新しい家族にようこそ!
4歳になった。
3歳の途中から5歳になるまでの間に
大きな出来事がいくつかあった。
まず1つ目
貰った卵が孵化した事だ。
この卵というのが実は
かなり貴重なものなのだそうだ。
卵の主人になった時から半年。
この不思議な卵が孵るのに必要な時間。
何が不思議かというと
四六時中一緒にいなきゃいけない。とか
ずっと温めてあげなきゃいけない。とか
数時間毎にひっくり返さなきゃいけない。とか
そういった事はなく産み落とされて最初に6時間
身近にいた相手を主人として認識するらしい。
一度認識したら淡く光出しその後は
放っておいても孵化するらしい。
何が産まれて来るのかは産まれてくるまで不明。
主人の資質や嗜好、深層心理や考え方
何を求め何がしたいのか。
そういった事を感じ取り自分で成長するらしい。
しかし放っておいた場合はまた異なる。
忠誠心が低かったり特別な力がなかったり
主人の役に立つ為に必要な
様々な能力を持たなかったり
最悪の場合孵化しないならまだしも
孵化した途端に襲いかかってくる場合も
無くはないというのだから驚きだ。
もちろん説明を聞いた俺は
放置なんてせずこれでもかと一緒に過ごし
大事に大事に温め続けた。
飯時も風呂も散歩も店の見学も
革製で内側がフッカフカのランドセルのような
丈夫な鞄を父親に頼んで作ってもらい
ずっと大きな卵を背負って歩いた。
最初の1ヶ月程は重かったのだが
それ以降は大きさの割に羽根のように軽くなり
持って歩くのは全く苦にならなくなった。
前世なら二宮金次郎と言われるだろうが
その後も背負い続けワクワクしながら
孵化する時を待ち望んでいた。
そしてついに孵化する時を迎えた。
今日の朝からコツコツと小さな音が聞こえている
もうすぐ生まれそうだ。
やはり半年共に過ごしただけあって
愛着も湧いたし楽しみで仕方ない。
どんな生物が生まれるのだろうか。
まさか成体で出てくるなんて事はないだろう
というかどんな生き物か判別は出来るのだろうか
不安もあるが(特に深層心理を読み取るとか)
それ以上の期待もある。
今日は孵化するまで卵の前から動かないくらいの
意気込みで待機している。
そして孵化の時を迎えた。
卵にヒビが入り小さなカケラが落ちた。
次第にヒビが深くなり欠けた所が
徐々に大きく欠けていく。
よくよく見ると湿った黒っぽい何かが
卵の中でもぞもぞしている。
うーーん…ゲテモノじゃ…ないよな?
やがて卵の中心が輪切りのように半分に別れ
中から出てきたのは…………
真っ黒の羽毛を湿らせ、黄金色の大きな丸い瞳に
赤い嘴を持った…梟だった。
「うぉぉぉぉ………。」
やべ、素が出ちゃった。
とか一瞬思ったが周りは全く気にしてない様子。
何故なら……
「イッ…皇帝闇木兎!?そんなまさか!!」
イン…なんちゃらダーク……?
何その厨二っぽいネーミングは…
「これは凄まじい…初めて見ましたね…」
腰を抜かしそうな程驚いている父親と
絶句し声も出ない母親。
普段感情が全く表情に出ない事で有名な
執事長のルーベルク(通称ルー爺)さんも
目を見開き口が開いている。
両親はさておきルー爺がこうなるってことは
相当常識外れな生き物が
孵化してしまったようだ。
ひとまず殻から出ようとジタバタしている
インなんちゃらダークを手にとって
タオルに包んでやる。
噛まれるかと若干思ったがそんな事は無かった。
まずこの生き物(おそらく鳥類で梟だろう)
の詳細がとても気になる。
「この生き物はなんて名前なんでしょうか?梟のように見えますが…何か特別な個体なのですか?」
「あ、あぁこの生き物は皇帝闇木兎と言って木兎の仲間なのだが…皇帝と付くだけあってとても誇り高くまた個体も少ないが一羽一羽がとても強力でね。普通は白い羽根に金の模様のはずなのだが…。」
「どんな生き物にも特殊な個体というのがおりましてですね。大抵は普段住むような場所とは違った特殊な地域や環境で暮らしている個体。そしてその中でも更に稀な確率で存在している異属性種というのがおります。」
「ではこの子は数が少ない希少種の中で更に稀な異属性種という稀有な存在…なのですね?」
「あぁ、かなり珍しいよ。ドラゴンの子供に匹敵するくらい珍しいかもしれない。しかも黒って事は闇属性で間違いないだろうね。」
ほほーぅそれはそれは有用な情報ですなぁ…
そんな腹黒い事を考えながら
手元のミミズクを見ると目が合った。
お互いアイコンタクトを交わし
ニヤリとほくそ笑む3歳児とミミズクが
衝撃に貫かれ大騒ぎの大人の中
静かにお互いの有用性を確認し合ったのだった。
そしてせっかくなのだし名前はつけなければ。
ネーミングセンスは無いのだし
変に気取ってもそれはそれで後で後悔しそうだ。
ここはシンプルに行こうと思う。
「そうだなぁ…ウルダでいいかい?」
「ピューーッ!」
どうもウルダで気に入ってくれたみたいだ。




