がいてくれたんだもん。きっと、この人達が心の支えになってくれてたんだよね。



「ありがとう、アンナさん。……エレンさんも。私、この世界に放り出された時は、どうなっちゃうのかなって、すごく不安だったけど……。でも今は、アンナさんやエレンさん、セバスチャンやカイルさん、そして国王様――みんながいてくれるって思うから、全然不安じゃなくなったよ。ホントにありがとう」


 そうして私は、私の手を包み込んでいるアンナさんの手に、もう片方の手をそえると、にっこり笑って握り返した。

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