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閑話
男はバスに乗り込む律の姿を見て静かに唇を歪めた。
どうやら、香坂律の病は影を潜めているようだった。渡した薬が効いたのだろう。だが、それも一過性のこと。あの病は落ち着いてからが怖いのだ。果たして黒野光貴はそのことを理解しているのか? 怪しいものだったが、それも今日わかることだ。この目で確かめさせてもらう。
守れ。自分はそうあいつに忠告したはずだ。しかし、黒野光貴は香坂律が病で伏している最中、夢野結芽との逢瀬に勤しんでいた。許されるべき事ではないはずだ。
だが、男はまだ迷っていた。あのとき、武田透と対峙しているときのあいつの目は本物だった。だからこそ、自分も力を貸した。信じるべきか? 奴を。
DDOメンバーズカードと書かれたこのカードを奴に渡すときは果たして来るのだろうか?
見極めよう。男は決意を胸にバスへと乗り込むのだった。




