闇魔法使いの陰謀~7~
ふわふわ世界はぼやぼやでコトコト音が聞こえるの
おでこのタオルは冷たくて布団の中はぽっかぽか
こうちゃんの声が聞こえれば頑張らなくちゃと目を瞑る
おかゆとポカリがおいしくてでも食べられないもどかしさ
そんな、二日間を乗り越えて私は目を覚ましたの
目が覚めたとき、最初に思ったのは『ああ、もう大丈夫だ』ということだった。身体が軽い。私は布団を持ち上げて上半身を起こした。おでこから濡れたタオルが手元に落ちる。
寝息が聞こえた。すぐにその主はわかった。光貴だ。私の足下に俯せになって寝ていた。ベッドならともかく、床に敷いた私の布団ではその様子は様にならず、あぐらをかいたまま頭を突っ伏すという苦しそうな体勢だ。
「相変わらず身体だけは柔らかいんだね」
頭は固いのに。そう思って一人微笑んだ。時計を見ると、まだお昼前だった。お母さんとお父さんは仕事だろう。つまり、光貴は学校をサボったのだ。
左足に光貴の重みを感じる。相変わらず軽いなぁ。もちろん全体重というわけじゃないだろうけど、やっぱり、光貴はまだまだ子供だ。
「こうちゃんを守る、か……」
そうだよなぁ。いつも守ってくれる光貴を私も守りたくて、強くなりたいって願ったはずなのに。結局今もこうして守ってもらってる。迷惑ばかりかけているのは相変わらず私の方なのかも知れない。……いや、それはないか。光貴がアホなことしなければ私ももうちょっと早く治ったかも知れないんだし。でも
「ありがとう」
私が倒れてからずっと光貴は看病してくれていたのだ。お母さんを手伝って、私のそばにつきっきりになって。きっとお母さん達が寝てからもタオルを換えたりしてくれていたのだろう。
疲れた様子で眠る幼なじみは、優しい表情をしていた。
「むにゃ。DDOめ……律は……どこだ……」
相変わらずの夢を見る幼なじみはきっと夢の中でも私を守ろうとしてくれているのだろう。私は緩む頬をパンと叩くと、足を持ち上げた。
「んぎぉっ!」
私が足を持ち上げたことで仰向けに倒れた光貴は変な鳴き声と共に目を覚ました。
「おはよ」
「……り、律? もう大丈夫なのか?」
おそるおそる訊いてくる光貴に私は今度こそ本当の笑顔で応えた。
「うん。もうへーき」
「ほ、本当か? 今度こそ嘘じゃないよな!?」
「本当だって」
私は立ち上がると腕を振り回した。
「本当に本当か? お前、この前もそんなことしてたくせに倒れたんだぞ!」
「……しつこいなー」
私は枕を掴むと光貴の頭を思いっきり叩いた。
「イタイッ! なぜ叩くっ!」
「ね? 完調でしょ?」
「……確かに」
納得したものの光貴はどこか腑に落ちない表情で頭をさすっていた。
「じゃ、学校行こうか」
「は? い、今から行くのか? もう今日はいいだろう。雨も降ってるし」
「ダメ。あんた、今日サボってんでしょ? 私のせいであんたの成績下がったんじゃ、おじさんに私まで怒られちゃうし」
「どんなにサボってもお前以下の成績になることはないから安心しろ――イタイッ! だからすぐ殴るんじゃないっ!」
「うっさい。あんたも家帰って準備してきなよ。私、お風呂入るから」
そう言って、私は光貴の背中を押して玄関に。
「わ、わかったから押すな! ったく、元気になったらすぐこうだ。少しは大人しくならんのか?」
「余計なお世話ですっ!」
光貴を追い出して扉を閉めようとした時、思い出したように光貴が口を開いた。
「あ、そういや、元気になったって一応メールでもしといてやれよ。虎牙の奴、薬まで持って見舞いに来てくれたんだからな」
こうき? いや……ごうき?
「……誰?」
「は? 誰ってどういう事だよ」
光貴のその反応に私は自分が記憶喪失にでもなったのかと本気で心配になってしまった。
第二章、これにて閉幕!
この物語も早くも折り返し地点となります。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
光貴たちの物語、もう少しだけ付きあっていただけたら幸いです。
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